概要
バンプファイアとは銃の引き金にもう片方の腕の人差し指を入れることで反動を利用して連続して引き金を引くことで疑似的にフルオート射撃を行う行為のことを指す。
(右利きの場合)右手はグリップを握らず、人差し指をトリガーにかけた状態で固定し、左手はハンドガードを前方へ押すように保持する。この状態でトリガーを引くと、まず反動で銃が後退するが、左手の力によって即座に前方へ押し戻され、右手人差し指にトリガーが押し当てられ、すかさず2発目が発射される。
あくまでも疑似的なものであり、両腕がふさがる為正確な照準などは行うことができない上、精度が低下する。
また、銃によっては作動不良や破損、暴発といった危険性も高く実用的とは言い難くあくまでも民間でフルオート射撃を疑似的に楽しむための小技の一種である。
また、所謂AR系統の銃にはバンプファイアストック(後述)なるものが開発されたが、問題を起こして違法な物となった。詳しくは記事参照。
ただし、バンプファイア自体は射撃技術であり速射を禁じる事はできず、銃の構造的に無くすことが不可能であるためか対策は行われていない。
バンプファイアストック
前述した銃の反動を利用しての連射をより簡単に実行するために作られたカスタムパーツである。
ストックとグリップが一体になっており、銃本体は大きく前後動できるように緩く保持される。このパーツを取り付け、ハンドガードを前に押して保持すれば、あとは普通にグリップを握ってトリガーを引くだけで銃が前後動してバンプファイアが可能になる。
スイッチでロックすることで動かないようすることができるので普通に撃つことも可能。
なおバネなどにより前進する力を与えてしまうと「フルオート機能を持つ銃」となってしまうので、前身させる力は人間が与えなければならない。
ストックがガタガタなので命中精度は低く、法的問題のない公的機関では全く採用されていないが、民間では合法的に安く(ものによるが20ドル程度)フルオートが体験できるパーツとして人気を博していた。
2018年12月までは。
歴史
アメリカでは1986年以降、民間向けにフルオート銃器は出回らなくなっていた。一応1986年以前に販売された銃器は対応したライセンスを持ち、相応の税金を払えば所有できたものの、所持可能なのは一部の州のみであり、銃自体に希少性と投機目的にプレミアがついて価格が跳ね上がっており、一般には手が出しづらいものであった。
その代替として2002年に現れたのが「Akins Accelerator」である。これはハンドガードまでが一体となっており、銃をスプリングの力で前進させることで連射を可能にしていた。
しかしながら2006年にATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)が規制を強化し、Akins Acceleratorはフルオート銃器であるとして規制の対象になってしまう。
そこで生まれたのがスプリングを持たないバンプファイアストックであった。これはATFの規制とはならず、一部州以外では無規制に疑似的とはいえフルオート機能を獲得する手段として出回った。
しかしながら2017年にラスベガスで起きた銃乱射事件で現場からバンプファイアストックが発見されたことにより悪評が広まり、NRAが「半自動小銃を自動小銃のように機能させられる装置は追加規制の対象にすべきだ。」としてATFに働きかける。
トランプ大統領(当時)の強い要請もあり、2018年12月にATFは「バンプファイアストック及び類似した機構を持つものをマシンガン(フルオート火器)とみなす」という規定を発行した。
上述のフルオート規制の例外は1986年以前のものに限られるため、2019年3月以降は歴史の浅いバンプファイアストックは全て規制の対象となり、対応したライセンスを持たないのであれば銃火器を所持していなくともストックの所有者は廃棄かATFへ引き渡さなければならない。
一部の余興などでこのストックを使用していたマニアからは批判が殺到し、法律上の禁止事項を元の規定を発行するATFが法律が作成されないまま規制を発行するという異例の事態もあって、複数の団体が差し止めを求めて訴訟を起こしており、現在も継続中である。(乱暴に言ってしまえばこれを前例として禁止されていないことまで規制できてしまう為、権利の侵害と言える事態である)
類似した機構というのも問題であり、類似した疑似フルオート機構を規制できる一方で輪ゴムのようなゴム紐一つで銃自体は無改造のままバンプファイアが簡単にできるようになる事もあり、規定自体が無意味となるか、それらまで対応しようとすると規定の範囲が広くなりすぎて多くのものがマシンガンとなってしまうと、実効力より政治的な動きの強い規制となっていた。
2020年3月の最高裁の中間判決においては規制は違憲と判断されているものの、一時差し止めはされずに規定は継続していたが、連邦最高裁判所は2024年6月14日に禁止は無効とし、バンプファイアストックは合法となった。
ちなみにカリフォルニア州などの一部の州では疑似的であってもフルオート射撃を可能とするものを州法で規制していたことから所持できない地域があった。
上記のように一時期は違法とされたものの、無登録で販売がされている部品である事から実態は把握できておらず、差し止めの訴訟が起きたことで再び合法化の可能性があった事や、他の違法化したパーツ同様に表立って出さなければわからない事から、規制期間中も多くが回収や破棄されずに残っていたと思われる。