ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー電流イライラ棒
うっちゃんなっちゃんのほのおのちゃれんじゃーでんりゅういらいらぼう
「紛れもないNINTENDO64用ソフトである。」
1990年代後半、テレビ番組「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!」(テレビ朝日系列、火曜19時~)は、視聴者または芸能人が指定された競技に挑戦し、見事クリアできれば100万円贈呈という内容で放送されていた。 競技には100問クイズや30人31脚、カラオケでランダムに選ばれた曲を歌詞を見ずに一曲完璧に歌い切るなど、数々の非常に難しい試練が用意されていたが、その中でも電流イライラ棒シリーズは、2本の導線で構成されたフレームや障害物に当たらないよう細い棒を持ち運び制限時間内にコースを突破するという、単純ながら奥の深いゲームとして大変な人気を博していた。
1つのコースがクリアされるたびにより難易度の高い新コースが作られ、初期には導線によるカーブしかなかったものが、三次元のひねりが入ったカーブや電動するトラップに進化し、果てはロボットまで登場するなど、様々な障害物が挑戦者を苦しめた。
その完成度の高さから、それを元とした商品が玩具やプライズゲームとして開発された。本ゲーム『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー 電流イライラ棒』もその一環として、ハドソンによってテレビゲーム化されたものである。
- 番組中で放送された初代(爆裂)、スーパー、ウルトラ、ファイナル、リターンズの5コースと、プラクティス(オリジナルの練習用1コース)からコースを選択する。次に、操作スピードの異なる3タイプ(安全、標準、スピード)から棒を選択し、コースに挑戦する。
- 各コースには、本家と同じく様々なギミックが仕込まれており、これに引っ掛からないようにしながら棒を操作する。棒を誤って障害物などに接触させてしまうとミスとなる。
- ミスをした際に爆発音が鳴り響く。またコントローラーに別売の振動パックを装着していれば、爆発時にコントローラーが振動する。
- 制限時間は各コースで異なり、時間内にコースを通過しなければ失格となる。また、コースがいくつかのゾーンに分かれている場合、ゾーンクリア毎に現在の残り時間に加えて一定の時間が加算され、次のゾーンの持ち時間となる。
- 棒の操作は3Dスティックで行う。スティックの傾きによって棒の操作スピードが変化する他、Aボタンを押しながらスティックを動かすと素早く移動できる。
- ゲーム中は、当時テレビ朝日のアナウンサーで実際にイライラ棒の実況を担当していた辻義就氏による実況音声が流れる。一部の難所では独特な解説が入ったり、ひどいミスをした時には「何やってんだよー!」と怒鳴られるなど、感情的な実況でゲームを盛り上げてくれる。
- ゲームモードは1人用の「タイムアタック」と2人用の「VSモード」の2つ。
- 「タイムアタック」では、コース上に設置された難所や障害物を接触しないように突破し、完全制覇するまでのタイムを競う。接触したり制限時間をオーバーした時点で失格となり、再挑戦する場合には最初からとなる。クリアするとそのタイムに応じて王冠(プラチナ、金、銀、銅)が表示され、セーブされる。
- なお、このモードにのみ棒タイプとして練習タイプが用意され、数回はミスしても失格にならない。ただしタイムは記録されない。操作スピードは標準タイプと同等?
