概要
本編より二年前の過去の話であるシルバー外伝にて登場した少女。『銀滅の魔導師』シルバーの弟子であり、仙国の冒険者ギルド・ミヅホ支部所属のAA級冒険者(後にAAA級に昇格)。双剣使いの魔剣士。
後に本編にも登場し、シルバーの根回しで帝国に呼び戻され、シルバーと三年ぶり(本編の帝位争いは一年続いてる為、それを合わせた年数)の再会を果たす。この時にはS級冒険者に昇級している。
人物像
容姿は黒に近い紫色の髪と目の色を持ち、初登場時は髪の長さは肩にかかる位だったが、後に首の後ろを結ぶ程に髪を伸ばしている。
人柄は常に笑顔を絶やさない、純粋で裏表のない活発な性格(シルバー曰く「お気楽」、クロエ曰く「陽気なの!」)。
誰に対しても分け隔てなく接する為、相手の警戒を解かし、どんな相手とも仲良くなれ、好意的に受け入れられる。また、そのような姿勢と素直な感性により、SS級冒険者のノーネームに大きな変化をもたらす事に一役買い、一族の悲願に固執する彼女の考えと行動を変えてみせている。
少し無鉄砲な所と、どこか呑気な思考をする事もあるが、礼節は弁えており、師匠のシルバーと違って誰に対しても真摯な態度でいる為、冒険者では数少ない常識人枠である(荒くれ者の冒険者達から「礼儀がなってない師匠に似なくて良かった(意訳)」と評される。ちなみにそんなシルバーよりも常識や礼節が全くないのが大半の冒険者であり、要は自分達の事は棚上げしている発言である)。皇族に対しても敬いながらも何処か気後れしている反応を見せている。
冒険者になる前でも危機的状況で人々が混乱し揉め事を起こしていてた時も説教をして、まだ安全で間に合う事を諭しながら混乱を治める等、胆力と行動力も持ち合わせている。
また、師匠であるシルバーに対してもきちんと自分と相手とでは感じる・思う事の見方と感覚の相違を実践して、その違いを教えている。
ただ、師匠同様にお金には無頓着な所、唐突に無意識に非常識な行動を取る事、無茶な要求をする事がある為、その点はシルバーの弟子と認識されている。
かなりのお人好しでもあり、困ってる人達がいれば取り敢えず依頼を片っ端から引き受け回っており(内容や報酬は確認してない)、それによりミズホ支部はそんな彼女に救われている。が、同時にミズホ支部は彼女に依存しきっており、環境の変化とモンスターの問題が多発しやすい仙国では帝国とは別の意味で冒険者には不人気であり、あまり人が寄り付かない場所だった。本編ではシルバーの要請で帝国に出向いた彼女の代わりを暫く他の支部の冒険者達に任せられていたが、全員それに耐えられず逃げ出してしまう事態にまで発展してしまっている(これによりクロエはすぐさま仙国に戻されてしまう)。 同様にシルバーがガス抜きでたまに冒険者に奢りの金を出してたと知った後には真似をして稼ぎが美味しくない依頼をやってる冒険者達の為に毎日奢りの金を出している。
また、冒険者になる前でも自分の身を省みずに村人を守る為に賊に一人で立ち向かう正義感と他者を思いやる気持ちを備えていた。
家族は母親のみで、出身は帝国と王国の国境付近の村にある小さな家に住んでいた(シルバーの推察ではクロエは元々王国からの流民だったと見立てている)。
外伝の時期はクロエの母は何かしらの病に罹り、体調を崩していたが、シルバーが病の回復及び病を特定する為に稀少な万能薬を渡し、そしてそれにより寄生魔花に取り憑かれていた事が判明。シルバーによって仙国にいる刀鍛冶でもあり、医師でもある大陸随一の名医、通称『仙医』と呼ばれるトウイの元に連れていかれ母親は手術を受ける事になり、そして手術後に帝国に治療できる人間がいない事が分かったので、そのまま母親共々仙国に移り住み、トウイの元で世話になっている。
シルバーの弟子
弟子入り経緯
冒険者になる前は帝国魔導学院の生徒で、膨大な魔力の持ち主だったが一切魔法が使えず退学を言い渡されていたが、退学当日に学院長の依頼で学園に訪れていたシルバーと出会い、そこで彼に自身の境遇(膨大な魔力を持ちながらも現代魔法が使えなかった事)と行動原理(母親の為である事)が同じだった事と、自身の古代魔法に対して秘められた素質と才能を見出だされ、彼の誘いに乗り弟子入りする。
尚、最初は冒険者になるつもりだったが、学院側からスカウトされ、卒業生は待遇が良い事から入学を決意したが、入学して以降現代魔法を一度も発動できずにいた。
