概要
ウシマンボウは、フグ目マンボウ科マンボウ属に分類される硬骨魚類である。
かつてはマンボウと同種とされており、2009年の調査によって別種として提唱されることとなった。(後述)
マンボウとの違いは舵びれ(一般的な魚でいう尾びれの部分)の波状の凹凸が不明瞭であることや頭部とアゴが大きく隆起すること、マンボウにあるシワが無い事などがあるが、個体差が大きく、1.2m以下の物は特徴が出ないためパッと見では見分けがつかないことが多々ある。
このゴツゴツとした見た目から東北の漁師は牛に例えて「ウシマンボウ」と呼び、この名が標準和名となった。
食性もマンボウと同じくクラゲを中心に様々な無脊椎動物を捕食し、時には餌を求め深海へ潜行する。
分類
元々は、マンボウと同種とされていた。
1839年にランザニーによってウシマンボウが“Orthragoriscus alexandrini“という学名で新種として発表され、1883年にはジリョーリにより“Orthragoriscus ramsayi“という名で、新種記載された。
1951年、フレーザー・ブルナーにより、マンボウ科の再検討が行われ、マンボウ属は「マンボウ (Mola mola) 」と「ゴウシュウマンボウ(Mola ramsayi)」の2種であるとした。“Mola ramsayi“はマンボウのシノニム(=同種)とされた。
2005年、宮城県で捕獲された大型マンボウを遺伝子解析した所、普通のマンボウとは遺伝的に異なると判明。
2009年、世界中のマンボウを遺伝子調査した所、4つの集団に分かれるとされ、「group A/B/C」という仮名が付けられ、形状的な差が報告された。
同年、4集団の内、3集団は種に値するとされ、「A種(Mola sp. A)」、「B種(Mola sp. B)」、「C種 (Mola sp. C)」という仮名が名付けられた。
2010年、学術誌「日本魚類雑誌」上に掲載された論文「マルチプレックスPCR法を用いた日本産マンボウ属2種のミトコンドリアDNAの簡易識別法」内で、A種に「ウシマンボウ」、B種に「マンボウ」という和名が提唱された。
2017年、ウシマンボウとゴウシュウマンボウは同種であり、ゴウシュウマンボウよりもMola alexandriniの方が記載年が早いため、学名はM. alexandriniとなり、更にM. alexandriniの模式標本(=種の基準となる標本)も再発見されたという論文が発表された。和名は、オーストリア以外にも分布するため、「ゴウシュウマンボウ」という和名よりも、「ウシマンボウ」の方が好ましいと判断された為、後者の「ウシマンボウ」が標準和名となった。
同年12月、C種に関しても“Mola tecta“(標準和名:カクレマンボウ)として新種記載された。
2020年にBritzは、再発見されたウシマンボウの模式標本は、大きさや細かい形状から真の模式では無く、ウシマンボウの学名は“Mola ramsayi“となるとする論文が発表された。
2017年のウシマンボウ論文の著者である澤井とマリリンは2024年、大きさは同じ基準で測っていても計測方法や人による誤差があり、絵であっため実物との誤差が存在してもおかしくは無い事から同一標本である可能性が非常に高いとした。また模式が存在していなくても、基本的にその種に命名された学名は最も古い物が使用され、M. alexandriniの図がウシマンボウと同定する事が出来る事から学名はやっぱりMola alexandriniであるとされた。
ギネス世界記録
マンボウよりも大きくなるといわれ、2021年にポルトガルのアゾレス諸島で見つかった個体は背びれ先から臀びれ先までの全高が3.6m、重量は2.7tにも及んでいた。これは「世界で最も重い硬骨魚」としてギネス世界記録に認定されている数値である。
それ以前は1996年に千葉県沖で捕獲されたウシマンボウが一番とさせていた。当時は日本に分布するのはマンボウのみとされていたため、この個体もマンボウとされていたが、2018年に本種を再記載した澤井悦郎博士によってこの個体はウシマンボウと同定され、「ギネス世界記録2020」で無事修正された。