概要
オーストラリアのアボリジニの間で語り継がれている巨大な虹蛇。
カタ・ジュタ(オルガ山群)、またはウルル(エアーズロック)に住んでいるとされ、それぞれ異なる神話が残っている。
表記揺れとしてWonambi、ワナンビ、ウァナムビ、ウァナンビなどがある。
カタ・ジュタ(オルガ山群)の神話
いくつもの岩山で構成されたカタ・ジュタの最も高い山に住んでいる。
波のようにうねったヒゲ、長いたてがみ、鋭い牙をはやしている。
雨季には山頂の水たまりで暮らしているが、干上がると山の東側にある水場に移る。乾季の終わる頃にはそこも干上がるため、水たまりが雨水で貯まるまで岩山の中に引っ込む。
カタ・ジュタの西側には長い一直線の谷が続くウォルパ渓谷が広がっているが、この渓谷を吹き抜ける風がワナムビの息である。
この風は普段はおだやかだが、誰かがワナムビを怒らせると嵐となり、犯人を殺して魂を盗むために虹蛇としての姿を現す。
そのため、火をおこしたり、水場を勝手に使ったりというようなワナムビを怒らせるようなことをする者は誰もいない。
ウルル(エアーズロック)の神話
ウルルのある場所はかつては平たい砂丘であった。夢現時(ドリームタイム)の終わりに、隆起し今の大きな一枚岩にまで姿を変えた。大昔の生き物達はその姿を岩や木に変えてウルルの周囲に残っているのである。
ウルルの岩山の堅い外殻の下の洞穴の中で、数百メートルの虹蛇ワナムビが暮らしている。洞窟の入り口は、ウルルの丘の上の深い水穴にある。
ワナムビが悪業を知ると怒って虹蛇の姿になり、周辺のすべての水場や泉から水を奪ってしまう。
ワナムビはトーテムを持っていない。夢現時(ドリームタイム)の終わりに、土地の形成に関与しなかっため、ずっと同じ大蛇の原型の姿で生き続けているのである。
参考文献
『世界の民話 36 オーストラリア』小沢俊夫訳、ぎょうせい〈世界の民話〉、1986年4月10日。ISBN 4-324-00065-4。
その他
オーストラリアで化石が発見された更新世の時代に生息していた大蛇「ウォナンビ・ナラコーテンシス」の名前の由来となった。更新世に生息した大ヘビの骨格