しかし、学院の図書室で一時期、一般開放されていた解読不能の魔導書を密かに解読し、ようやく使える魔法を見つけ出せた事に喜び、完全に修得する努力をしていたが、それを同じ学院の生徒で貴族であるアルテンブルク家のヴィムに気付かれてしまう。
自身の他にも古代魔法を解読した存在を厄介と思ったヴィムは、自分の価値を上げる為と目標の為にクロエと取引して彼女に金銭を渡す代わりに古代魔法を解読した事を黙っておくように取引する(クロエは解読したのが古代魔法とは知らなかった)。クロエは母親の体調が悪かった事もあって金銭を受け取り、約束通り古代魔法が解読できた事を周囲には黙っていた。結果、相変わらず現代魔法は使えないので、それが原因で最終的に退学になってしまう。
せっかく見つけ一生懸命努力した魔法が試せず、更に退学になった事で悲観するが、偶然にも退学当日に学院長がヴィムの古代魔法の解読について調べる為にシルバーに依頼を出しており、そして魔導書の状態から他にも解読者がいる事を見抜いたシルバーが学院を探し周り、そこで退学者の情報を得たシルバーと出会う。
シルバーから大体の事情を見抜かれて、自身の努力が報われない悔しさを吐きながら涙を流すが、上述で説明したようにシルバーが自身の境遇と行動理念がクロエと同じだった事から、クロエの未来を切り開く為に払った金銭を上乗せして肩代わりし、そしてその才能から弟子入りを誘われ承諾する。ちなみにヴィムは才能が足りず古代魔法が使えない事が判明し、金銭もクロエがシルバーと会話した後に返しにいき、それでクロエがシルバーの指導を受けられる事を察したヴィムはクロエを殴り、そのまま暴れだし、教師は理由を知らないままヴィムを抑えて、その間に抜けてきたクロエの現状を見たシルバーがクロエの代わりに仕返しの魔力弾を放ち気絶させられている。また、学院側も古代魔法を使える事を見抜けずクロエを退学させたので、後年に学院長は出世を取り消されている(一応シルバーはクロエが古代魔法を使えるヒントを対面後に幾つか出してたが、結局学院長は気付かなかった。そして数年経った後にシルバーが皇帝に詳細を話した事で前述の流れとなった)。
弟子入り直後は古代魔法の修得に苦戦するが、相性が良かった事もあり、次の日にはコツを掴み前日以上に大きな進歩を見せていた(尚、この時シルバーの才能の一端を知りショックを受けている)。
その日の夜、村に賊が現れて修行で疲労した状態ながらもシルバーが来る事を信頼して単独で応戦する。
無事、賊はシルバーが処し、クロエの無茶な行動を咎めつつ、まだ安定性に欠ける古代魔法を無理に使わなかった事を褒められるが、上記の万能薬(厳密には体内に宿った寄生魔花の影響)により母親が倒れ、シルバーにより母と一緒に大陸随一の医師であるトウイがいる仙国へ連れられる。
そこで母が命に関わる状態と知り動揺するが、シルバーの協力とトウイの性格と腕により必ず救うと励まされ、シルバーに抱き締められ堪らず泣き出す。その際、シルバーが帝国での私用と手術の準備の為に三日間不在になる事を言われ、いない間は古代魔法へのイメージを持つ事を助言及び課題を出され、クロエはこれに励む。
三日後に再びシルバーが仙国を訪れ、トウイと共に手術に挑む。その時にクロエに母親の命を諦めないように言い、クロエだけでも母が助かる事だけを信じれば自分も諦めないと告げられ、手術が始まる。
そして手術から一時間後に地震が起こり、その影響によりモンスターによる津波が発生してしまい、手術で動けないシルバーの代わりにモンスターへの対処に動き、同時に一度も発動に成功してない古代魔法を使う事も宣言し、シルバーはクロエがやり遂げる事を信じ送り出す。
仙国の都市にたどり着いたクロエは避難誘導を手伝い、無事に避難も終わるかと思われたが、まだ逃げ遅れた少年がおり、同じくモンスターの津波が迫ってくる状況になった。
少年を救う為に単身モンスターの津波へ向かうクロエは、諦めかけた少年を励まし、シルバーの弟子を名乗り、それによりクロエの中で何かが変わった事を自覚して古代魔法ダークネス・フォースを発動する。
少年を守る意思とシルバーの言葉の励ましにより、遂に発動に成功し、モンスターの大群を相手に立ち向かい、それらを一掃する。
しかし、魔法により武器の双剣は耐えきれず失われ、更には新たなモンスターの津波が発生する事態に見舞われる。
魔力が尽き、危機的な状況で死を覚悟したクロエはシルバーにまた怒られたいと思うが、手術を終えたシルバーがタイミング良く現れて叱責し、母の無事にクロエは涙する。そしてモンスターの津波はシルバーによって討伐され、様々な問題を解決した事で帰還する。
