書籍版
コミカライズ版
著者 | タンバ |
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イラスト | 天海雪乃 |
レーベル | 角川コミックス・エース |
既刊 | 7巻(2024年現在) |
概要
WEB版の正式名称『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い ~帝位に興味ないですが、死ぬのは嫌なので弟を皇帝にしようと思います~』。
書籍版では『最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い ~無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する~』。
2019年2月、オンライン小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載を開始。
帝国で出涸らし皇子と呼ばれる主人公が、陰謀渦巻く帝位争いを弟とともに勝ち抜く異世界戦記ファンタジー。
2024年2月を以ってweb版の連載を完結。
以後、後日談となるショートストーリーをカクヨムにて掲載予定とのこと。
シリーズ累計100万部突破。
スニーカー文庫35周年での記念番組でアニメ化が発表された。
あらすじ
フォーゲル大陸にあるアードラシア帝国。
強大な軍事力と広大な領土を保有するこの帝国では、長男の皇太子の突然の急逝により帝位を巡って皇族の帝位争いが起きていた。
帝国の第七皇子アルノルト・レークス・アードラーは、双子の弟レオナルト・レークス・アードラーにすべてを持っていかれた「出涸らし皇子」と揶揄されるほどのダメ皇子であったが、実は裏では顔を隠し大陸に五人しかいないSS級冒険者・シルバーとして暗躍していた。
ある日、いつものようにギルドの仕事をこなしていたシルバー―――アルノルトの下に、帝位候補としてレオナルトを支持していたドミニク将軍が不審な死を遂げたとの報せが入る。
最有力候補たちはいずれも、自身が帝位に就くためならば手段を選ばない。
そして彼らのいずれかが皇帝の地位に就けば、間違いなく自分や自身に近しい者全てが、不穏分子として排除されてしまうだろう。
激しさを増す帝位争いを見たアルノルトは生き残りつつも弟を皇帝にしようと決意をした。
これは皇帝の地位なんてさらさら興味のない皇子のハチャメチャな暗躍話である。
登場人物
主要人物
アードラシア帝国・第七皇子。18歳。
黒髪黒目で双子の弟レオナルトと同じ顔をしているが、髪はボサボサで、服装を着崩している。反対に言えば、髪と服装を整えればレオナルトとほぼ同じとなり、その気になれば短い間ならば入れ替わって互いを演じ切る事もできる。
無気力な性格の、勤勉なレオナルトとは正反対ともいえる絵に書いたような放蕩皇子で、自由気ままに遊んでは執事であるセバスチャンの小言に辟易する毎日を送っている。
子供の頃から遊んでばかりという放蕩ぶりに家庭教師たちは匙を投げ、帝都のみならず帝国にもその悪い噂が広がった事で「弟にすべてを持っていかれた『出涸らし皇子』」と言う渾名が付けられてしまう。それ故に皇族でありながら皇族として扱われておらず、王国の大臣や貴族から侮られていた。それでもアルノルト当人は帝位どころか皇子としての義務にも気にかけておらず、寧ろそのように振舞う事で皇子の身分で好きな事が出来た。
そんな日々を送っていく中、ドミニク将軍の不審な死を聞かされたのを機に頃合いと判断し、レオナルトを皇帝にすべく、SS級冒険者のシルバーを「味方に付け」暗躍を繰り広げる(尚、美人な妻を迎えて遊んで暮らす人生設計を叶える為、自身が帝位争いに加わるつもりはない)。
以降はブレーンとして策謀を巡らせ、自身の評判の低さを利用して泥を被る役を引き受ける事で、帝位を目指すレオナルトをサポートする。
- シルバー
大陸に5人しかいないSS級冒険者にして、人知れず帝国を守ってきたアルノルトのもう一つの顔。
