シャアム
しゃあむ
「機動戦士ガンダム」またはその派生作品のシャア・アズナブル×アムロ・レイのBLカップリングである。
彼らは優れたモビルスーツパイロットとして対立しており、一般的に「最も有名なライバル関係の一つ」として知られている。しかし、作品によっては共闘することもあり、互いを認めている故に反発し合う部分もある等、そこに介在する感情は敵意だけではない。
派生作品も多く、本編のみならず外伝的なストーリーでの絡みも多いカップリングとなっている。
作中での時間経過があり、大まかに「機動戦士ガンダム」(以下1stと表記)、「機動戦士Ζガンダム」(以下Ζと表記)、「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」(以下CCAと表記)等、それぞれの時間軸での関係性を楽しめるのがシャアムの魅力の一つ。
正史ではないが、安彦良和氏の漫画「機動戦士ガンダムTHEORIGIN」(以下 ORIGINと表記)では1st以前のストーリーを扱っていることもあり、幼少期の2人を題材としたシャアムを妄想することも可能。
シャアは宇宙世紀0059年生まれでアムロは宇宙世紀0063年(もしくは0064年という説もある)生まれであり、いわゆる年上攻めのカップリングである。ただし、「スーパーロボット大戦」などの作品ではクワトロ×CCAアムロが成立することもあり、年下攻めを堪能することも可能。公式に存在する年齢設定が幼少期〜成人期と多岐にわたるため、二次創作においては年齢操作により様々な組み合わせを楽しむことができる。
シャアは金髪碧眼の端正な顔立ちをしており、アムロはシャアに比べて地味な容姿ではあるが、癖のある赤茶色の髪と丸みのある目や輪郭が幼さを持ち、垢抜けないながらも愛嬌のある容貌と言える。そうした特徴は成人後も変わらず、富野由悠季監督が手掛けたCCAの小説版である「機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマー」でも、29歳でありながら「少年らしい優しさを残した横顔」と評されている。
シャアは1stでの最終決戦でアムロとフェンシングで交戦しており、剣先を突きつけられ、ヘルメットを突き破って額に傷を付けられている。シャアの額の傷はこれ以降残されることとなり、アニメ視聴の度、見目の良い彼の顔に「アムロが刻んだ傷」が残っていることを視聴者は見せつけられる。ちなみにそのフェンシングでの対決の際に、シャアはアムロの右腕を貫いているのだが、場所が場所だけにアムロにその傷が残っているかを確認できる描写は存在しない。ただし、1stで確認できる傷の深さを思えば、傷跡となっている可能性は十分にある。
シャアはΖ時点で身長180cm(1st時175cm)、体重72kg(Ζ時に65kgという説もある)と数値からして体格の良さがわかるのに対し、アムロ・レイはCCA時点で身長172cm(1st時168cm)、体重55kgと、若い成人男性としては大変痩せ型である。上述の「ハイ・ストリーマー」でも、ある登場人物の視点から「ノーマルスーツを着ていても華奢に見える体つき」と表現されている。シャアムというカップリングにおいては、2人のこの体格差に性癖を刺激される者も多い。
※各作品のネタバレが含まれるため注意
機動戦士ガンダム(一年戦争)
シャアとアムロの邂逅とライバルとしての確執について描かれている、始まりの物語である。
宇宙世紀0079年、連邦軍のV作戦基地があると睨みホワイトベースを尾行してきたシャアの部隊によってサイド7が襲撃を受け、居住区にいたアムロは否応なしに戦争に巻き込まれることになった。襲撃自体はシャアの本意ではなく、手柄を立てようとした部下の勝手な行動ではあったが、シャアがサイド7に来ていなければアムロがパイロットになっていない可能性もあり、彼の運命を変えた大きな要因となっている。付け加えるなら、シャアとアムロの出会いや宿敵としての因縁が生まれたのも、すべてはこの巡り合わせによるものと言える。
民間人を乗せたホワイトベースの援護を命じられたアムロは、シャアの出現に対して命令を無視して挑んでいる。しかし、シャアには歯が立たず、シャアもまたガンダムの性能に怯んで撤退した。これが2人の初めての交戦である。その後も度々ホワイトベースはシャアの襲撃を受け、アムロは苦戦を強いられることとなった。
繰り返される戦闘に疲弊していたアムロは、もうガンダムには乗りたくないと頑なに戦闘を拒否した。それを聞いたブライトに殴られ、アムロはますます意地を張るが、ブライトから「それだけの才能があればシャアを超えられる奴だと思っていたが、残念だよ」と告げられ、再びガンダムに乗る決意をしている。
