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和田慎二

わだしんじ

日本の少女漫画家、漫画原作者(1950年4月19日 - 2011年7月5日)。親友の柴田昌弘とともに、日本の少女マンガ界に「戦うヒロイン」というジャンルを創出した。
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概要編集

広島県呉市出身の漫画家。本名:岩本 良文(いわもと よしふみ)愛称「ガンさん」。


1971年、大学生時代に「別冊マーガレット」(集英社)誌上でデビューし、鈴木光明の取りまとめにより発足された画塾「三日月会」に参加しながら作品を発表した。(ただし1976年に「三日月会」は少女漫画家志望者向けの専門教室として発展改組したため、和田を始めとした既デビューメンバーは三日月会からは離れる事となり、会の各メンバーは個々の活動・交流へと移行した)

のち集英社による白泉社への分社化に伴い「別冊マーガレット」の小長井編集長(当時)が分社(白泉社)へと転属となり、師匠の鈴木も小長井との付き合いから白泉社発刊新雑誌の誌面構築に尽力したため、それについていく形で「花とゆめ」へと執筆雑誌を移した。


男性でありながら「花とゆめ」「マーガレット」「月刊プリンセス」などの少女向け雑誌で、主に戦う美少女主人公少女漫画を描き続けた異色の男性少女漫画家。

代表作『スケバン刑事』は累計2000万部を超える大ヒットとなり、何度もTVドラマ化されている。

同作TVドラマの劇場版では「ヨーヨー売り」として顔出し出演した。

後年には漫画原作や青年誌等での執筆も多く手がけていた。


アクション女優志穂美悦子の大ファンである一方、大のロリータ・萌えキャラ好きも公言していた。「太陽の王子 ホルスの大冒険」のヒロイン、ヒルダに始まり、モモマミなどの魔法少女ものは特に大好物であった。


2011年、61歳没。

秋田書店ミステリーボニータ」に連載中の『傀儡師リン』が未完のままとなった。また半ばライフワークと化していた『超少女明日香』も未完となった。


作風および作品の特徴編集

良い意味で男性らしい感性を生かした、ドラマティックで骨太なストーリーテリングが特徴。

それまではラブロマンスが中心だった1970年代1980年代少女漫画に、ファンタジーと大胆なアクション、壮絶なバイオレンスと容赦ないグロ、および本人曰く「サービス」と称するエロスを持ち込んだ革新者である。


とはいえ本人はデビュー当初はハートウォーミングな今でいうところの日常系の漫画家となる事を真面目に志望していた。デビュー作である『パパ!』およびそこから続く一連のシリーズや『エコと兄貴さまシリーズ』など、デビュー直後に上梓された各(初期)作品はまさにその方向性に依ったものとなっている。

そんなハートフル志望の和田が現在の作風に転向した理由は、上述の小長井編集長から「ハートウォーミングなほのぼの系少女漫画など、描く人間はいっぱいいる。そもそも、そういうのは従来のベテラン女性作家の方が上手いし、これからも描く人は放っておいても出てくる。君が少女漫画の世界に留まりたければ『男性として』その感性を活かす形で少女漫画にアプローチしていかねばならない」と忠告されたため。

この忠告で和田は何を描けばよいのかが解らなくなり「ミステリーやアクションを少女漫画でやれと!?」「手やら首やら飛びまくるザンコクな流血シーンを少女漫画でやれと!?」と小長井編集長に迫ったが、それを聞いた編集長は涼しい顔で「やれば?」と全肯定(というか事実上の「やれ」指令)してしまった。この編集長の全肯定が、和田に『銀色の髪の亜里沙』を描かせ、ここから後に続く作風が構築されていったという。


自作品の中に、自身をキャラクターとして頻繁に登場させる事でも有名。「男のくせに少女漫画家の岩田慎二」がそれで、私立探偵の神恭一郎とは腐れ縁的な間柄らしく、時にうざがられながらも作品中の謎に関わる蘊蓄を語り、それが手掛かりになる、といった役回りが多い。

また、スガちゃんというメガネにポニーテールが特徴の、三枚目な女の子キャラは彼の奥方がモデルで、こちらも神探偵事務所のアシスタントなど、様々な作品に顔を出している。