表向きは共通の目的でアルノルトに協力する、共謀者という設定で活動している。
銀仮面と全身を覆い尽くす漆黒なローブが特徴。これは、アルノルトが皇子の身分を隠して冒険者活動をするには都合の良いものであり、銀仮面そのものが声や体臭などの相手の知覚に働きかける要素に強い影響を及ぼし、同一人物である事を悟らせない超強力な魔道具となっている。
実力もSS級のランクに恥じない強さを持っており、AAA級のレアモンスターをたった一人で撃破し、才能のある者しか扱えない古代魔法を使いこなしている。
高難度の依頼しか受けない方針を取っており、ギルドも高難度の依頼を優先的に回してくれる(なお、それを快く思わない冒険者もいる為、ガス抜きさせるために報酬の一部を「奢り」として与えている)。
そういった実績と名声があり、帝都最強の冒険者とうたわれている。その為、シルバーの顔に泥を塗れば、冒険者たちはそこに寄り付かなくなる事を意味する。
アルノルトがシルバーの正体と明かす事で、レオナルトが帝国最強レベルの戦力を味方に付けたと誇示する手もあるが、同時に「皇族にとって禁忌である古代魔法の使い手」である事実が帝位を目指すレオナルトの足枷になる為、どうしようもない時の最終手段に留めている。
アードラシア帝国・第八皇子。18歳。
剣術・魔法・政治等の才能に恵まれ、優しい人柄から自然と味方を作る事もある。先入観に囚われず、マリーを始めとする平民出身の者を側近として起用するなど、人を見抜く力にも長けている。
一方でその優しさ故に身内で争う事に否定的であり、当初は帝位争いにも消極的であった。しかしドミニク将軍までも味方に付けた事が帝位を狙う者達に「勢力を作った」と見做されてしまい、そのドミニクも死亡してしまう。このまま何もしなければ自分のみならず双子の兄であるアルノルトや生母が死ぬという現実を思い知り、帝位争いに加わる事を決意した(ちなみに生母の連れての逃避行は、帝国からの本格的な追撃を受けると判断して断念した)。
名門・クライネルト公爵家の令嬢。16歳。
微かに波打った長い金色の髪と海のように深い青色の瞳をしている。僅か14歳で国一番の美女に選ばれる程の美貌と、その証として贈られた蒼い鴎の髪飾りをつけており、それが「蒼鴎姫(ブラウ・メーヴェ)」という名の由来となっている。
門番を務めた兄が、クライネルト公爵に接触を試みたシルバーを確認を取らずに追い返し、アルノルトとシルバー双方の顔に泥を塗った償いとして自らをアルノルトに差し出す事を条件に許しを請う。そんな彼女とそれを庇う公爵家の態度に毒気を抜かれ(た演技をし)、気を取り直して再度シルバーとの接触に臨むアルノルトに自分も同行を申し出た。
レオと同じく優しい性格をしており、公爵家が失態を犯したにもかかわらずアルノルトが領民のためにシルバー(この時はアルノルトが作った幻であり、いわゆる自作自演)に説得した事に感謝している。そしてある場面でシルバーの正体がアルノルトだと知った事で、彼を「人の為に動ける人物」だと確信、信頼を寄せるようになった。
アードラシア帝国近衛騎士団の部隊長を務める、桜色の長髪と翡翠の瞳が特徴の美少女。17歳。
魔王を討伐した勇者によって興された名門「勇爵家」の跡取り娘で、自身も「初代勇者の再来」と謳われる程の実力者。有事の際は皇帝の承認の下に代々伝わる聖剣・極光(アウローラ)を手に取り戦う。
アルノルトやレオナルトとは気の置けない幼馴染の間柄である。アルノルトは幼少期より振り回されていた経験から彼女に苦手意識を持っているが、彼女はアルノルトの力を誰よりも認めており、何かと世話を焼こうとする。
アードラシア帝国・第三皇女。12歳。
いつもウサギのぬいぐるみを抱えた美少女で、アルノルトは将来フィーネに比肩する美女に成長すると予見している。
先天的な予知魔法を持っているが、制御できずそれにより皇太子の死を予見している。
実母が亡くなった後、交流があったアルノルトとレオナルトの母ミツバが引き取る形で育てられ、ミツバを母と認識し、二人からも可愛がられている。
帝都外苑出身の平民の少女。11歳。
