概要
海に還るものとは、アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』第11話にて、桜内梨子がピアノコンクールで披露した曲。
この曲は1つ前の第10話で楽譜が登場している。梨子が取るのはピアノコンクールと今の部活動のどちらなのかが10話の肝となっている。
出場を見送るまで
この回は、梨子が冒頭でピアノコンクールの案内メールを受け取ったところから始まる。そもそも千歌が梨子をスクールアイドル活動に誘ったのは、最終的には、音楽に対して行き詰まっている梨子に、打開のきっかけを掴んでもらうためだった。ピアノコンクールは以前に梨子が弾くことができずに失敗したイベントであり、浦の星に来て元気になってきた梨子がリベンジを果たす最初のチャンスである。ただし、コンクールはラブライブ!予選と同一の日だった。
梨子はその事に戸惑い、最初は態度を保留する。ラブライブ!に向けての練習や海の家の手伝いなど忙しいなか迷い続けていたと思われる。やがて騒がしく楽しい時間を過ごして決意がついたのか、誰に相談することもないまま案内メールを消去した。
しかし、偶然にも千歌が、ピアノコンクールについて梨子の母が話題にしているのを聞いていた。その前にも、なにか考え込んでいるように見える梨子の様子に唯一気づいたのが、やはり千歌だった。
コンクールの事を知った千歌はすぐに梨子を呼び出し、二人きりで話をすることにした。みんなではなく二人だけの話にしたのは、少なくともまずは周囲の声に惑わされることなく、梨子自身の素直な意思を確認したかったからだと思われる。もちろん、梨子が話題にしない以上は勝手にみんなに広めるわけにはいかないという配慮もあったかもしれないが。
そこで梨子は、スクールアイドル活動が楽しくなってきて、その存在が大きくなっていることを千歌に語り、そのうえでコンクールと「どっちが大切か」を考えたうえで「今の自分の居場所がここだ」と結論づけたことを話す。千歌はその返事を聞いて「梨子ちゃんがそう言うなら」と受け入れた。
梨子の言葉は嬉しいものに違いないはずだったが、ただ、千歌は一瞬寂しそうな表情の後、何かを悟ったような表情を見せた。
注目して見ると分かるが、千歌がこの表情をする直前、ほんの一瞬だけ梨子も眉をひそめる表情を見せている。ふっ切れているとは言うものの、梨子にとってピアノもまた、泣きながら「私は諦める訳には…」と言う程、それを理由に転校してきた程、大切なものなのである。
千歌からの提案
その後、千歌が梨子の部屋で「海に還るもの」という、梨子が書いた楽譜を見つける。机に置いてあるその楽譜を見て、まだ梨子がAqoursとピアノとの間で揺れていることを悟ったのだと思われる。
そして千歌はその夜に今度は夜の学校へと連れて行く。そこで、梨子にピアノを弾くようお願いする。
「梨子ちゃんが自分で考えて、悩んで、一生懸命気持ち込めて作った曲」を聞くために。そこで梨子が何を見つけて、どんな答えを出したのか知って、そのうえで梨子にどうしてほしいのかを決めたかったのだろう。
前回のコンクールの失敗を思い出したのか、梨子はピアノを弾く前に少しの間手が止まる。
しかし、覚悟を決めたように表情を変えると、すぐさま滑らかに弾きだすことができた。
海岸沿いにて
梨子のピアノを聞いたあと、再び海の前に戻り二人で話をする。千歌は「梨子ちゃん、ピアノコンクールに出てほしい」と切り出した。梨子のためだけを思って出よう、出るべき、出たほうがいい、と伝えるのではなく、「出てほしい」というあくまで自分の気持ちを乗せて伝えた。
梨子がAqoursに加入した時に語ったことを思い出し、あの時からなにかを掴んでまた梨子が音楽に前向きになれていたら嬉しい、それを見たいんだと語る。千歌にとってそれはラブライブ!と同じくらい譲れないほど大事なことだった。
私はAqoursにはいらないのかと一瞬不安を見せる梨子に対しそれを強く否定したうえで、
「ピアノが大切だという気持ちに答えを出してほしい」
「待ってるから。どこにも行かないで、ここでみんなとずっと待ってるから」
と告げた。
その言葉に梨子は涙を流し、千歌に抱きつき、「本当、変な人…」とこぼす。千歌は驚いた顔を見せたあと、涙を堪えながら抱きしめ返した。
小さな頃からピアノと生きてきた梨子、今スクールアイドルを楽しんでいる梨子、
そして将来ピアノの道に戻るであろう梨子。千歌は梨子の全てを考えていた。
夜が明けて朝に変わっていくなか、
今までのように二人で手を取り合い、見つめ合い、梨子は最後に素直な言葉を告げるのだった。
「…大好きだよ」
ちなみにこのシーン、英語版の字幕では
「I love you」である。