概要
本作は、シンドバッド三部作の最初の作品で、主役の伝説の船乗りシンドバッドをカーウィン・マシューズが演じている。製作は、特撮の名匠レイ・ハリーハウゼン。
あらすじ
バグダッドの王子・シンドバッドは、チャンドラ王国との平和条約締結を終え、婚約者であるチャンドラ王国の王女・パリサ姫と共に帰途の航海中だった。
食料補給のため、海図にない島へ上陸した一行は、黒魔術師・ソクラが怪物・サイクロップスに追われていたところを救出する。ソクラは、サイクロップスから「魔法のランプ」を盗もうとしていたのだ。
少年の姿をしているランプの精・ジニィを呼び出し、サイクロップスからなんとか逃れるソクラとシンドバッドたち。しかしサイクロップスが大きな岩を投げつけたため、小舟はひっくり返り、ランプはサイクロップスの手元に戻ってしまった。
バグダッドにて、ソクラは謎の島への再航海をシンドバッドに申し入れる。危険性を考えたシンドバッドが拒否したが、ソクラは人知れず黒魔術を用い、パリサ姫を小人に変えてしまった。
「パリサ姫を元の姿へ戻すためには、島に棲む双頭の巨鷲・ロック鳥の卵の殻が必要だ」とシンドバッドを航海へと誘うソクラ。シンドバッドは仲間と囚人から集めた手下を連れて冒険の旅に出る。
途中、囚人らの反乱にあうが、なんとか島にたどり着いたシンドバッド。
しかし島を探索中、サイクロップスに仲間と囚われ、檻に入れられ食べられそうになる。が、小人のパリサ姫に助けられ、サイクロップスと対決。目を松明で焼き、谷底に突き落とす事に成功する。
そしてロック鳥の巣に赴き、その卵の欠片を手に入れる事に成功。
ソクラはランプを手に入れるが、シンドバッドは先刻にソクラが見捨てようとした事から、ランプを自分が保管する事に。
魔法のランプを用いる呪文は、ソクラしか知らない。パリサ姫はランプ内に入り、そこでランプの精ジニィと出会い、呪文を知る。
そして、互いに約束する。人間になり自由になりたいジニィのために、パリサ姫はするべき事を行うと。
やがて、雛を殺されたロック鳥の親鳥が、シンドバッドたちを襲う。
ソクラはその隙にパリサ姫を連れて、自身の研究室のある洞窟に逃走。シンドバッドはそれを追うが……。
登場モンスター
サイクロップス
一つ目の巨人。本作を代表するモンスター。
下半身は山羊のようにもなっており、蹄がある。両手の指は三本。
額には角が生えている。
財宝を溜め込んでおり、岩を寄せ集めて作った隠し場所に、金銀財宝を隠している。「魔法のランプ」もその財宝の1つ。
財宝は、島の周辺で沈没した船を漁り、かき集めたものらしい。
また、肉食で人間を襲って食うが、その際には自分のサイズに合った焚火をおこし、人間を棒にくくりつけて、焚火で炙ってから食べている様子。そのため、原始人並の知性を有しているとも思われる。
島の各所に複数が存在しており、冒頭から中盤に登場した個体は一本角、ラスト近くでタロ(ドラゴン)と戦った個体は二本角が生えていた。
最初の一本角は、シンドバッドに松明で目を焼かれ、そのまま谷底に落とされて倒された。
二本角の方は、ソクラの放ったタロ(ドラゴン)と戦って噛み殺された。
ロック鳥
島の山岳地帯に棲む、巨大な双頭の鷲。
その巣には、人間より大きな卵があり、雛が生まれた。しかし誕生直後に、空腹のシンドバッドの部下たちに寄り殺され、食べられてしまった。
後に駆け付けた親鳥により、シンドバッドの部下のほとんどが殺されてしまう。
この卵の殻は、小さくなったパリサ姫を元に戻す魔法に必要な素材である。
タロ(ドラゴン)
ソクラの研究室のある、洞窟入り口に鎖で繋がれているドラゴン。口から炎を吐く。
鎖を近くのハンドルを回し、壁に引き寄せないと通れない仕組みになっている。
ソクラの命令を聞き、洞窟入り口の番をしている。後に鎖が外れた後、サイクロップスと戦った。
骸骨戦士
ソクラの研究室内にあった一そろいの人骨が、ソクラの魔術により動き出したもの。
偃月刀と盾を手にして、シンドバッドと切り結んだ。
サーペント・レディ
パリサ姫の女性従者であるサディが、王への余興の見世物として、ソクラにより蛇女の姿にされたもの(ソクラはサディへ、「世界一の美女にしてやる」と甘言をもってこの魔術に参加させた)。
巨大なツボの中にサディと蛇を入れ、ソクラが魔法の薬物を降りかけた後、ツボを割った中から出現した。
サディの上半身に四本腕(関節が無くクネクネしている)、蛇の下半身を持った異様な姿で、王や観客の前で踊りを披露した。しかし蛇の尻尾がサディの首を絞めつけたため、ソクラが再び魔法の薬物を振りかける事で、元の姿に戻った。
登場人物
シンドバッド
本作の主人公。元は船乗りだったが、数々の冒険を繰り返し、現在はバグダットの王子になっている。パリサ姫を婚約者として、チャンドラ国から連れてくる航海中に、劇中の事件に巻き込まれる事になった。
パリサ姫
チャンドラ国の姫。シンドバッドにバグダットに連れて来られるが、ソクラに小さくされてしまう。そのため、バグダットとチャンドラの友好関係が破られそうになった。