アルノルト達の幼なじみの冒険者ガイに鍛えられ、城でアルノルトに出会ったのをきっかけにクリスタに紹介され、警護を兼ねた遊び相手で友達になる。
剣の才能はあり、幼いながらにクリスタを護るべく奮闘するようになる。
平民出身のアルノルト、レオナルトの幼なじみ。かつては皇太子の軍師になることを夢見ていたが、皇太子の死により挫折。田舎に戻ってしまう。
後に帝位争いに参加したレオナルトが自らの軍師として引き抜く。常に合理的で幼なじみとはいえアルノルトとレオナルト相手でも容赦なく批判し、エルナとは犬猿の仲。
アードラシア帝国西方のペルラン王国で救国の聖女と崇められる美少女。アルノルト、レオナルトより一つ年上。
四宝聖具の一つである聖杖を持ち、鷲獅子を乗りこなす。王国のためならば、謀略で自身が命を落とすことさえも受容するほどに祖国を愛している。
アルノルトとレオナルトの二人と一度出会っており、僅か二日ながらその交流は三人にとって思い出深いもの。特にレオナルトは当時のレティシアに一目惚れし、初恋の相手として思い焦がれていた。
大陸と海を隔てた極東の島国・ヅホ仙国の仙姫。狐の尻尾と耳が特徴的な容姿で自由奔放。
外国の皇子であるアルノルト相手でも遠慮なく自由気ままに振る舞うが、それは気を許せる相手がいない寂しさの裏返しでもある。
アードラシア帝国北部を治めるローエンシュタイン公爵家の孫娘。金髪のツインテールに虹彩異色が特徴的な美少女で、祖父譲りの魔法の才能を誇る。
縁戚のツヴァイク侯爵家の孫でもあり、本人はそちらの家督を継ぐことを望んでいる。
皇太子の死に伴う北部貴族の冷遇があったために皇族への心象が悪いが、アルノルトとの出会いが転機になり、次第に信頼と好意を寄せていく。
帝国のA級冒険者の少女。南部の流民の村出身。クライネルト公爵領の依頼でシルバーと縁が出来、その後南部で発生する虹彩異色の子供を狙った人攫いの解決をアルノルトとレオナルトに願い出て、交換条件としてフィーネの警護や軍事作戦に協力する。
S級冒険者。部類の女好きで、それに端を発した自らの不始末で小熊に姿を変えられてしまう。元に戻す方法を求めて、帝国へやってきたところをアルノルトに出会い、シルバーとの伝手を頼りに協力するようになる。が、フィーネとエルナを始めアルノルトの周りの美女達にちょっかいを出そうとしては制裁されており、普段はクリスタとリタのおもちゃにされている。
- マリー・ヴィルケ
レオナルトに使えるメイド。16歳。
肩口に切り揃えた水色の髪と、感情の見えない水色の瞳をしている。
元は平民出身で働き口を求めた時にレオナルトと出会っており、その能力の高さからレオの秘書的な役割をこなしており、側近を務めている。
性格は無口かつ無表情であり、アルノルトは自分がいる時だとそれがさらに顕著となるため彼女を苦手としている。これはアルノルトを関連付けてレオナルトを貶す者がたまにいる為、それをよく思っていないと推測されている。
アードラシア帝国
皇族
- ヨハネス・レークス・アードラー
アードラシア帝国・現皇帝。51歳。
自身も過酷な帝位争いを勝ち上がってきた経験から、より優秀な後継者を見出すために帝位争いを奨励するも、我が子と臣下が血で血を洗う状況を避けて通れない事には複雑な思いを抱いている様子。
その帝位争いに『騎士狩猟祭』を数十年ぶりに復活させ、優勝した者に時期皇太子の座に大きく前進する報酬を与えようとしている。
アルノルトに対しては、かつての帝位争いにおける自身を重ねて見ている節がある。
アードラシア帝国・元皇太子。享年27歳。
能力、人格ともに秀でており、誰もが次期皇帝と信じて疑わなかった傑物であったが、3年前での北部遠征において流れ矢を受けて戦死。
皇帝が自らの捜査に乗り出し、謀略ではない事が証明されているが、アルノルトは背後に奥深い企みがあると睨んでいる。
皆に慕われていた彼の死は帝国に暗い影を落とし、やがて壮絶な帝位争いの引き金となった。
アードラシア帝国・第二皇子。28歳。
外務大臣を務めており、文官を支持基盤としている。
