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天華百剣-乱-

てんかひゃっけんらん

電撃文庫から刊行されたライトノベル作品。著者は出口きぬごし、イラストはあきは、原案は天華百剣プロジェクト。既刊は全一巻(未完結)
目次 [非表示]

概要

天華百剣プロジェクトの作品の一つ。

2018年、文庫本が発売された。

後述の理由で制作側と読者側に齟齬があり、前後編完結のはずが未完のままに終わってしまった。


あらすじ

日本によく似た異世界の銘治時代。主人公の小次郎は御華見衆の富士見支部配属の巫剣使いで、巫剣と呼ばれる美少女の姿をした刀を従えて宿敵の禍憑から人々を守っている。

ある時、不可解な事件が連続して起こり、彼は原因解明のために愛刀の軍刀甲とともに調査を進めていく。

犯人は御華見衆上層部暗殺を目論むテロリストであり、敵の身勝手な犯行に巻き込まれた小次郎は、大事な人や巫剣を失うことになる。


キーワード

  • 御華見衆

巫剣を統括する朝廷機関。「艦これ」でいう鎮守府にあたる拠点は、各地で湯屋や茶店を営んでいる。組織の管轄下におかれた巫剣と使役者には厳しい決まりがあり、それが物語の主題部分にもなっている。

  • 錆憑

巫剣の刀身が物理的に錆び、持ち手の巫剣が精神崩壊を起こす現象。心因性の場合もある。

他社のゲームでいう妖刀少女。


ゲームと本作との違い

「天華百剣」プロジェクトの一作品として、スマホゲームアプリ「天華百剣-斬-」(2017年から2021年8月まで配信)がある。

ジャンルは「美少女剣戟RPG」で、主人公は小次郎ではなく、上野支部に配属された巫剣使いの青年である(名前はデフォルトから自由変更可能)。初期刀も城和泉・牛王・桑名江の天下三作であり、軍刀甲や小烏丸の入手条件は限られている。

ゲームでは横スクロールでSDキャラが可愛らしく動く明るい作風、本項の小説ではシリアスな展開が多いせいか、その違いを前もって知らずに読んだゲームユーザーの混乱を招いた。

過去に公式サイドでは「天華百剣-乱-」が正史であり、ゲーム「天華百剣-斬-」はそれにつながるスピンオフとして扱っていた。


登場人物

小次郎

主人公でまだ幼さの残る14歳の少年。苗字は不明。人間的にも巫剣使いとしても成長途中で、周りに流されやすいところや軽率な判断で事態を悪化させることもある。

みやび

禍憑被害から小次郎に助けられた天涯孤独の令嬢。自身も巫剣使いを目指し、コミカライズ作品の「発」では主人公として活躍する。

三十二式軍刀甲

メインヒロインの巫剣。製造過程で期せずして顕現した珍しいケースの個体で、人の肉体を得たばかりなのもあり主人公を刷り込み式に慕っている。

小烏丸(天華百剣)

古参の巫剣でゲームでは伝令役の政府刀。作中では小次郎の保護者がわりという設定。

水心子正秀(天華百剣)

古刀に憧れる勉強熱心な新新刀。ゲームでは帰国子女で英語交じりの口調だが、乱ではキャラが定まらず標準語で話す。ある意味本作最大の被害者

阿修羅丸

御華見衆から指名手配を受けている離反者の巫剣使い。指令や副指令と過去にかかわりがあり、大包平や肥前忠広を引き連れ私怨でテロ活動を行っている。

小太郎

勅命を受けて阿修羅丸を追跡していた巫剣使いで小次郎の兄。追い詰めた客船で敵と対峙するが、弟の浅はかな行動が原因で命を落とす。

数珠丸恒次(天華百剣)

小太郎の愛刀で天下五剣が一振り。彼と行動を共にし、阿修羅丸の配下と戦っていたが、恋人同然に接していた小太郎が目の前で殺害されたショックで大パニックを起こす。錆憑化した後は描かれていないが恐らく死亡したとされる。

武蔵

小次郎たちの父親で表向きには女性専用銭湯「みやこ屋」の店主。やもめであるのをいいことに「刀剣観賞」と称して従業員の巫剣たちに性犯罪をはたらく。

















以下の記述は作品そのもののネガティブキャンペーンや作者の批判の意図はないため、あくまでも問題提起としての閲覧を推奨する。














問題の箇所

 Amazonのレビューでも炎上していた個所は、水心子正秀の死亡シーンだとされる。

 本作の第三話終盤、敵が七星剣を暗殺するための罠をどういうわけかみやこ屋へ送る。水心子がその怪しい小包をお菓子の差し入れと誤解し開封した瞬間、彼女は毒蛇に噛まれて錆憑化してしまう。

 暴走し襲い掛かる彼女を小太郎はなんとか助けようとするが、時すでに遅し。小烏丸から介錯を受けて水心子の身体は消滅し生き返ることはなかった。

 次に問題視されていた個所は、敵側の巫剣として登場する肥前忠広の過去だとされる。彼女の売春歴(史実上持ち主の貧困で売られたことに絡めて)は、読者にあまり良い印象を与えなかった。

