概要
手塚治虫原作の『どろろ』に登場する百鬼丸×未央の公式カップリング
原作での百鬼丸とみお
百鬼丸は旅先で訪れたお堂で孤児達の世話をするみおと出逢い、皆を甲斐甲斐しく慈しむ彼女に恋をする。
目も見えず、声も聞こえない彼ではあったが、みおの自分に対する感情もあたたかいものだと感じており、両想いの関係であった事が窺える。
一方の彼女は、自らの仕事を厭らしいものだと彼の熱い想いを遠ざける素振りをみせていた。百鬼丸はそんなみおを一層慕わしく思い、彼女を必ず幸福にすると固く誓う。(※)
そんな二人の平穏な時は続く事なく、みおや孤児達はお堂からの立ち退きを拒否したことから侍達に惨殺されてしまう。
百鬼丸は侍達を皆殺しにした後、彼女の亡骸を抱きかかえながら最期の口付けをする。
のちに当時の事を百鬼丸はどろろに語るが、みおを亡くした時に自分は心を失ったと語っている。
「俺はみおが好きだ」
「あなたは知らないんだわ・・・」
(※)別冊少年サンデー特集どろろ(1968年4月号)にて二人は恋人同士となっていたという設定が掲載されている
2019年版アニメ
原作と違い、百鬼丸がどろろと出会った後にミオ達の住むお堂を訪れることになる。
二人の出逢いは川辺で、丁度その時の彼女は夜仕事の穢れを清めている最中であり、百鬼丸が彼女の綺麗な歌声に惹かれたが為の邂逅だった。
聴覚を取り戻して間もなく、周囲の音に混乱していた百鬼丸にとってもミオの歌は心地よく感じられたようで、百鬼丸がミオに歌をねだるシーンもある。
どろろから百鬼丸の視界に関する話を聞いた際に「自分の魂はきっと汚いから、あまり見ないでほしい」と恥じらうミオだが、無言で微笑む百鬼丸には彼女の姿が真っ白に映っていた。
他の男たちとは様子の違う百鬼丸との穏やかなふれあいに、ミオもまた「この手は嫌じゃない」と感じるのだった。
「ミオ達が暮らしやすい場所を見つけたが、そこには鬼神がいる」という琵琶丸の知らせを聞いて、百鬼丸は怪我をおしてすぐさま鬼神退治に出る。これは自分の身体を取り戻す他に、ミオの為という思いもあったのではないか。
しかし百鬼丸が鬼神を仕留め、帰った先で見たものはあまりにも残酷な光景だった。
百鬼丸はミオを奪われた怒りと悲しみから初めて妖以外の人間を殺戮してしまう。
ミオの亡骸を慈しむように抱きしめながら彼女の名前を呼ぶ百鬼丸。彼が生まれてはじめて発した言葉となった。
ミオがいつか田んぼを作りたいと願って手にした種もみは、その思いと共に百鬼丸に受け継がれた。この種籾はミオの願いの象徴であると同時に本作の芯を突く希望の種となる。
最終話、全ての体を取り戻した百鬼丸は刀を捨てミオの種籾入りの守袋のみを懐に携え、一人新たに旅立つ。
ラストシーンで百鬼丸が佇む先にはミオが願った黄金色の田んぼが広がっていた。
小説どろろ(辻真先版)
こちらも原作と異なり、百鬼丸はどろろと旅をする道中、声帯及び聴覚を取り戻した後みおと出会う。百鬼丸が初めて耳で聞いた女の声がみおであった。
みおの美しい歌声に惹かれる百鬼丸。「もっと聞きたい」という百鬼丸に、耳が聞こえるようになったお祝いとして歌うみお。
みおの姿を自分の目で見られない事をくやしいという百鬼丸。自らの両腕は刀の鞘でしかない自分は化け物同然なのだと嘆く彼に、みおは自らの顔を百鬼丸の顔に重ね「あんたは人間よ、私たちはあんたの仲間」と温かく囁く。
みおのまろやかな感触を肌に感じ息が止まったような衝撃を受けた百鬼丸は本能的にみおの体を抱きしめていた。
あくる朝、みおから蛭川田之介の話を聞いた百鬼丸は退治に出かけるが、それと入れ違いに田之介はみお達の住む寺を通り道とした水島領に向かっていた。
みおの身を案じ必死に引き返す百鬼丸であったが、彼が寺に戻った矢先、みおは田之介の一刀に深く斬りおろされてしまうのであった。
田之介の持つ妖刀を退治し、目を取り戻した百鬼丸は喜びの声を上げみおに呼びかけ、彼女の目や唇を確かめる。
が、その時既にみおは事切れており、その顔は百鬼丸の勝利を信じ、かすかに微笑みを浮かべていた。
息絶えたみおを抱き、もはやこの世のものではなくなってしまったその美しさを見つめる百鬼丸。
百鬼丸が最初に目でみたものは、死んだ恋人の姿であった。