性格は冷徹でリアリスト。帝位争いでの現時点では次期皇帝最有力となっている。
- ザンドラ・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第二皇女。22歳。
禁術を研究しており、魔導師を支持基盤としている。
性格は皇族の中でも最も残忍。
- ゴードン・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第三皇子。26歳。
将軍職につく武闘派で、武官を支持基盤としている。
性格は単純で直情的。
アードラシア帝国・第四皇子。25歳。
肥満体に丸眼鏡が特徴の、アードラシア皇族の血筋らしからぬ外見。皇太子ヴィルヘルムの同母弟。
文才が無いにもかかわらず文人を志す趣味人で、継承権を早々に放棄している。
容姿も相まって幼女を好む変人じみた性癖をこじらせているように見えるが、あくまで慈しみの対象。また、アルノルトと同じく評判は良くないが、アードラーとしての責任感や矜恃などは持ち合わせており、いざという時には頼りになるためにアルノルト・レオナルトからは信頼されている。
- リーゼロッテ・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第一皇女。25歳。
帝国東部の国境線を守護する元帥で、皇太子の死後は「軍人として新皇帝に従う」と真っ先に帝位争いへの不参加を表明した。クリスタの同母姉で、母親譲りの金髪の美女。
ラインフェルト公爵家の当主ユルゲンからは十年以上にわたり求婚されているが、戦場が恋人と言わんばかりの筋金入りの軍人であるため、ユルゲン含め縁談の類を撥ねつけ続けている。
- ルーペルト・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第十皇子。10歳。
皇帝の末子で、気弱な性格のために帝位争いではクリスタ同様論外と目されている。
しかし、ある事件を皮切りにクリスタと共に急速に成長することとなる。
- ヘンリック・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第九皇子。16歳。ザンドラの同母弟。
異常にプライドが高く、アルノルトとレオナルトを血筋を理由に見下している。
- カルロス・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第五皇子。
アードラー家にしては能力は高くなく、それに反して英雄願望だけが先走っている夢想家。
- コンラート・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第六皇子。ゴードンの同母弟。
屈強なゴードンの弟とは思えないほどに飄々として、アルノルトによく似ている。
- グスタフ・レークス・アードラー
アードラシア帝国・先々代皇帝。
皇帝位を息子に譲った後に古代魔法の研究に没頭し、その果てに乱心して帝都を混乱に陥れた『乱帝』。この一連の出来事で、皇族では古代魔法が禁忌として扱われる事となった。
死後も精神体は城の隠し部屋に残留しており、アルノルトは彼に古代魔法や謀略を師事している。
- ミツバ・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第六妃。
アルノルト、レオナルトの母でミヅホ仙国出身。18歳の息子がいるとは思えないほどの若々しい容貌。政治に疎いが、聡明な頭脳を誇る。
ミヅホ出身の踊り子で帝都へ興行へ赴いた折にその美貌に一目惚れした皇帝ヨハネスにその場で求婚、子供達の教育に干渉しないという条件でプロポーズを受けるという破天荒なエピソードもあってか、平民達の人気も高い。
- アメリア・レークス・アードラー
アードラシア帝国・第二妃。
クリスタとリーゼロッテの母。長い金髪の美女で雰囲気がフィーネに似ているらしい。
公爵家の娘で皇帝がその美しさを見初めて結婚しており、皇太后以上に愛されている。原因不明の死により既に故人だが、ある手紙をヨハネスに遺している。
