概要
ジェンダーギャップ指数(英:Gender Gap Index : GGI)は、経済・教育・医療・政治参加の4分野で世界各国の男女間の不均衡を示す指標である。男女格差指数(だんじょかくさしすう)とも訳されている。
「ジェンダーギャップそのものを正確に表わした値」ではなく、あくまで指数(Index)≒目安である事に留意が必要。「ジェンダーギャップそのもの」を「本項目の内容全体」に喩えるなら、ジェンダーギャップ指数は、あくまで「上の方に表示されている目次」(それも、かなり雑な)に過ぎないのである。
早い話が「ジェンダーギャップそのものの解消・改善を目指す事」と「ジェンダーギャップ指数の改善を目指す事」は似て非なる事であり、後者のみを重視する事は喩えるなら「本項目の本文に重大な間違いが有るのに、目次に反映される見出しだけをいじって、その事を誤魔化す」ような本末転倒な事につながりかねない。
非営利財団の世界経済フォーラムが2006年から Global Gender Gap Report(『世界男女格差レポート』)にて公表している。
また、公表しているのが経済関係の団体である事からも判るように、あくまで「公開されていて捏造・偽造がほぼ不可能な数値(≒統計情報)で表せる情報(のみ)を元に算出している」「企業活動や政治などの経済に深く関わる分野における男女格差を重視している」などの特徴が有り、この点(例えば、数値で表しにくい男女格差や、一般家庭などにおける男女格差、その他、個別調査なしに表に現われにくい男女格差は反映されにくい)を批判するフェミニスト活動家も少なくない。
例えば、下記のジェンダーギャップ指数の計算に用いられる統計値の内「最近50年における行政府の長の在任年数の男女比」は「実際のジェンダーギャップそのもの」だけでなく「その国の行政府の長の任期に関する法律上の規定(無制限か1期×年のみか、など)」や「その国では、どの程度の頻度で政権交代が有るのか?」「行政府の長は国民が選挙で選ぶのか? それとも事実上『立法府で最多議席の政党の党首』が就任するのか?」などの要因から間接的影響を受ける事も有り得るが、ジェンダーギャップ指数の算出は、それらの各国の個別の事情による補正などは一切行なわれず、決められた統計値を元に機械的に計算される(公開されている計算式に、入手が容易な公開情報を代入すれば値が出て来るので、誰が算出しても同じ結果になる。ただし、その「誰が算出しても同じ結果になる」値が現実に存在している何かの事象の分析・解決などに、どの程度役に立つ数値なのかは別問題)。
要は「ある2つの国が、20位とか30位も順位が違うのであれば、順位が低い方の国は、高い方の国に比べて明らかに問題が大きいが、1桁前半内の順位の違いは誤差の範囲内」「社会体制が良く似た隣り合った国の比較には使えるかもしれないが、そもそも、社会体制が余りに違う国同士の比較には不向き」ぐらいの信頼性の指数と考えるべきであろう。
ジェンダーギャップ指数の計算に用いられる主な統計値
- 国会議員の男女比
- 閣僚の男女比
- 最近50年における行政府の長の在任年数の男女比
※あくまで、統計値を元にした機械的な計算で算出される値なので、何か特段の事情が有る国が有っても、何かの考慮・補正が加えられる事は無い。ある意味で、公平・公正過ぎて、逆に「おおまかな目安以上の使い道がない」「社会慣習などの前提条件が似ている国同士(例えばEU所属国同士)の比較には使えるが、余りに社会体制が違う国同士の比較に使えるほどの信頼性は無い」ような「指数」とも言える。
よくある誤解
- 女性首相が誕生すれば日本のジェンダーギャップ指数は改善されるのか?
- 上記の通り、女性首相が誕生しただけでは、ジェンダーギャップ指数に大きな影響は無い。
- 女性首相の政権が短期政権で終れば、更に影響は小さくなる。
- 女性首相の政権の閣僚の女性比率が、それまでよりも大幅に下がったならば、逆にジェンダーギャップ指数が悪化する可能性すら有る。
- 女性首相の政権下で行なわれた国政選挙で、女性の国会議員の比率が大幅に下がるような事が起きれば、同じくジェンダーギャップ指数が悪化する可能性が高い。
- 女性首相の誕生により、日本のジェンダーギャップ指数の順位が大きく上がる為には、その女性首相の政権がある程度以上の長期政権になり、かつ、閣僚・国会議員の女性比率は最悪でも「現状維持」である必要が有る。
- 小池百合子都知事などの女性の地方自治体首長は日本のジェンダーギャップ指数を改善しているのか?
- 上記の通り、地方自治体首長の男女比や在任年数はジェンダーギャップ指数の計算に用いられないので、小池百合子都知事などの女性の地方自治体首長の存在は、日本のジェンダーギャップ指数には何の影響も与えていない。
- 何故、女性に対して抑圧的なイメージが有る「ムスリムが多数派の国」でも、ジェンダーギャップ指数が日本より遥かにマシな国が有るのか?
- 算出に用いられる統計値が上記の通りなので、国会議員や閣僚に占める女性の割合が日本よりも遥かに上だったり、女性の首相・大統領の長期政権が続いた国が有れば、その国の多数派がムスリムで、イスラム教を表向きの理由とする女性に抑圧的な法律・政策や社会慣習が存在していても、当然ながら、ジェンダーギャップ指数は日本よりもマシな値になる。
- 極端な話、女性の首相や大統領が女性差別主義者に暗殺された国が有っても、その暗殺事件は当該国のジェンダーギャップ指数に何の影響も与えないし、暗殺された女性の首相・大統領の政権が長期政権であったなら、次の首相・大統領の政権の女性閣僚が大幅に減ったり、次の国政選挙で女性の国会議員が大幅に減らない限りは、当面の間は当該国のジェンダーギャップ指数は大きく変らない。
では、計算式や算出方法そのものがおかしいのでは無いのか、と言われる方も当然居るでしょうが、そりゃ、フェミニストの中にも批判派が少なくないような「指数」ですので、としか申し上げようが有りません。