概要
斜面に階段状に開かれた田んぼのこと。畦は斜面が比較的緩やかな場合は土手、急斜面につくられる場合は石垣も利用された。
今日の水田の多くは、広大で平坦な平野部に開かれているが、灌漑技術の未熟であった中世以前は、あまりに平らな土地は農業用水の管理が難しく、水田の多くは若干の傾斜のある山すそや河岸段丘、扇状地などにあった。傾斜地で水を引ける場所には棚田も開かれた。
江戸時代には灌漑技術が発達して平野部にも広大な水田地帯が生まれるが、平地の少ない山間部や山が海岸に迫った漁村では、自給用の水田として棚田が広く見られた。
高度経済成長期以降、トラクターやコンバインなどの大型機械の作業効率を上げるため小さく不整形の田んぼを長方形にまとめる「圃場整備」が進む中、作業効率の悪い棚田は多くが耕作放棄地として山林に戻っていったり、スギなどの造林地になったりして姿を消していった。現在、日本に残っている棚田は、棚田文化の保存や、観光資源としての意味合いが強い。