ミツバとは生前交流が深く、その縁もあって彼女の死後にミツバはクリスタを引き取り育てている。
帝国の関係者
- セバスチャン
母の代からアルノルトに仕える執事。
60代以上の金髪の老人であるが、洗練された身のこなしは老いを全く感じさせない。
かつて「死神」の異名を取った凄腕の暗殺者という経歴を持ち、身辺警護や諜報活動においても超一流の働きを見せる。
アルノルトの放蕩っぷりに小言を言わずにいられないが、同時にアルノルトがSS級冒険者シルバーである事を把握している。
- ドミニク将軍
帝都守備隊の名誉将軍である老兵。
五十年以上も戦って生き残り、引退した後はご意見番のような立場にいた(特に優れた戦歴はなかったものの、長年戦い抜いた功労から名誉将軍を命じられた)。
歯に衣着せぬ物言いで敵を作りやすい上に、帝位争いにも踏み入れて常に皇子や皇女に駄目だしをしていた。唯一レオナルトだけは気に入って肩入れをしていたが、それによって帝位争いで先頭に立つ者達に危険視され、暗殺されてしまった(なお、高齢で心臓に病を抱えていたがすぐに死ぬ状態ではなく、状況からして最も可能性が高いのが暗殺だと推測された)。
実質的な被害は(レオナルトを除いて)帝国にはなく、表向きは病死として処理される事となったが、彼の死でレオナルトは帝位争いの一勢力として他の候補者達から認識され、帝位争いに巻き込まれる形になった(これにより巻き込まれたとはいえ、家族を守る為に受身ではなく積極的に行動を取る必要が出た事が本編の始まりとなる)。
- エルマー・フォン・クライネルト
公爵の一人である壮年の男性。
若くして公爵位を継いでおり、領地を数十年も治めている。
温厚な性格で、民や貴族達からも評判は良く、現皇帝からも信頼されている。
領地を脅かしているマザースライムの対処に苦慮している事から帝位争いに関わる事が出来ず、アルノルトは事態を解決させる事でレオナルトの味方に引き込もうと画策した。
しかし息子にあたるフィーネの兄が勝手にシルバーを追い返した事を知らなかったのか、後にアルノルトにその事を抗議されて困惑してしまった(後にその事を知ったのか、フィーネの兄に対して激怒し、息子共々謝罪する事となった)。
後にシルバーがマザースライムを退治した事で、レオナルトの味方になる事を約束。同時に愛娘であるフィーネをアルノルトに託す事となった。
- フィーネの兄
クライネルト家の子息。
門番を務めていたが、シルバーに扮したアルノルトに対して横柄な態度を取った挙句、ロクに事実確認をせずに追い返すという大失態を演じてしまう(しかも門番を務めていたのも、大して役立たない程に能力は低く、父から留守の間に回されていた)。
当然エルマーに叱責されてしまうが、当人は素直に謝罪するどころか嘘を付こうとした他、命までは取らないと知ると安堵していた。
こんな素行不良ぶりにアルノルトからも呆れてしまったが、妹のフィーネに対しては情を持っており、彼女が自ら首を差し出すと表明するや否や、一転して謝罪していた。
その後はアルノルトに身を預かる事となったフィーネを父と共に見送った。
ラインフェルト公爵家の当主。26歳。
第一皇女で東部国境を預かる元帥リーゼロッテに10年以上も求婚し続けている。
絵に描いたような善良な貴族でアルノルトさえ敬語で接し、リーゼロッテに10年以上求婚し、更に遡れば20年片思いし続ける一途さに思わず感動するほど。
南部貴族ジンメル伯爵家の当主。12歳。
幼くも民を慈しむ精神を忘れず、同時に母親思いの孝行息子。
南部貴族の不正に巻き込まれて不本意な反乱に加担させられるが、流れの軍師グラウの助力で危機を脱し、以後は帝都で研鑽を積むことになる。
- ギード・フォン・ホルツヴァート
ホルツヴァート公爵の子息。
ひょろ長で、茶色の髪をおかっぱにしている(尚、服装と髪形のセンスはアルノルトに酷評されている)。
アルノルトとレオナルトとは同い年であり、授業と稽古を受けていた。しかしレオナルトに媚び諂い、アルノルトに対しては見下している。その為、アルノルトからすれば「不本意ながら幼馴染」と認識されている。
