一年に一度、無人にしなければいけない村
いちねんにいちどむじんにしなければいけないむら
投稿主が取引先の知人に聞いた話である。
彼の実家は東北の日本海側。
かなり過疎の進んだ集落なのだという
今では文明の利器によって暮らしやすくなっている。
しかしそんな現在でも1年に一度村を無人にしなくてはならないという。
その日近くになると村人は荷物をまとめ家の戸を閉じ村から離れると言う。
しかし他所から来た夫婦は移動をしなかった。夫は迷信だと言い張り村にのこり妻もそこに居合わせた。一人の老婆が妻に絶対に目を開けてはいけないと助言をし小さな手彫りの仏像を渡した。
そして前日の夜特に何も起こらず10時に床についた。しかし深夜0時を回る頃通るから「ズン…ズン…」と足音が聞こえ怖くなり夫を起こす。遠くから「おーい…おーい…」と小さな男の子の声が聞こえた。それがかえって恐怖であった。夫婦は震えながら布団にこもった。そして当日朝を迎えた。
家の外に出ると周りから獣臭が鼻を突いた。妻は夫に村から出ようと提案するが夫は拒否。そして、夫は何かに魅入られたように猟銃を持ち倒してやるとつぶやいた。日が出ている間は何事もなかったが夜に変わると一変。別世界に迷い込んだように静まり返った。家の周りから子どもたちの笑い声がきこえ夫は確認するために戸を開け眺めると悲鳴を上げ猟銃を取りに走った。妻は恐怖のあまり目をつむり仏像を握りしめた。すると突然何者かが家の壁を突き破り入る音が聞こえた。
銃弾の音が聞こえ夫の叫び声が聞こえその後引きづられる音が聞こえた。妻は夫が引きづられているのだと直感した。妻は何者かが顔を覗き込んでいる感覚に襲われそして「フーッフーッ」と息遣いが聞こえた。数時間経つと夫の声が聞こえた「何をしている。もう大丈夫だぞ…」と安堵で目を開いた妻であったが目の前には顔の覗き込むように女が立っていた。恐怖で固まる妻。女は両手で妻の顔に近づけた。突然妻は睡魔に襲われ朝に村人にたたき起こされたが何も見えない。妻は両目をきれいに取られていた。
後の調査で夫の頭髪らしきものが村のハズレに落ちていた。クマに襲われたと決定づけされた。村人は夫がクマに襲われたと誰も本気で思い込んではいなかった。その事件がありより厳しくなり村からは残れないようになった。
そして、一体何がやって来るのかすら分からないまま、
今でもその集落では一年に一度だけ、
村が無人になる禁忌の日が存在し続けている。
きっと、これからも、ずっと…。