概要
江戸時代に書かれた絵本読み物『絵本小夜時雨』や怪談集『大和怪異記』で言及されている幽霊(?)。
寛政10年(1798年頃)の7月。京都大仏殿に雷が落ち、壮観だった建物が見るも可でもなく消失してしまうという事件が発生した。
天災だったとはいえ、この出来事は誰もが非常に残念がっていたが、そのうち、「大坂寺町のほとりの松の茂みが、京都大仏殿の本尊を彷徨(ほうこう)させる。」とい噂が広まっていった。
そこでこの噂に興味を持った人々がその真偽を確かめようと次々に大坂へと出かけて行く様になり、町は俄かに賑わう様になった。
見てみると、確かに気の形がぼんやりと失われた本尊の様に見え、ことに、遠く1本だけ伸びている樅の木は、まさに御首(みくび)の様であると、たちまち大評判になり、有難がる者も現れ、その木に向かって手を合わせる姿さえ見られる様になったという。
また、夕暮れ時に浮かび上がる影はさながら仏の幽霊の様であったともされている。