概要
黒鉛に見られる様な六角メッシュ状の平面構造を持つ炭素が円筒形に丸まった様な形状をしている。
純粋なカーボンナノチューブは炭素原子のみで構成されており、炭素の同素体の一種である。
円筒の直径は様々なものが有るが、0.1ナノメートルから10ナノメートルの桁に分布する。
円筒の端部は半球形の構造で閉じられている場合と、開いている場合がある。
また円筒が多重構造に成ったものも存在する。
従来の化学物質では考えられない様な特性を示し、また直径や構造を変化させる事で特性を制御する事も出来、内部に別の物質を閉じ込めて新たな特性を付与する様な使い方も出来るので材料工学にパラダイムシフトを齎し得る存在として注目されてきた。
カーボンナノチューブは早くからその存在が予測されており、1952年には既にソ連で発見されていたが、冷戦中という事も有りこの発見は完全に忘れ去られた。
その後も何度か発見が報告されたが、ただ単に「発見した」というだけの研究が多く、詳しい合成法や構造の研究は進まなかった。
1992年には日本電気(NEC)でフラーレン合成の副産物として再発見されて詳しい研究が行われ、合成法が確立されて少量ながら工業的な生産が行われる様に成った。
炭素製の電極を有機物雰囲気下で放電により蒸発させ、その際に発生する微量の堆積物の中に微量のナノチューブが含まれているのでそれを分離して純粋なカーボンナノチューブを得るというもので、微量の中の微量を取り出すので生産能率は非常に低く、極めて生産コストが高い。
この為カーボンナノチューブは微量粉末で有っても数万円という様な極端に高価な材料と為っており、画期的な素材と言われながら普及が進まない要因と為っている。