中立区域のサイド6で父と再会したアムロは、コロニーを発つ前にもう一度だけ父に会おうとする。その道中アムロは雨宿りをしたコテージで神秘的な雰囲気を持つ少女・ララァと出会った。この出会いがシャアとアムロの間に大きな悲しみと確執を生むこととなる。
父を訪ねたアムロはホワイトベースへ戻る道中で、ぬかるみに車を乗り入れてしまう。そこに先刻出会った少女とジオン軍の赤い軍服を着た男が通りかかり、アムロは2人に助けられる。その男を見た瞬間、アムロは彼が自分の宿敵・シャアであることを直感した。一方のシャアは、アムロがガンダムのパイロットとは気が付いていない。これが2人が初めて生身で向かい合った場面である。
ニュータイプとして覚醒したアムロの反応についていけなくなったガンダムは、ソロモンの技術者によってマグネットコーティングを施される。シャアは運動性の増したガンダムに圧倒され、初めての実戦を迎えたララァもアムロとの感応に苦しめられることとなった。その後、再び宇宙で対峙することとなったアムロとララァは互いの存在を確認し、葛藤しながらも共鳴し合う。その共感に嫉妬したシャアは2人の間に割って入り、シャアを討とうとしたアムロは彼を庇ったララァの命を自分の手で奪うこととなった。この悲劇がシャアとアムロの2人に深い傷を残し、長きに渡る確執を生んでいる。
アムロとシャアはア・バオア・クーで最終決戦を迎える。機体を損傷した2人は生身で戦うことになり、彼らはその場にあったフェンシングの剣で交戦している。アムロはララァの言葉を代弁してシャアの行いが間違っていることを説き、シャアはアムロがニュータイプとしての力を見せすぎたと語り、その存在を認めるわけにはいかないとアムロに殺意を向ける。その結果、前述のようにアムロはシャアの額に、シャアはアムロの右腕に傷を負わせている。2人の争いを止めに入ったセイラに殺し合いをする必要などないと言われ、シャアは「アムロ君がこの私の言うことがわかるのなら…私の同志になれ、ララァも喜ぶ」と告げている。この直後に爆風が起きて2人は離れることとなり、アムロとシャアの戦いとともに一年戦争は幕を下ろした。
機動戦士Ζガンダム(グリプス戦役)
地球に帰還したシャアはクワトロ・バジーナの名を騙り、反地球連邦組織エゥーゴに参加していた。その一方、アムロはニュータイプを危険視する連邦政府の思惑によって、実に7年もの間軟禁生活を強いられていた。当作品は彼らの再会と共闘が描かれており、シャアとアムロの生涯でも最も穏やかな関係を築いていた時期と言える。
地球連邦軍の腐敗を叩くために戦うことを選んだシャアとは対照的に、監視付きの豪邸に閉じ込められていたアムロは、戦うことを恐れ、ララァを喪った宇宙に戻る気力も湧かず鬱屈と生活していた。しかし、ある時自分を訪ねてきたかつての仲間達に叱咤され、アムロは再び戦うことを決意する。アムロは空港で輸送機を奪い、シャア達が苦戦を強いられていたティターンズのアッシマーへ突入していった。さらに自分はそのまま脱出するという離れ技を見せたアムロは、そこでシャアに再会する。
アムロが輸送機で敵に向かう際、シャアとアムロは理解するよりも先に互いの名前を叫んでいる。それはまさにニュータイプ同士の交感であり、彼らは見るものに強い印象を与える劇的な再会を果たした。その後2人は見つめ合い、互いの名を何度も反芻していた。
カラバに合流したアムロは、軟禁生活から脱出してなお、どこか鬱屈としていた。そんなアムロに、シャアは皮肉混じりにではあるが、彼を奮い立たせるための言葉をかける。また、宇宙に上がり共闘することを勧めるシャアだったが、アムロからは宇宙の感覚が怖いと固辞されている。
戦争をすることへの恐怖は抱えながらも、アムロは周囲の者に刺激を受けて、再びモビルスーツで戦うことを決意した。彼はシャトルは守ると宣言してシャアを宇宙へ送り出した後、7年のブランクを感じさせない卓越した操縦技術を発揮している。
カラバの作戦を支援するためにティターンズの基地に向かい、攻撃を受けながらもキリマンジャロに降下したシャアは、カラバの一員として戦いに参加するアムロと合流する。そこで、生死不明となっていたフォウと再会したカミーユは、記憶の調整を受けて苦しむ彼女を救おうとするのだが、彼女はカミーユへの攻撃の盾となり息を引き取った。この一部始終を目の当たりにしていたアムロとシャアには、7年前の悲劇を想起させることとなった。
アウドムラは連邦首都ダカールで行われている議会を占拠し、ティターンズの軍閥政治を許してはならぬと、ジオン・ズム・ダイクンの遺児であるシャアが、その素性を明かして演説を行うこととなった。その道中まではアムロの操縦する機体にシャアが乗り込み、「君に乗せてもらうことにして良かった」とアムロの能力に信頼を寄せる場面もある。アムロはパイロットとして外からシャアの舞台を守り、演説は無事終了した。