- また、全コースを好タイムでクリアすると、スピードタイプよりも更に速いディアブロが使用できるようになる。本作中で数少ない(というか唯一?)隠し要素。
- 「VSモード」では、コースを進むたびに加算されるポイントで勝負する。制限時間内は何回ミスしても失格にならないが、ノーミスで通過するとポイントが倍加されるため有利になる。
- 「ランキング」では、各コース上位5位までのランキングと、全コースの最速レコードを確認することができる。
- 「オプション」では音声のステレオ/モノラル切り替えができる他、実況音声や振動、棒全体の表示のオンオフを切り替えることができる。
- 電動トラップの再現度が高い。
特にリターンズコースの後半ナンチャンゾーンのエレベーター移動まで再現されている点は、ハドソンの技術力の高さも窺える。(2回目の上昇は難易度調整のためかカットされているが)
同コースのウッチャン無鉄砲は、非常に難易度が高い代わりにクリアすると、ナンチャンゾーンに入ってから15秒間棒が振れても失格にならない「無敵」状態になるボーナスがあったが、これについてもしっかりと再現されている。
ただし、初期3タイプでは絶対に突破できず、隠し要素であるディアブロを選択する必要がある。その為、最終的なタイム狙い以外で通ることはまずないだろう。
- 6コース全てに別々のBGMが用意されている。
プラクティス・スーパー・ウルトラコースでは軽快なBGMが、爆裂・リターンズコースでは緊張感のあるBGMが、ファイナルコースでは壮大なBGMが流れどれも評価が高い。
ちなみにイライラロボ・イライラロボ夫人挑戦時にも専用のBGMが流れ、ラスボスであるメカ・ウンナンエース挑戦時にも専用のBGMが用意されている。
- コース背景についても描き込みがなされており臨場感が増している。
ウルトラ以降ではコースのシンボルも描き込まれている。特にリターンズコースでは「炎」の文字が刻まれた蜘蛛の足のようなシンボルが、番組同様に再現されている。
しかし、ウルトラ・ファイナルコースのシンボルは実際と異なっている。ゲームでは両方とも惑星のような球体に大きくULTRA・FINALと刻まれた格好良いデザインだが、実際はウルトラは赤い電飾で細くULTRA、ファイナルは黄緑の電飾で太く丸い字でFINALと書かれている。
- 番組のテロップなども再現されている
スタート前のコース全体を映したムービーには「実況 辻 義就」のテロップが入り、挑戦時には実際の表記と異なるものの「○○イライラ棒 めざせ完全攻略」とテロップが表示される。また、コンティニュー画面でいいえを選ぶと「○○イライラ棒 チャレンジャー大募集」の画面が表示される。これは番組でコーナーの終わりに表示された画面と同じであり、当時番組を見ていたプレイヤーならばニヤリとさせられる。
- 総額100万円分おもちゃ券のプレゼントのキャンペーンが行われた。
今日にプレイするユーザーからしたら関係の無い話であるが、元々賞金がかかっていたゲームだけに評価できる要素と言える。
【総評】
テレビ番組とのタイアップゲームとしては、再現度の高さや実況など良く出来ている部分が多く、番組を知っているプレイヤーであれば十分に遊び倒せるソフトだろう。当時を知る人にはオススメである。逆に、イライラ棒(特にコース形状)に強い思い入れがある人にとっては不満点が多く感じるかもしれない。それにボリューム不足故に番組を知らない初心者への配慮が足りなかったり、遊びの幅が狭いといった難点がある。万人に勧められる良作と言うにはもう一押し足りない、惜しいソフトである。
- とにかく難易度が高い。
そもそも番組として放送された段階でかなり難しいコースであるために、後述の問題点である難易度を下げるための一部レイアウト・仕様が変更されているとはいえ、それでも難易度は高く、加えて3Dスティックの操作性が微妙であることも相まって番組同様の高い集中力とテクニックが要求される。慣れないうちはプラクティスコースのクリアすら覚束ないだろう。
爆死したら再開はどこまで進もうと、どのコースでも変わらずスタート地点からなのも高難易度に拍車をかけている。一応、数回は爆死しても爆死した付近から再開できる「練習タイプ」の棒も存在するが、攻略してもクリア扱いにならない。
コースを繰り返し挑戦することがクリアへの近道であり、その難易度の高さが中毒性を高めている一方で、番組を知らない初心者プレイヤーにとっては訳も分からず爆死するばかりで、理不尽な難易度に感じられるかもしれない。
- ファイナル、リターンズコースのロボの制限時間の仕切り直しがない。
番組ではナンチャンゾーンクリア時点での残り時間に関わらず、ロボをそれぞれ30秒以内にクリアしなければならなかったが、ゲーム中では仕切り直しはなく、持ち時間が加算される。再現されていない点として挙げられる一方、そもそも番組でウッチャンゾーン・ナンチャンゾーンの制限時間は30秒であるがゲームでは倍の60秒となっており、コースによってはそれ以上である。極めれば実際の制限時間内で攻略も可能だが、制限時間まで再現しては常軌を逸する難易度になってしまうので制限時間が伸びるのは必然である。これらの点から仕切り直しが再現されていなくとも当然と言える。
