概要
正式名は「DT230ランツァ」で、国内のDTシリーズとしては最後に開発された車種である。
排気量224ccの水冷2ストロークエンジンを搭載し、最高出力は40馬力。
本車の特徴は、戦闘力を求める傾向の強い2ストローク車にあって、乗りやすさを追求した点である。
シート高は865mmとライバルより低く、サスペンションの沈み込みが深い事もあり足つきは良好。
始動もセルモーターのみ標準装備。キックスターターはオプションだった。
YPVSの効果もあり低回転のトルクが厚く、高回転まで回さなくても十分なトルクを発揮した。
リアのスライドを容易に制御するため、トラクションコントロールも装備。
このような性格から、2ストローク版セローと評された。
先代にあたるDT200WRが非常に戦闘的な設計だったのに対し、上記の通り大幅にまろやかな性格になったことから、競技で用いられることはまず無い。
しかし、林道からツーリングまでそつなくこなせる万能さは、メーカーの狙い通り初心者でも気負わず乗れるトレール車として絶賛され、今なお評価が高い。
1999年に排ガス規制の強化により生産終了。僅か2年と短命だった。
注意点
1997年モデルを前期型、1998年モデルを後期型と称される。
前期型と後期型はカラーリングが違うのは見ての通りだが、それ以上に目に見えにくい変更点が多い。
特に有名なのが、トラクションコントロールのプログラミングである。
前期型は、時速40km/h付近での加速中に突然失速する症状が度々発生する。これはバグなどではなく、騒音規制を通すために仕組んだ意図的な措置といわれる。
後期型ではプログラミングが変更されている為、発生しない。
他にも、前期型はクランクケースのオイルシールやチャンバーのガスケットの設計が不適切で、それぞれ後期型で対策品に設計変更されている。
スイングアームも前期型はスチール、後期型はアルミであるなど、前期型は総じて設計の甘さが目立つ仕上がりだった。
このため前期型は後期型より中古車が安価な傾向にあったが、生産終了から久しく、2ストローク市場が高騰している現在ではあまり差は無くなっている。