お忍びでフィーネに街案内していたアルノルトを見かけると例の如く彼に絡んでくるが、フィーネの一芝居でアルノルトがレオナルトの振りをした事で分が悪いと判断して去っていった(実際はアルノルトに対して暴行を働いたギードに対してフィーネが怒っていたが)。
因みにホルツヴァート公爵は貴族の中では二番目に古い歴素を持ち、帝都の近くの領土を保有している。
- フランツ・ゼーベック
現帝国宰相にして、ヨハネスを皇帝に押し上げた立役者。
宿屋の息子の生まれでありながら、その才知で宰相にまで成り上がった稀代の天才。
ヨハネスに付き従い、なお衰えない慧眼を以って帝位争いを俯瞰している。
SS級冒険者
- ジャック
弓使いのSS級冒険者。
かつて妻子がいたが、仕事ばかりの自分に愛想を尽かされて逃げられた過去がある。
- エゴール
ドワーフの老人。剣術の達人。
方向音痴、というよりも転移を除けば余りに移動速度が速く自分でも把握できないような状態。
- ロナルド・リナレス
格闘術の達人で、美に対しては並々ならぬ拘りがある。
- ノーネーム
仮面の剣士。
魔剣・冥神(ディス・パテル)の力を高めることと冒険者の基本原則以外には興味がない。
冒険者達
- アベル
A級冒険者の青年。
短めの赤髪と細めの筋肉質な身体が特徴。
冒険者らしく、自分の力で成り上がる気質があるが、仲間に危険を曝さないように引き際を見極めている。
ギルド支部からクライネルト家の領地に出現したマザースライムの討伐を持ち掛けられ、B級冒険者四人ともう一人のA級冒険者を組んでいた。
しかしそのマザースライムの強さに苦戦し、そんな中で介入してきたシルバーに対して良く思っていなかったが、このままではマザースライムを倒す事が出来ず、領地に更なる被害が及ぶ事から折れる形でシルバーにマザースライムの討伐を譲った。
- クロエ
およそ三年前に帝国の魔術学院を退学した少女。
古代魔法の才能を持ち、シルバーが弟子として育て上げた。
三年前時点で新人であったにもかかわらず、いきなりAA級からスタートでき、シルバーからも天才のお墨付きを得ている。本編の時点では既にAAA級。
- ガイ
帝都の最外層にすむ貧困層出身のB級冒険者。
アルノルト、レオナルト、エルナの三人とは幼馴染みで、特にアルノルトにとっては成長した現在でも皇子という身分を気にせず接してくれる貴重な相手として絶大な信頼を寄せられている。
諸外国の関係者
- エヴァンジェリナ・ディ・アルバトロ
南方アルバトロ公国の公女。通称エヴァ。全権大使としてやってきたレオナルト(正確には咄嗟に入れ替わったアルノルト)に恋をする。
- ジュリオ・ディ・アルバトロ
アルバトロ公国の公子。エヴァの双子の弟。
- ウィリアム・ヴァン・ドラモンド
連合王国の第二王子。ゴードンの旧友。
- マリアンヌ・フォン・コルニクス
帝国北方コルニクス藩国の王女。人質として連合王国に滞在している。
魔物
- マザースライム
スライムの一種であるモンスター。
あらゆる物を吸収して栄養に変える事で、その名の通りに子供スライムを生み出していく。子供スライムを生む度に弱体化はするが、生み出した子供スライムが栄養を持ってくる為、寧ろ栄養を取れば取るほど強くなってしまう。強さが変動するタイプであり、個体によってはB級冒険者四人とA級冒険者二人からなる六名のパーティーを退けさせている。
放置すれば子供スライムは雪だるま式に増殖し続け、討伐も困難という状況に陥ってしまい、最終的には辺り一帯の安全が脅かされてしまう(実際、このモンスターによって国が壊滅した例がある)。その為、このモンスターを対処するには、子供スライムを生み出す前に討伐するか、増えてしまった子供スライム諸共とてつもない火力で一気に殲滅するしかない。
クライネルト公爵領に出現した個体はAA級とより強大なものとなっており、公爵が冒険者ギルドに依頼を出した時点で子供スライムは軍隊級にまで増えてしまった。