作戦後、シャアはこれで自分は自由を失ったと言い、アムロはこんな大仕事に人身御供は必要だと告げる。遠慮のない言葉ではあるが、この時アムロとシャアは2人きりで、互いに穏やかな表情を浮かべて酒を酌み交わしている。
その翌日、シャアは地球に残るアムロに見送られて宇宙に発つこととなる。地球のことは任せてほしいと言うアムロを見て、シャアは「昔のアムロ・レイに戻ったようだ」と伝えている。それに対してアムロは「変えてくれたのは、あなただよ」と返して、笑顔で彼を送り出した。
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(第二次ネオ・ジオン抗争)
愚直なまでに人類を信じたアムロと時代を変えるために改革を為そうとしたシャアの最終決戦の物語。
宇宙世紀0093年、グリプス戦役以降消息不明となっていたシャアは、いつまでもスペースノイドに圧政を敷き続ける地球連邦政府に嫌気がさし、ネオ・ジオンの代表として宣戦布告を行った。シャアはアムロを筆頭としたロンド・ベル隊を抑え、フィフス・ルナをチベットに衝突させている。さらに、シャアは地球連邦政府と講和条約を結ぶ振りをして得た小惑星・アクシズを地球に落下させることで、地球に人類を住めなくしようという強硬手段を選択しようとしていた。
ネオ・ジオンとの交戦が始まり、アムロは自ら開発に加わったνガンダムで出撃することとなる。実はこのνガンダムに採用されたサイコフレームの新技術は、敵であるシャアからもたらされたものである。シャアは人類の改革を考えながらも、過去の因縁を捨て切れず、同じ条件下でアムロと戦いたいと願っていた。
ロンド・ベルはアクシズを内部から爆破して軌道を逸らそうとしたが、アクシズの一部は既に引力にひかれていた。アクシズが地球に落ちようとする中、アムロはシャアと一騎討ちをして、最終的にシャアを打ちのめしている。
アムロがνガンダムでアクシズを押し返そうとすると、サイコフレームの共振とともに地球は緑色の光に包まれた。アクシズは地球には落ちなかったが、その後アムロとシャアは行方不明になっている。
シャアは作中で地球連邦政府だけでなく、ネオ・ジオンの内部の人間にも自分の心情を知らせず、自分に好意を抱く者に嘘を吐くことも多かった。しかし、アムロと対峙して言葉を交わす時の彼は芯から自分をさらけ出しており、それがたとえ子供じみた主張であってもアムロにだけはその胸中を吐露していた。最終的に何故アムロに自分の思いを理解できないのかと涙することもあったが、アムロはそれをわかった上でシャアの行動を否定している。
赤白
二人のイメージカラーである赤(シャア)と白(アムロ)から。
クワアム
Ζ時のシャアの名前であるクワトロ×アムロから。ただしpixivではΖを舞台とした作品であってもシャアムタグが付いていることが多い。
キャスアム
シャアの本名キャスバル×アムロから。主にORIGINで描かれた幼少期のシャアが攻めの場合を指す。もしくは、シャアがシャアという偽名を使わずに生きられたIFストーリーのシャアムとして用いられることもある。
シャアアム
シャアムの表記揺れ。
西霊
漫画「シャアの日常」のシャアのような青年・西×アムロのような少年・霊から。
30年ほど前に発行された、庵野秀明による同人誌『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』より、富野監督との会話から以下抜粋。
庵野「あと、「逆襲のシャア」で感じたのは、富野さんは、ケリをつけたかったのかな、という事なんですが。
富野「いや、このケリは、それは僕の文脈でわかるとおり、あくまで業務上の問題だけのことです。
「ガンダム」そのもの、シリーズだけでも、ネームだけでも残る形にしておかないと。
シャアとアムロの問題っていうことで、ケリをつけてみ せたというだけのことで。
「みせた」っていうことに関してひとつだけ言うことがあるとすると、自分自身が戯作者になっていくためには、戦争物でケリをつけるんじゃなく......その、そ、そ、そ。 「シャアとアムロは、ひょっとしたらホモかもしれないんだ」というくらいに......もし、肉感的な部分がね、もし、出せたらいいし......何よりも戯作っていうのは..... 今、いった通り、 肉感の部分で伝わるものが、ピックアップされていなければ、やっぱ、劇じゃないんだから」
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