コースが全体的に角張っている。
曲線で構成されているコースも直線同士が繋がり合って成形されているため角ばった印象を受ける。
【問題点】
- 「安全」の棒が名前ほど安全でない。
要するにスティックを倒してもゆっくりと動くだけで接触判定などは他と一緒なので、稼働する仕掛け相手だと逆に避けにくくなってしまうこともある。
- コース数が少なく、ボリューム不足。
各コースの難易度が高く、タイムアタックによるやりこみ要素もあるので、総プレイ時間はそれなりに長くなるだろうが、前述の通り番組のコースの再現プラスアルファの6コースしかなく、番組で伏せられていたリターンズのメカ・ウンナンエースの存在が発覚した時期(発売の約3か月前)を考慮してもボリューム感に欠ける印象を持つ。もう少し追加要素が欲しい。
- 難易度調整の都合もあるがコースのレイアウトの一部が完全再現されていない。
リターンズコースのウッチャン太陽下部のストッパーがなく、番組中では出来なかった下側からの通り抜けができてしまうなどの小さな変更点から、ウルトラコースのナンチャンカーブ2回ひねりとファイナルコースのナンチャンムーンサルトが同じような様な形状をしており、しかもコース幅はファイナルコースのほうが断然広いため難易度が逆転してしまっているなど再現という点で致命的な誤りもある。メインのイライラロボ・イライラロボ夫人のコース形状も、トラップは抑えているものの実際とは形状が異なっている。意図的に難易度調整したと分かる場所もあり、初代コースのナンチャンカーブ終わりの直線は実際には「N」の字と同じ垂直になっているが、ゲームでは斜めっている。ゲームでは直線の移動が楽な為、味気ないので変更したと思われる。
ひねりカーブについてはカメラの視点が変わるだけとなっており、ひねり方自体も実際とは異なっているため難易度が低くなっている。もっとも、実際に棒をひねる動作を実装するのは、当時の技術力では難しいと考えられ、操作も複雑になってしまうため、ある程度は仕方ないと思われる。
- コースごとで縮尺が異なっている。
容量の問題かもしれないが、棒に対して全体のコースの大きさがプラクティス・スーパー・ウルトラ・ファイナルコースでは大きく、爆裂・リターンズコースでは小さくなっている。
またウルトラコースでは後半で地面につくほど低い位置を通る場所が地面から離れた場所にあったり、逆にスーパーコースでは後半の地面付近を通るゾーンに目が行き過ぎたせいか、最初の『地面につくほど低い場所をくぐり抜ける事がキモのゾーン』が高い場所にあったりする。これはプレイ中などに表示されるコース図からも見て取れる。
- その他にもトラップのサイズや速度やコースの幅が異なっている、番組ではなかった安全地帯がある等多々存在するが、難易度を抑えるための調整や容量の関係上でそうなった部分もあると思われる。
- カセットゆえの容量の少なさからか、実況音声のパターンが少なく音声パターンがかなり限られている。またそれらを継ぎ接ぎしながら再生しているため、非常にブツ切れした印象となってしまっている。
- 本作とは別に、1998年にザウルスからPS用ソフトとして『電流イライラ棒リターンズ』が発売されている。
スーパー、ウルトラコースが存在しない(ただしEDIT機能のデフォルトとしてスーパーコースと若干似たものが収録されている)、難易度調整にしてもコース幅が全体的に広い、ウッチャンスリーセブンの形状が明らかに違う、誤植なのかイライラロボ夫人がイライラロボ婦人と表記されている、メカ・ウンナンエースの縮尺が狂っていてデカすぎるなど再現度は本作より落ちるものの、本作では再現できなかった「ひねり」や中途半端な再現度だったナンチャン迷路の構造を忠実に再現している。ナンチャンローラーの安全地帯付近の小さなくぼみまで再現されており、一長一短な印象を受ける。
ディスクメディアの大容量を活かしたオリジナルコース(アーケード版のコース移植)が多数収録されており、ボリューム的には本作を大きく上回っている。
こちらは番組後期にイライラ棒の実況を担当していた大熊英司アナが実況を行っており、当時を知るプレイヤーには嬉しい要素となっている。
しかし、実況のパターン数は本作の方が豊かであり、トラップ名に関する実況すら少ない。
- その他にも、スパイスクリエイティブ社からパソコン版も発売されている。
こちらは実況は特定の場所に到達したら特定の実況、画面は固定画面で端まで行ったら切り替え、2Dのため「ひねり」は再現されず、実況で自虐するなど再現度は低いが中々面白い内容となっている。
ちなみに、この作品がゲーム版イライラ棒の中で発売が最も先である。