この個体を討伐しに来たアベル率いる六人の冒険者パーティーも手の打ちようがなかったが、SS級冒険者シルバー(アルノルト)が放った古代魔法『エクスキューション・プロミネンス』によって巣ごと殲滅されてしまった。
用語
- アードラシア帝国
フォーゲル大陸中央部を支配する国家。
黄金の鷲をシンボルに掲げており、大陸三強の一つに数えられる。
反面、モンスターがあまり出現する場所ではない事から冒険者にとって需要がなく、力のある冒険者はもっとモンスターが多い所に移っていく。そういった事情から、多くの冒険者ギルドの支部が配置されている事に対して帝都以外の支部のレベルはあまり高くなく、おまけに一度モンスターが発生すると解決に時間がかかる問題がある。
帝国通貨では銅貨、赤銅貨、銀貨、白銀貨、金貨、白金貨、虹貨と並んでおり、ランクが変わる毎に10倍ずつ価値が上がっていく(帝都の民の一般的な収入は白銀貨で七、八枚。SS級冒険者を指定して依頼を出すには虹貨三枚が必要)。
- 古代魔法
かつて魔法が今より栄えていた「古代魔法文明時代」の魔法。
現代魔法と比べて扱いが難しく、才能のある者しか使いこなせない代物であり、それが原因で伝承する者も途絶えて失ってしまった。それを修得するには残された貴重な書物しか読み解くしかなく、現代において古代魔法を使えるのは大陸においても数える程しかない。
しかしその効果は絶大であり、その一つがAA級のモンスターを山ごと焼き払える事からその凄まじさが窺える。
先々代皇帝であるグスタフはこれに没頭したのだが、その果てに狂って帝都を混乱に陥れてしまった。それ以来、皇族の間ではこの古代魔法が禁忌とされている。
- 現代魔法
現代において使われている魔法。
詠唱でも七節が最も長い。
- 公爵家
帝国では皇族の親戚、または血縁関係にある家を指している。
帝位につかなかったが優秀と判断された皇帝の兄弟達にこの爵位を与えられる。また、著しい功績を残した者もつく事があるが、皇族が伴侶として与えられるので、実質皇族の親戚として認識されている。
帝位争いでは次の皇帝に恩を売れれば大きな見返りがくるため、どのような公爵家でも少しは後継者候補に近づいていく。その為、公爵家にとって帝位争いが重要なイベントとなっており、それを全くしないという事は、それ以上の問題(領地に出現したモンスターへの苦慮)を抱えている事がある。
- アムスベルグ勇爵家
遥か昔、大陸を混乱に陥れた魔王を討伐した勇者が、時の皇帝に帝国への恭順を請われて興した貴族家。勇者の息子が本家を引き継ぎ、娘3人がそれぞれ興した3つの剣爵家を分家として有する。万が一、本家たる勇爵家の血筋が絶えた場合は、いずれかの剣爵家が次の勇爵家となる。
勇爵家、剣爵家ともに帝国における身分は公爵家よりも高く、帝国貴族の頂点に位置するのが勇爵家である。特に本家たる勇爵家の当主の地位は皇族よりも高く、膝を折るのは皇帝のみ。
他国からは「帝国の守護者」として畏怖されており、歴代当主は数々の武勲・功績を挙げている。その為、貴族としての上記のような破格の扱いに文句を言う者は帝国にはいない。
- ネルベ・リッター
通称、傷跡の騎士達。
自身の正義や信念に基づいて不正を働いた主君に刃を向けた裏切り者達で構成された兵士達。
近衛騎士達に匹敵する実力者がそろっているが、その経歴故に敬遠されて誰も使いたがらなかった。
しかし、アルノルトとレオナルトに協力した活躍でその汚名を返上することとなる。
- SS級冒険者
大陸に多くいる冒険者の中でも群を抜いた存在。作中開始時点ではシルバーを初め、五人しかいない。
全員が並外れたなどと生温いほどの実力者で、本気を出せば周辺の地形を変えてしまうとまで言われており、半ば歩く天災の次元。
民のために、という基本原則以外は全く守らずギルド総本部の召集なども平然と無視するが、それも半ば黙認されるのは彼らが民の間で英雄視され、同時に大陸の冒険者全てを相手にしても強いから。
帝国基準でいえば、アムスベルグ勇爵家の勇者と近衛騎士団長程度しか対抗できる人間がいない。
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