また特に各作品のテーマやシノプシスとして「人類の『進歩』に対するアンチテーゼ(問題提起)」を提示している事が挙げられる。

超少女明日香』の「生霊編」の総括作である「史上最大の生霊」のあとがきでは「私は人間の存在、その未来については否定的です」と明言しており、人間がその万能性(可能性)を盲信して夢や希望を抱いて他を省みない事に対して「その説をまつりあげ民間に広めた時代とその周辺に、やはり政治を感じざるを得ません」として明確な非難を口にしている。

この編のラスボスとして登場した「史上最大の生霊・黄金のドクロ」や、あるいは『スケバン刑事』などに登場する信楽老は、まさにこのテーマに沿った「夢と希望という『欲望』のために全てをドス黒く飲み込んでいく『人間そのもの』のメタファー」としてのキャラと言える。


長年にわたり「魔法少女大好き宣言」を公言し続けた結果、性癖がファンに熟知されていたこともあって『怪盗アマリリス』など自作内で登場人物にコスプレをさせたり、魔法のステッキ的なアイテムを持たせたりと、かなりはっちゃけていた。

ただし、この域になるとファン側も慣れたもので、それこそ濃いファンは和田に対して「主人公に『ピピルマピピルマ』とか『パンプルピンプル』とか毎回、言わせましょう!」などという、はっちゃけた和田すらドン引く熱烈すぎるレターを送り、和田を大いに焦らせた。ちなみに和田はファンのこの言葉に対して「それはタブーよ!」と、魂の咆哮を上げている。


シリアスな作風を取りざたされやすい作家ではあるが、ナンセンスギャグコメディーパロディも死ぬほど大好きな人であるため、シリアス作品でも時折その正体をちょろっと出したり、あるいは愛読者すら置いてきぼりにする、ブチギレた誰得俺得(作者得)コメディーを平然と出してくる時もある。特に『ラムちゃんの戦争』シリーズはその極致として知られる(表題にもある主人公の呼称からしてお察し下さいとしか言えない作品内容となっている)。


ロボットですか? むしろモビルs……」「ロボットだ!」

「コレが新たなるロボット、KABAだ!」「カバ?」「そうKABA」「うっそだぁ、どー見てもムーミ…」「それ以上言うな! トー△・ヤ○ソ○に知られたら困る!!」


……と、まぁ商用誌で夢の国のチキンレースに参戦しようとした過去もあったりする。


「皆殺しの和田」編集

物語がクライマックスや終局に近づくと登場人物をよく殺すことで知られる。

殺しはしない場合でも、精神崩壊に追い込んで物語から退場させる、という手法も頻繁に使用する。

骨太なストーリーテリングで広げた物語風呂敷を畳む際に「キャラクターのリストラ」を多用して、伏線を切るためである。また、和田の「皆殺し」は人気キャラほど物語の必然性に関わる事無く被害に遭いやすい一面もある。乱暴に言えば「このキャラ人気出てきたから殺そう」という理由で突然前触れもなく殺られた(精神崩壊させられた)キャラもいる。(冷静に言えば、予想外のキャラ人気によって物語が振り回されるのを恐れたから退場させた、という裏事情があるのだが)


スケバン刑事原作第1部および第2部の終局は、その白眉とも言われ、人気キャラを容赦なく殺しまくり、長年のファンを奈落の底に叩き落した。

最後には主人公麻宮サキと、作品間スターシステムを担った古参キャラであった神恭一郎すらも殺す徹底ぶりを見せた。また、最後まで生き残ったキャラも「予定では殺すつもりだった」らしい。

このような容赦の無さから、他ならぬ自身のファンから「皆殺しの和田」という異名を奉られるに至っている。

なお物語上の風呂敷を畳むための必然性を伴っての冷静な皆殺し行為であり「皆殺しの富野」のそれとは皆殺しの種類が異なる。「皆殺しの田中」のほうに近い。


こうした「キャラの死亡率の高さについて」ファンから尋ねられた和田は、「『大逃亡』の時に”なんで殺した!!”って手紙が殺到してねー、それが快感で」と冗談交じりに答えているが、その一方で「それに、それだけキャラに思い入れもして欲しいしね…」とも発言している。


