概要
「ヤンぬえ」とは、東方Projectに登場する封獣ぬえがヤンデレと化した様子である。
ぬえは古くから伝えられる大妖怪・鵺である。
『星蓮船』のころは以前まで所在していた地下世界で知り合った村紗水蜜らの行いを邪魔してやろうという妖怪としての一面も見せたが、同作において自身の悪意さえ許容する聖白蓮の器量に感服。続く『神霊廟』にまつわる一件ではその危機意識もさることながら命蓮寺の恩義に報いるべく行動を起こすという情にあつい一面も持つ。
正体不明を体現する存在ながら、その心理には人間も共感できる部分のある存在である。
「ヤンぬえ」においては、正体不明の鵺のように多分に入り組んだ感情と、しかしその向かう先があまりにも明快なぬえの姿が描かれている。
眼差しをどれほど歪めようとも、焦点は「あなた」以外の何にもあてられていないのである。
幻想の夜空に揺らめく三原色の綺羅星は、今宵も四方八方千々に乱れる情感に彷徨っている。
かつてその身を焼いた一矢の痛みは、ただそのひとつだけであらゆる正体不明を白日の下へと暴露した。そして今またその心は、見えざるはずの魂を射られてしまっていた。
埋め尽くすほどに溢れるこの気持ちの原理とは、一体何であるのだろうか。
いや、もはやそれに至る軌跡を問うことになど意味はない。
ただただ終わりのない「あなた」への愛だけがここにあることで充分なのだ。
その愛のあまりの深さは、あるいは「あなた」には正体不明かもしれない。
だが彼女にとってその愛は、自らの存在とは真逆なほどに明瞭なものなのだ。
さて、ぬえは何故「あなた」をこれほどまでに心を重ねているのだろうか。
もしかすると「あなた」は、お寺のはずれにいた彼女にやさしい声をかけたのかもしれない。
理解を越えたものの集合であるぬえの魂を、「あなた」はその身に強く惹きつけたのだ。
そしてぬえは「あなた」によって再び正体不明を失ったのだ。
正体不明を重ね合わせようとも、その実体が自らを知ることが出来ない限り、それは孤独である。
だが今、その正体不明はひとりぼっちではなくなろうとしていた。
その心に焼きつけ、彫り込まれた、「あなた」という存在によって。
もしもその愛を阻む者があるならば、とりまくすべてはその正体を失う。
自らの像を失った世界など、維持できるはずもない。
ただ、それでもなおぬえが失いたくない「あなた」だけは、決して正体を失う事はないだろう。
「あなた」は、終わることなく「あなた」でありつづけるのだ。
そして千年に勝る時を重ねた有形無形の正体不明がうごめく世界で、ぬえの体温だけがいつまででもはっきりと「あなた」を包み続けてくれることだろう。