概要
19世紀後半(1860年~90年代)に流行したスタイル。
腰当(バッスル)を着用しオーバースカートの裾をたくし上げて、ドレスのヒップラインを強調したもの。真横から見ると、コルセットで支えられた胸と合わせ、Sの字を書いたようになる。
日本でも明治時代、貴婦人の肖像画や鹿鳴館の舞踏会を描いた浮世絵などでバッスル・スタイルの女性が描かれている。
また、バッスルスカート、バッスルドレスの名前で現在もロリィタファッションなどに見ることができる。
歴史
鯨の髭などで作った輪(フープ)を組み合わせた骨組みをスカートの内側に仕掛け、大きく膨らませたクリノリンは、優美な反面、座ったときに骨組みが足に食い込んだり、視界に入りにくい長い裾に暖炉の火が燃え移ったりと、事故が絶えない代物だった。
そこで、安全な形で女性の魅力を強調する別な方法として新たに流行したのが、このバッスル・スタイルであった。バッスルそのものは大量の布で形作ったり、馬の毛を詰めるなどの工夫が施されている。
動作を軽くするため、籐製の籠やワイヤーで膨らませた上から布をかぶせる場合もあった。この骨組み構造はクリノリンから引き継がれたものだが、下半身の全面をぐるりと覆っていたクリノリンとは異なり、後面の腰部から脚部にかけてのみのもので、クリノレットと呼ばれた。
バッスルが最も流行したのは1870~1880年頃である。
森薫の代表作エマのコミックス第5巻では、主人公の恋人、ウィリアム・ジョーンズの母親オーレリアの若き日の姿が描かれているが、そのファッションがこのバッスル・スタイルである。『エマ』本編は時代が20世紀に移ろうとしている頃であり、すでに本編では尻を強調するバッスルは廃れ、コルセットで胸を押し上げて強調し、スカートはほぼストンと落としたスタイルへと移り変わっている。
いずれにせよ、コルセットでウエストを締め上げたうえでのファッションには変わりなく、当時の女性たちはこのコルセットがもたらす健康被害に悩まされ続けていた(詳細はコルセットを参照)。
女性がコルセットから解放されるには、20世紀初頭、現代型ブラジャーの発明と流行を待つことになる。
関連イラスト
クリノリンと並び、見た目にいかにも優雅であるためか「貴婦人」のタグがつけられているイラストに多く用いられている。