 小説の文体にも少々難があり、錆憑化した水心子がノーブラの浴衣姿で「ミナ、ゴロ死!」「オオオオォォォォ!」「ミナ、ゴロォォ死ッ!」などと叫びながら仲間に攻撃するシーンは思わず本を閉じてしまった人もいるだろう。


さてこれを「刀剣乱舞」で例えたらどうなるか。

もしも独自解釈の強いノベライズ作品が出て、水心子正秀(刀剣乱舞)がツッコミどころの多い雑な経緯で敵に操られ時間遡行軍堕ちしたら。バカみたいな奇声を発しながら寝巻姿で審神者の命を狙った挙句源清麿(刀剣乱舞)にすら助けてもらえず刀剣破壊されたら。おそらく苦情が来るどころの話で終わらない。


【浪漫と書いてオッパイ】

上記の珍事に加え、本編で読者の神経を逆なでしてしまったのは、ちょくちょく出てくるお色気ギャグ描写である。

書き手はシリアスとそうでない場面の緩急をつけたかったのだろうが、キャラクターの倫理観を疑うものばかりで逆効果となった。


  • エロ親父が巫剣たちの入浴を覗き、未成年の主人公にまで加担させる
  • 「お手入れ」と呼ばれるオイルマッサージで上半身裸になり、あまりの気持ち良さに大きな声で喘ぐ水心子
  • 数珠丸恒次の性経験済みカミングアウト
  • 指令にキスをする副指令
  • 木箱の中に隠れた状態から、ブローノ・ブチャラティよろしく主人公の汗を舐める軍刀甲
  • 低体温症をおこしかけた主人公を人肌で暖めようと、自ら服を脱ぎ捨て裸で彼を抱く軍刀甲
  • 小次郎くんの朝のチカパシ

1個1個は萌えシチュかもしれないが、敵と戦わなくてはならない状況で「そんなことしてる場合か」と脱力せざるを得ない。



【原因】

本作は「人気キャラが殺された」こと以上に、作り手側が各作品との線引きをしなかった事がファンのヘイトを買ってしまった原因だろう。そのため、「乱」の著者も「書かされた」点ではある種の被害者ともいえる。

厳密に言えば「殺してはいけない」のではなく、その人物の死に意味を持たせて読者から納得してもらわなければ、商品化された紙媒体として売り上げに関わってしまう。

著者の出口きぬごし氏はインタビューで「錆憑の要素を、作中に組み込まなければならないという電撃文庫担当者の指示があった」「プロット構想の時に登場人物の誰かを錆憑化させなければならなかった」と話している。そのうえで「ゲームに実装されていない巫剣を選んだ」とも述べたが、水心子正秀は小説連載中にゲームでプレイヤーキャラとして後日実装されている。執筆側が未実装だと思っていたキャラがゲームでは実装されているという部分に、公式の監修の甘さが出てしまったことになる。

出口氏だって水心子正秀がシエラ氏の美麗イラストでデザインされた美少女で、ウマ娘のライスシャワー役でも有名な石見舞菜香氏が演じる人気キャラだと執筆前にわかっていたら錆憑化に抜擢しなかったのではないか。


また、「天華百剣-斬-」には「艦これ」や「刀剣乱舞」とは異なりゲーム上のロスト(刀剣破壊)がない。読者はロストがないゲームのキャラなら作中で死なないだろうと思って読んでいただろう。しかも、ゲームのメインストーリーでも北谷菜切が敵の罠で錆びかけたが、主人公に救われ改心したため、余計に水心子の犠牲と小説版主人公の無能さが悔やまれる。

例によく使われる「如月ショック」だが、その語源であるアニメの「艦これ」は2015年初頭に放送された。ソシャゲのメディア派生作品はまだまだ視聴者のニーズが手探りの段階だったのではないか。制作側も失敗しながら学ぶ面もあったとされる。「天華百剣」はその約二年後の本格始動であり、別会社とはいえ「擬人化ジャンルで登場人物の生死を扱う際は注意しなければならない」という教訓を無視した暴挙がコンテンツの寿命を縮めた一因と言える。


運営企画側が「作品内のキャラクターを愛するユーザーの視点」になれなかったことがこうした齟齬を生んだとされる。


余談だが、「艦これ」の如月のモデルとなった駆逐艦も海戦に敗れ敵艦隊に轟沈された史実があり、アニメでの展開はあくまで史実の再現である。

しかし、江戸三作の一振りである打刀・水心子正秀は、持ち主たる勝海舟のルーツをたどってもモデルの刀が折られた史実はどこにもない


ゲーム版との関係の変遷

先述の展開・批判から、「乱」が原作なら自分の愛刀も非業の死を迎えるのではないかと不安視したファンを鑑みて、「乱」は「斬」のパラレルワールドの話ということに方向転換した。


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