一週間後、シルバーが再度仙国を訪ね、クロエに母親の治療(完治には数年掛かる)が帝都では不可能な事から、母の傍にいる事を言い聞かせられ、クロエを帝国に連れていくのを断念される。
それに悲しむクロエだが、シルバーから母親の治療が終わった後に帝都に来る事を勧められ、そこから再び修行を付ける事を約束される。その間、クロエは仙国で実戦を積んで鍛える事を宿題として出され、母親の治療までにS級になる事を指定される(また、シルバーの根回しによって、モンスターの津波への防衛の功績として冒険者ギルドから、AA級冒険者として認定され、ミズホ支部の一員として高ランクからスタートする事になった。ただ、自身の弟子という事はシルバーはミズホ支部とギルド本部に報告しておらず、クロエにも面倒になるから黙っておいた方が良い事を伝える)。
それを了承したクロエは次に帝都に行くまでには一切会いに来なくて良いと告げ、同時にシルバーの母親の人柄と髪型を聞いて別れる。
そして三年後にAAA級になっており、ミズホ支部からS級昇級の推薦状を出されていた(但し、実はS級への推薦状を仙国のギルドは以前から何回か出していたが、年齢が若すぎるとしてクライドを除くギルド上層部は打診を蹴っていた。ちなみに正体を隠しているが、シルバーはクロエよりも若い年齢でSS級になっている。尚、打診を蹴っていたギルド長含めた上層部の一部はシルバーの策略によって結果的に追放され、新たなギルド長になったクライドによりクロエはS級を認定された)。その後にシルバーの根回しによって動いたクライドの指令により、クロエはのちに帝国を訪れる事になり、そこでシルバーと再会し、本編に繋がる流れで外伝は終了する。
シルバーへの想い
自身を様々な面で導き助け、そして民の為に行動し、どんなピンチでも颯爽と現れて解決するシルバーの姿から憧れを抱き、心の底から尊敬もしている。
それ故、シルバーに倣った行動を取るようになったり、的を射た毒舌も相手によっては噛ます等、少なからず影響も受けている。
が、そんなシルバーに対し恋愛感情にも芽生えており、師でありながら顔も未だに知らず正体不明の相手ながらも、これまでの行動から異性としての好意を持つようになる。その証拠に最後の別れ際にシルバーに彼の母親の事を聞いたのは、自身の母の教えを元に自分を異性として意識して欲しい願望、或いは振り向いて欲しいが為に聞いた、という事が外伝の最後に明かされており、それを別れた日から実行している(クロエの母曰く「男の人は母親に似ている人に惹かれる」。上述で髪型が変わったのは、これによる影響であった)。
尚、本編で再会後にシルバーの知り合いにフィーネという美人がいる事に内心動揺しており、思わず二人の関係(シルバーの恋人なのかと疑問に思う)を聞く程に珍しく取り乱している(相手が貴族である事も多少あれど、基本それでも普段はちょっと気後れする程度である)。
ちなみにシルバーが好みのタイプと知っているのは、オリヒメと、そのオリヒメから教えられたジークのみで、ミズホ支部のギルドに所属する受付嬢もシルバーとは知らないが、クロエに好きな人がいる事だけは教えられている。
オリヒメ曰く「良い趣味」
ジーク曰く「想像以上に変わってる」
また、シルバーの正体であるアルノルトに対して恋愛感情を抱く者は複数人いるが、冒険者であるシルバーに対してそのような感情を持ったのはクロエが初である。
戦闘力
僅か十六歳でS級冒険者という高ランクに至っている為、高い戦闘力を誇り、修得している古代魔法の特性もあって、そこら辺の同格のS級冒険者よりも実力は上であり、S級とSS級の中間といえる位置の強さになっている(シルバー曰く「天才」「SS級並に役立つ」)。
観察力や柔軟性・対応力も優れており、前者は悪魔の権能を見破ったり、後者は大陸の中でも常に状況が変化し、他支部の冒険者が投げ出す程の仙国で数年間誰よりも活動して数々の問題を解決する位には優秀である。
また、そのポテンシャルはシルバーからも認められており、何れSS級冒険者の領域に至る事が語られている。
ただ、それでもまだまだSS級並の相手には敵わず、悪魔相手にも同格と組んで挑む必要がある。同様に格上相手との経験も浅いので、セオリー通りの戦法を取る事が多いようである。
戦闘スタイルは外伝序盤では我流の二刀流で戦う近接重視の剣士であり、古代魔法を修得後には分類的に魔剣士となり、修得した古代魔法の汎用性により遠距離戦にも対応できるようになった。
