砂姫明日香
さきあすか
飛騨の隠れ里に生まれ育ち、自然と共に生きる事を常としてきた砂神一族の生き残りであり、それゆえに自然の力を借りて様々な超能力を駆使する自然の精霊(しぜんのとも)である。
流しのお手伝いさん(家政婦)を生業としており、彼女が訪れた家には(他ならぬ彼女自身の働きによって)幸福が訪れると言われている。一方で通常ならば高校生程度の年齢であるため、作品によっては高校に通っている描写もある。
常に相棒として、みずほらしい白ネコのミックを連れている。
和田慎二作品世界の中では麻宮サキと双璧にして好対称となる、同作者作品群を代表するヒロインの一人。名字から前述のサキとコンビで「Wサキ」とも言われる。(言うまでもないが「麻宮サキ」と「砂姫(さき)明日香」であるため)
シリーズが開始した年代(1975年)の少女漫画では珍しかったであろうメカクレ主人公であり、そのキャラクター類型を切り開いた一人とされる事もある。
ただしメカクレキャラは「髪を上げたら美人」というキャラクターとして描写される事が多い中で、明日香は事ある毎に髪の下を見た人間から「ちんくしゃ」と描写される容姿であるとされている。(もっとも曲がりなりにも少女漫画の主役なので、実際に描写される際には「美人というよりも愛らしい」という形で容姿が描写されている。ちなみに運命の恋人である田添一也は恐ろしい事に「チンクシャ(変身前)の明日香の方が大好きだ!」という一歩間違えればマニアックなヒトではないかと誤解されるかのような発言をぶちかましている)
自身が危機に陥った際には自然の加護が発動して超能力者となる。その際には、メカクレが解除され容姿が美人レベルにまで整って頭身が伸び、強力な超能力を発揮する。そのため少女漫画における元祖変身ヒロインと位置付けられる事もある。(この際、連れているミックもボロ猫からシャープにして精悍な猫へと変身を遂げる)
家政婦として最初に派遣された田添家の長男である田添一也とは相思相愛の仲なのだが、自らの戦いに巻き込むことを恐れ、彼から逃げ回っていたりする。
前述のとおり飛騨山間の隠れ里「砂神村」で生まれ育つ。しかし明日香が中学生から高校生になるかならぬかの時、村は田添建設によって村人ごとダムの底へと沈められてしまう。そして、この一件は村が誰にも認知されていなかった隠れ里であったが故に、何も問題にならず、国や自治体によって「無かった事」として処理されてしまった。
かろうじて生き残りはしたものの、天涯孤独となった明日香は着のみ着のままで人里に下る。初めて下りた町で、後に恩師と慕う、元保護司の教師沼重三によって保護され、その薫陶と教育を受けて家事手伝いの才能を開花させ「一人でも道を踏み外すことなく社会を生きていける」よう、沼に仕込まれる。隠れ里出身であるが故に戸籍や住民票が未整備であった明日香に、それらを用意して人里で生きていけるようにする下地を作ってくれたのも沼であり、明日香はそれを一生の恩と心に刻んでいる。
(作者によると沼がマリアの『大逃亡』事件によって考えを改めて少年院の保護司を辞め、一教師として活動を始めた直後の出来事である。つまり明日香は沼の教え子としては麻宮サキの先輩にあたり、明日香が沼の元を独り立ちした後、沼はサキのいる鷹ノ羽高校に赴任して『スケバン刑事』の一連の事件に巻き込まれていく)
沼の元を発った後、明日香は村人たちの遺言である「村を壊し人を殺し自然に逆らった者に然るべき報いを受けさせる」ため田添建設社長の一家である田添家に家政婦として潜り込む。その頃の田添家は家族の心がバラバラとなった冷え切った家庭であった。
当初、明日香は田添家を陥れ破滅させるために潜り込んだのであったが、直後に田添家を襲った陰謀により、真の敵が田添家・田添建設などではなく、その名を騙り田添建設の信用失墜を狙った芙蓉産業の女社長芙蓉夫人である事を知る。
復讐の炎を燃やす明日香は、そのまま復讐ターゲットを芙蓉夫人とその周囲へと切り替える。騒動の最中で明日香の生い立ちと超能力の秘密を知った、田添家の長男である一也と協力して復讐を達成する。
以降、明日香は「自然の精霊」としての宿命に流されるまま、様々な「自然の敵」と相対していく事になる。が、一方で明日香に惹かれるようになった一也に対しては「自然の精霊の宿命に巻き込みたくない」と必死に逃げ回るようになる。(が、気持ちとしては明日香自身も人里に降りてきて最初の理解者である一也を愛しているため、心の奥底では一也の傍にいたいと願っている)
基本的にワーカホリックで「家事は天職」「仕事が趣味」とまで言い切り、同年代の青少年が楽しむような娯楽に対しては脇目も振らない。彼女にとって娯楽と言えるものがあるとするならば、それは学校の勉強である。
ゆえに基本的には(大企業の社長や難関大学の教授と独自の知見をもって対等に話ができ知恵を貸せるレベルには)博識の部類に入る超有能。
基本的に純朴ではあるが、同時に勤労少女でもあるため、肝心な部分はしっかりと絞めるしっかり者。
仕事に関しては「自然の精霊」の能力を最大限に活かしきり、ある時はホテルまるごと、ある時は学校全施設を、たった一人で稼働させるという離れ業さえやってみせる。
使命感が強く真面目であり、物事を深く考える、思慮深い性格だが、同時に物事を深刻に捉えすぎる悪癖がある。また真面目である性質は自然の精霊としての使命感を支えながらも一方で「危機に対して守るべき対象に自分自身を入れない」という、ともすれば究極の選択を強いられた時にはためらうことなく自分自身の生命を簡単に粗末に扱うという非常に危険な自己犠牲精神を持っている。
職業あるいは使命的に「裏方(表立って活躍しない)をもってよしとする」縁の下の力持ちタイプ。なので明日香を知る人からは多大に評価されるものの彼女を知らない普通の人々からは真っ当な評価は受けられない事が多い(本人もそれで構わないと受け入れており、我関せずの立場を取りやすい)。しかし田添家を始めとする明日香の縁者にとっては、その事に対して、もどかしいモヤモヤした思いをする事も多い(特に運命の恋人である一也が)。
恩師である沼は、そんな明日香を「自分自身の幸せを探そうとしていない」と、評しており「それではいかん」と一也に忠告している。
上記の通り、天涯孤独の身の上。家族は砂神村の水没により全員死亡している。現在の明日香にとって家族と言える人間は一也の実家である田添家の人々である。
もちろん常に「自然の精霊」として共に戦っている白ネコのミックの事を忘れてはいけない。
しかし、シリーズ第3作『ふたりの明日香』にて葵今日子が登場。クライマックスで今日子もまた砂神一族(しかも変身後の明日香とそっくりである事から双子の姉妹である事が示唆されている)である事が明かされる。しかし、その今日子とは死に別れる事となり、再び天涯孤独に戻ってしまった。
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のヒロインの一人である惣流・アスカ・ラングレー(式波・アスカ・ラングレー)の名前は、砂姫明日香からとられたもの。アスカの母であるキョウコの名も葵今日子からとられたものである。