概要
ウルリクムミとは、ヒッタイトの神話であるクマルビ神話の後半と言われる、ウルリクムミの歌に登場する岩の巨人の名であり、「クムミヤ(天候神テシュプの町)の破壊者」という意味である。
物語中においてはクンクヌッジの名でも呼ばれる。
神話の序盤、天界の王アラルをアヌが、そのアヌをクマルビが倒すというストーリーが、ギリシャ神話のクロノスをウラノスが討ち、ウラノスをゼウスが討つというそれや、クマルビの復讐のためにウルリクムミが神々と戦うことと、ガイアの復讐としてテュポーンがオリンポスの神々に挑む物語など、ギリシア神話との間の類似性が指摘されている。
ウルリクムミの歌あらすじ
神話の前半において、クマルビは神々の王の座をアヌから奪ったものの、アヌの計略により、自らを倒す存在である天候神テシュプを生み出す羽目に陥ってしまう。
(クマルビとテシュプの戦いの部分は欠損していて不明だが、クマルビの敗北に終わる。)
一敗地にまみれたクマルビは、自らに代わって子供に復讐させることを思いつき、泉のほとりにある岩との間に子をもうけた。
ウルリクムミと名付けられたその子供は、その母同様に全身が岩でできていた。
クマルビは成長するまでの間、ウルリクムミを神々から守るため、侍女たる女神達イルシラを呼ぶと隠すように命じた。
イルシラによって海底に隠されたウルリクムミは、1日に1アムマトゥ(約40cm)、月に1イクー(約8400平方メートル)成長し、ついに海上に姿をあらわす、それを見た太陽神は、天候神テシュプにそれを相談、ともに偵察に向かうも、ウルリクムミを見たテシュプは絶望にとらわれ泣き出してしまう。
そんな兄、テシュプの悲嘆を見たイシュタルは、自らの魅力でウルリクムミを篭絡すべく、海岸で彼に向かって歌い踊って誘惑するも、まだ目も耳もきかず、話すこともできないウルリクムミには通じずに失敗してしまう。
しかしそのとき巻き起こった大波よりその事実を聞いたイシュタルは、それを兄に報告、ウルリクムミが未だ不完全であると聞いたテシュプは好機と見て戦いを決意、タシュミシュに命じて戦闘の準備を整える。
(戦いの部分は欠損しており不明だが、テシュプの敗北に終わる。)
ウルリクムミはさらに成長を続け、ついにクムミヤに侵入、テシュプが再び立ち向かうも戦況は芳しくなく、ついに窮地に追い込まれてしまう。
進退きわまったテシュプはエアに相談、エアは太古に天地を切り分けた刃物(鋸やナイフと訳されるることが多いが詳細は不明)をもってウルリクムミの足を大地より切り離すようにと告げる。
それにより足を切り離されたウルリクムミは弱体化、それを見た神々は奮いたち、雄叫びをあげてウルリクムミ目指して進軍する、しかし弱ってなおウルリクムミは戦うことをやめず、テシュプに向けて、いつかクマルビがテシュプを下し、王権を握るであろうことを語った。
(以下欠損、ウルリクムミの敗北に終わったものとされる)
参考文献
筑摩世界文学体系1 古代オリエント集 P349〜P366 クマルビ神話