古代魔法を会得する前でも実力はあり、外伝では古代魔法抜きの状態でシルバーの身体能力に翻弄され敗北したが、シルバーから双剣の扱いを評価されており、そして数年経った本編では実力が成長し、同格のジークがビビる程の剣速を披露している(しかもまだまだ全力ではない上、古代魔法も使ってない)。この事から自身の古代魔法の特性により無闇にそれを使えない為、古代魔法の練度を上げつつ、同時に基礎身体能力と剣技を相当鍛え上げたようである。
師匠のシルバーとは戦闘スタイルも手段も何もかも反対であり、シルバーがあらゆる古代魔法を修得して様々な状況にも対応出来る万能型の後衛の魔導師なのに対し、クロエは一つの古代魔法で色々な状況を戦い抜く特化型の前衛の魔剣士である。
このようなスタイルになったのはシルバーが指導する際にクロエ本人が魔導学院で唯一修得出来そうだったのが魔法剣と自己申告し、そして本人の我流の双剣術の実力と、古代魔法の修行時の様子から、適性が偏り過ぎな上に不器用とシルバーが判断、クロエが詠唱を覚え修得する予定だった古代魔法も偶然クロエの双剣術とも噛み合っていたので、この方針となった(修得する古代魔法の強力な特性、クロエとの相性、クロエの双剣術との親和性が全て合わさった事でシルバー曰く「この魔法だけで戦える」)。
その為、自身の身体能力と剣技を、より活かす特化型の魔剣士の道を歩む事となる。
武器となる双剣はトウイによって鍛え直された剣であり、ダークネス・フォースに耐えられる位の頑丈さを誇る。
古代魔法
- ≪ダークネス・フォース≫
十一節の詠唱による闇系統の強化魔法。
クロエが唯一使える古代魔法で、短期決戦型の強力な魔法。
殲滅系の闇の魔法もとい漆黒の魔力を凝縮して纏い使用者の身体能力を爆発的に上昇させる。また漆黒の魔力を武器に纏わせて強化したり、魔力を動作に合わせて飛ばす事で遠距離戦にも対応できる。更に漆黒の魔力を全体から部分的に集中させる事で、より攻撃力を上げる事も可能(込める量次第で威力、範囲、射程も上昇する)。
強化型の古代魔法の中でも威力に特化した闇系統をベースにしてる為、かなり強力であり、身体能力の強化がメインながら応用で遠距離・範囲攻撃も可能になる等、使い勝手は良い。
しかし、欠点として持続力が短い事と威力に特化した闇系統故に古代魔法の中でも消費がデカいのが問題となっている。
一応これらの問題点は力の応用を覚えていけば幾分か解消され、練度を上げていく事で向上していく。
発動当初は練度不足と使い方の未熟さ故にすぐに効果が切れていたが、三年間で練度を上げて、使い方を熟知し、力に馴れた事で全体的に効果を高めつつ消費を抑え持続時間も上昇し、更には効力を敢えて下げる事で魔力消費の節約と持続時間の更なる延長にも成功し、発動タイミングも可能な限り後に使うか、部分的に使用する事で長時間の運用を可能にしている。
本編では、外伝時よりも成長したクロエ自身の能力と相まって、全力発動すればS級レベルの全力攻撃すら容易く防ぐシルバーの通常結界でも簡単には耐えられないと評する程に力が高まっている。
本編では未使用だが、シルバーも修得しており(外伝での様子から修得してないと思われていたが、実際には完全に使いこなせてないだけで覚えてはいた)、弟子のクロエと違って相性が悪いながらも一発で会得に成功している。だが、相性の悪さ故に効果がそこまで高くない事、短期決戦型の強化魔法である為に持続力が難点な事、そして彼と相性が良い銀属性による同じ強化型の古代魔法シルヴァリー・フォースを修得していた事から実戦では一度も使用していない(彼方は相性の良さを抜きにしてもダークネス・フォースを遥かに凌駕する様々な強化恩恵がある為、完全な上位互換にあたる)。
- 魔力(纏い・身体強化)
古代魔法を会得する過程で身に付けた魔力操作術(厳密には古代魔法ではないが、便宜上記載する)。
外伝終了から魔力を独自に磨き、設定上はシルバーが本編で行った事と同じ芸当は可能(魔力を内側に流す身体強化と魔力自体を纏う攻撃・防御力の強化)。しかし、比較した場合、魔力、練度、精密性等からシルバーレベルの領域には至れない。
ダークネス・フォースとも併用は可能で、同時に行う事で総体的にダークネス・フォースが強化される。
また、古代魔法を修得した事で魔力の感覚が発達し、シルバー程ではないが微細な魔力を感知できるようになった。
ちなみに魔力量は作中でもシルバーに次ぐ量を備えている(シルバーはクロエの二倍程の量を誇る)。