概要
『ファーストラヴ』は、島本理生氏によるミステリー小説。父親を刺殺し逮捕された女子大生と事件を取材する臨床心理士、それぞれの周辺人物を通じて、現代社会における家族の闇を描く。
2020年に真木よう子主演でNHKでドラマ化され、2021年に監督・堤幸彦、主演・北川景子で映画化された。映画版主題歌は、Uruの「ファーストラヴ」。
あらすじ
臨床心理士の真壁由紀の元にひとつの執筆依頼が入る。それは、アナウンサー志望の容姿端麗な女子大生が画家の父・聖山那雄人を刺殺した事件について、被疑者である聖山環菜を取材し1冊の本にまとめてほしいというものだった。周囲は「就活に反対されたから父親を殺害した」と犯行動機を推測したが、逮捕後の取り調べで、「(父を殺さなければならなかった理由が自分でもわからないので)動機はそちらで見つけてください[6]」と言い放ち、ワイドショーなどで大きく報道されていた。
由紀の義弟である弁護士の庵野迦葉は環菜の国選弁護人に選任されていた。環菜の母が検察側の証人に立つことを知り、大学の同期生でもある由紀に協力を依頼。由紀と迦葉、それぞれが環菜との接見や手紙のやり取りを進めて行くうちに、ふたりが環菜から聞いた話の内容がつじつまの合わない部分があることに気づき、「環菜は本当のことを話していない」と由紀は考えた。それを踏まえて由紀と迦葉は環菜や那雄人の知人らから家庭環境について話を聞くうちに、環菜が過去に心に問題を抱えるに至った経緯を突き止める。その過程で、由紀もまた自身の生い立ちや、迦葉との関係について向き合っていくようになる。
事件の裁判が近づく中、環菜は殺意を一転して否認。由紀は自身がクリニックで診療を受けていた頃を思い出しながら、初公判の日を迎える。
登場人物
- 真壁由紀
臨床心理士で、夫と息子の3人暮らし。クリニックでのカウンセリングを主たる業務としているが、最近は教育問題に関するテレビ番組への出演もしている。辻からの依頼で、聖山環菜のルポタージュを執筆するため取材を進める。
- 真壁我聞
由紀の夫。かつては報道写真家を目指していたが、由紀との結婚を機にその道を諦めた。現在は結婚式場のカメラマンとして働きつつ主夫業もこなしている。
- 庵野迦葉
弁護士で、由紀とは大学の同期。幼いころ両親に捨てられ叔母(=我聞の母)のもとで育てられた。そのため、我聞とは兄弟同然の関係。国選弁護人として環菜の事件を担当する。
- 聖山環菜
女子大学生。都内でアナウンサーの面接試験を受験した日、体調不良によって途中辞退、その後父親の那雄人を刺殺したとして逮捕される。「美人すぎる殺人者」としてマスコミではセンセーショナルに取り上げられた。
- 聖山那雄人
画家。環菜の父親だが血のつながりはない。勤務先である二子玉川の美術学校にて、環菜が持ち込んだ包丁により死亡。
- 聖山昭菜
環菜の母。那雄人とは美大の同級生で、学内でも一二を争う美人だった。環菜の裁判では検察側の証人として出廷する。