ただ、さすがに熟年期に入ると、やりすぎを意識したのか『怪盗アマリリス』では「主要キャラは絶対に殺さない!」を目標に頑張り、味方側に与したキャラクターには死者を出すことなく、なんとか達成した。(ただし敵側や別勢力のキャラクターは従来通りガシガシ死んでいる。)

エピソード編集

同時期に「マーガレット」や「花とゆめ」で執筆していた柴田昌弘は和田のアシスタント歴があり(和田と同じ「三日月会」のメンバーでもある)同じくSFアクションものを得意とする男性少女漫画家として、しばしば並び称される。

二人の仲の良さは有名で、共作短編にてそれぞれの代表作のヒロイン(超少女明日香砂姫明日香紅い牙シリーズの小松崎蘭)を共演させた事もある。また同作品の執筆に当たり、和田は普段作画に使用している丸ペンを、柴田愛用のGペンに持ち替え、画風を近づける工夫をしている。


2人で対談を行った際には「イメージ崩しの男たち」などといったコピーが付けられた。

和田も柴田もを蓄えた男臭い風貌であり、むさい男が美少女主人公に「花とゆめ」とかでマンガを描いているのは、読者の少女たちからすると、漫画のイメージが崩…いや異色だったのである…。


新谷かおるとはオタク仲間として親交が深く、綾波レイフィギュアを一緒に買いに行くなどしていたため「(和田)シンジと(新谷)カヲル」などと呼ばれることもあった。


和田の作品に影響され漫画家となった竹本泉とも親交があり、画集「竹本泉☆WORLD」では対談もしている(竹本の作風には和田と全然共通点が無く、むしろ対極的であるが)。

なお、和田作品の後期において出版されている単行本はほとんどが著者のあとがき付きであるが、これは竹本の影響……というか彼に「あとがきはいいですよー。作品について率直に語れるし読者へのお礼になって交流もできるし」と勧められたため。(竹本も単行本に著者のあとがきを執筆する漫画家である)始めたはいいけれど後に負担になり、それを竹本に愚痴ると竹本は「負担仲間が欲しかった」旨を語り和田を仰天させた。


和田作品とメディア化編集

非常に温厚な性格で知られるが、『ピグマリオ』がアニメ化(1990年)された際には、そのあまりの出来の悪さに日本アニメーションに対して激怒を隠さず、以降自身の作品のアニメ化を許可しなくなってしまった。


ただし、翌1991年に、ポニーキャニオンでOVA化された自身最大のヒット作『スケバン刑事』は、「海槌三姉妹編」の原作に準拠し、作画面でも和田の筆致を活かしつつ美麗な画面に仕上がっていた。演出にも和田の意見がふんだんに取り入れられたこの作品はファンからも大好評で、和田自身も出来に満足していた。


『スケバン刑事』の実写版については、原作準拠の元でマイルドに改変した第1作(斉藤由貴版)は、全面的にではないものの、原作とは別作品として納得していた。また、原作のエッセンスを再構成してハードに仕上げた第2作(少女鉄仮面伝説。南野陽子版)は、ヒロインである”二代目麻宮サキ”、五代陽子の設定が、サキの孤独を良く表現していると高く評価していた。


しかし、和田の別作品「忍者飛翔」を参考にしたという第3作(少女忍法帳伝奇。浅香唯版)に対しては、様々な理由から『ピグマリオ』以上の大激怒を起こした。同作に対しては長きに渡って「映像制作者とテレビ局が漫画家(原作者)を軽視して馬鹿にした一例」と、自作において散々やり玉に挙げていたほどである。

和田の怒りが収まったのは、かつての実写版『スケバン刑事』のファンが制作側となり、和田の意見を全面的に取り入れた映画版(松浦亜弥版)が制作・公開されて以降の事である。


これらのトラブルが原因で、和田作品に関してはメディア化お断りという方針がほぼ固まっている(制作側が「原作完全準拠」の確約と履行を宣言する場合においては、その限りではないだろうが)。



代表作編集


など多数



外部リンク編集

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