ソクラ
サイクロップスの島でシンドバッドと出会った魔術師。サイプロップスが蓄えていた財宝の山から魔法のランプを盗み出して逃げていたところを助けられるが、ランプを落としてしまいサイプロップスに取り返されてしまった。
魔法のランプ以外の蓄えられた財宝は全てシンドバッドの取り分として譲るからとサイクロップス討伐の協力をシンドバッドに持ちかけるも、部下を危険に晒したくないと断られたため、パリサ姫に呪いをかけて小人に変えてしまい、呪いを解く事を条件に無理やり協力させた。
魔法のランプに執着しており、手に入れる為ならばどんなことでも行う利己的な人物。ランプのために、囚われの身になったシンドバッドを助けようとせず見殺しにしかけた。
魔術師としての腕は確かで、サーペント・レディを作り出したり、炎を用いて予言したりなど、様々な術を用いる事が出来る。ただしサイクロップスに対しては、自身の魔術で倒そうとしても、効果が無かったらしい（魔法の薬を飲ませようとして、失敗したと自身で語っている）。さらに対サイクロップス用の巨大石弓の設計をするなど科学技術にも精通している。
島内部には、ドラゴンに入り口の番をさせた、研究室のある洞窟を有している。ここで、自身がパリサ姫にかけた呪いを解いた。
最後は島から逃げようとするシンドバッド一行にドラゴンをけしかけるも、自身が設計した巨大石弓で射抜かれたドラゴンの下敷きになり圧死した。
その他
海図に無い島
本編の舞台となる島。海図にその存在が記されておらず、シンドバッドがこの島に上陸した事から物語が始まる。
浜辺から内陸に続く場所には、人面を模した門があり、サイクロップスはそこから出現した。
島内にはサイクロップスが（最低でも二体以上）棲息している他、岩山の頂上付近には双頭の巨鳥・ロック鳥が巣を作っており、歩き回るだけでも危険である。
また、島の周辺には「嘆きの悪魔」が住む入り江があり、夜間になると異様な声が周囲に響く。その声を聞いた者はパニックを起こすため、近くを通りかかった船は座礁してしまうらしい。
シンドバッドたちは、囚人から雇った部下たちに反乱を起こされ船を取られた際、ソクラからこの事を聞いて利用し、船を取り戻した。
島内には果物などの食料が豊富で、いくつかの川も流れている。一部の川は水の代わりに上等の酒が流れており、水夫たちはそれを飲んで酔っ払ってしまった（ソクラは最初、「この川の水は猛毒だ」と言って、水夫たちを脅かしていた）。
内陸部にはソクラの居城である洞窟が存在し、その入り口付近にはドラゴン・タロが鎖でつながれて門番になっている。
洞窟内は広大な空間が広がっており、内部にはソクラの居城兼研究室である、石造りの城が建っている。
魔法のランプ
サイクロップスが溜め込んでいた宝物の中にあった、願いをかなえるランプ。ランプをこすりながら、特定の呪文を唱える事で、ランプ内に住む精霊ジニィを呼び出す事が出来る。
ジニィは呼び出した者に従い、様々な命令を実行する。しかし、何かを攻撃するような願いは出来ないらしい(サイクロップスを攻撃しろ、など)。
その他に、劇中では派手な願いをかなえる様子はみられなかったため、その力の及ぶ願いは、限られたものらしい。それでも、溶岩の流れる洞窟からの脱出や、サイクロップスからの攻撃を防いでいる。防御に関しては完璧との事。
ソクラはこの魔法のランプを、最後まで自分のものにしようと試みていた。
ランプの精ジニィ
少年の姿をしたランプの精。元は人間らしく、バラーニという名を持つ。
ランプの精をやめて、自由な人間に戻りたいと願っている。小さくなったパリサ姫がランプの中に入り込んできた事から、友人になり、自身を呼び出す呪文を教える。
その他に、ランプの精を元の人間に戻す方法をパリサ姫に教え、それを実行するように頼んだ。シンドバッドの事は話に聞いているらしく、尊敬しているとの事。
ジニィを呼び出す際の呪文は、
『遥か遠く彼方の、望みと恐れの消えた国から、現れ出でよ、ジニィ』
巨大石弓
ソクラが設計した、対サイクロップス用の巨大な兵器。島に戻る際に、王に作らせ船に積んだ。そのサイズに合った巨大な矢を発射する事が可能。
スタッフ
監督；ネイザン・ジュラン
脚本；ケネス・コルブ
音楽；バーナード・ハーマン
出演；カーウィン・マシューズ、キャスリン・グラント、トリン・サッチャー
立体物
2022年9月に、エクスプラスよりサイクロップスの1/35スケールプラキットが発売された。
全高は23cm。固定ポーズで棍棒が付属。パーツは塗装済。
ベースには劇中でも見られた岩山の一部が再現され、捕らえた船乗りおよび骸骨が入った檻も付いている。
余談
原典となる、「千夜一夜物語」のシンドバッドの冒険譚も、合計七回である。
本作では、パリサ姫とともにバグダッドに戻る航海中（六回目の航海）に島へとたどり着き、パリサ姫を元に戻すために再び島に赴く。この航海で七回目の、最後の航海……ということになるらしい。
