絞首刑の種類
首吊によるもの(窒息死目的)
縛首の一種で、処刑対象者の首にロープなどを巻き、ロープの端を上部に固定させて短い距離を落下させる(short drop)、もしくはロープを引き上げて、処刑対象者の体重によりロープによる首への圧迫により窒息死させるもの。
首吊によるもの(頸椎破壊目的)
縛首の一種で、処刑対象者の首にロープなどを巻き、ロープの端を上部に固定させてある程度の高さから落下させ(long drop)、その速度によって、ロープ終端において処刑対象者の頸椎を脱臼させるもの。
器具ガロットによるもの(窒息死目的)
柱の付いた椅子に処刑対象者を坐らせ、柱の穴を通したロープ、もしくは柱の外周を回したロープで首を巻き、ロープを引く、もしくはロープを巻き取ることで首への圧迫を行い窒息死させるもの。
また、椅子や柱を伴わず、首絞用ロープにロープ巻取のための道具(棒などの締具)がついたものも、ガロットと呼ぶことがある。
器具ガロットによるもの(頸椎破壊死目的)
柱の付いた椅子に処刑対象者を坐らせ、ロープで首を柱に固定した状態で、柱に設置されている棒状の突起物を押し出すことで頸椎を破壊するもの。また、予め突起がある柱に、突起部分を処刑対象者の首の後部を合わせてから、ロープを引くタイプもある。
その他の手段によるもの
ロープなどを処刑対象者の首に巻き、それを人や牛馬に引かせて絞め殺すもの。牛馬の場合、力があるため、頸椎の破壊を伴うことがある。
逆さ吊にした処刑対象者の首にロープを巻き、そのロープに重しを乗せたり人が乗ることで縊死させるものもある。
絞首刑の採用状況
日本
日本においては、江戸時代以前は、死刑囚の首に二本の縄を巻き、両側から二人の刑吏により巻きとって絞め殺す方法がとられていた。江戸時代の日本の縛首は、首に縄をかけて、縄の両端を持った二人が縄をねじって締める方式であった。江戸時代初期においては、罪や身分によって石打/切腹/斬首/磔刑/火刑/釜茹/車(牛)裂/鋸挽等と併用され使い分けられていたが、徳川吉宗は大岡忠相(大岡越前)の意見を容れて残虐な処刑法の一部を整理し、原則として火刑、磔刑、獄門、斬首、切腹のみとされた。
明治になってから、死刑は斬首と絞首のみと定められた。さらに、明治13年に落下式の絞首刑が正式に採用され、これが日本の唯一公式な刑法上での死刑執行方式となった(軍事裁判における銃殺の例はあるが、これは日本の刑法に由来するものではない)。
現在絞首刑を採用している国々
以下の各国にて、死刑執行方式として絞首刑を採用している(複数の方式から、罪状等によって選択される場合もある)
エジプト、イラン、ヨルダン、イラク、パキスタン、シンガポール、サウジアラビア、韓国、米国(一部州)
絞首刑の問題点
頸部が切断される問題
脛骨破壊による死亡を目的とした首吊刑の場合、体重と落下距離の関係を誤ると、頸部が切断されてしまうことがある。また、頸部の強度なども関与するため。処刑方法として首吊を選択している各国にて(日本でも)頸部切断事故が発生している。
事例として、Thomas Edward Ketchumに対して1901年に執行された刑がある。彼の場合、執行に使われたロープが長く、頸部が切断されてしまった(その際の様子は絵葉書として販売されており、現在でも検索エンジンで閲覧可能である)。
体重と落下距離についての英文サイト:外部リンク
英文サイトのwikipedia翻訳(表のみ):外部リンク
重量過多と軽量の問題
処刑対象者の前提を大きく越える体重場合、ロープがその重さに耐え切れず、切れることがあるため、ロープの材質及び落下距離の調整が必要になる。また、あまりに軽い場合、例えば子供などを脛骨破壊目的の首吊処刑する場合、相当の落下距離が必要になることがあり、重りを付けて処刑することがある。
失禁と脱糞の問題
斬首断頭や射殺などの他の処刑方法とは異なって、衣類についての損傷はないと思われるが、失禁や脱糞、処刑前の恐怖からくる嘔吐などによって、使い回しはできない。そのため、他の処刑と同じく、裸体で執行する場合もある。また、中世近代までは、貴族などは処刑執行前に排便排尿を促すこともあった。
頸椎破壊に対する失敗の問題
首まわりの筋肉などが非常に発達している処刑対象者の場合、頸椎破壊目的の首吊り刑に失敗し、最悪、窒息死までの時間が異常に長くかかる場合もある。この場合、国によって「処刑中止」「重しを付けて処刑を速やかに終わらせる」など対応が異なる。米国ではその失敗があったため(処刑失敗で死刑免除という法がある)、一部の州で、より確実な薬物処刑に変更した経緯がある。
絞首の目的
絞首刑の目的は、前述の通り、「窒息死」「頸椎破壊死」のふたつになる。窒息死にも大まか二種類あり、「気道閉塞による窒息死」「頸動脈圧迫による血流低下/停止による脳障害から脳死を招くものにわかれる。前者の気道閉塞は技術的に難しい面があるため、一般には後者の頸動脈圧迫を目的としている。中世の中国及びスペインにおいては、気道閉塞を行う処刑方法があったが、今は採用されていない。
執行後の蘇生
通常、死刑執行後に受刑者が蘇生することはない。しかし上述の通り、絞首刑は身体破壊ではなく窒息を目的として行われることもあり、この場合受刑者が蘇生したという記録が存在する。
日本においては1872年(明治5年)、田中藤作という農民に対する絞首刑執行が、受刑者蘇生という結果で終わったとする記録がある。田中は一揆にて放火を行い、絞柱(懸垂式の絞首台)を用いた絞首刑を執行された。しかし、彼の親族が棺桶に入った遺体を運んでいる際、彼がまだ生きていることが発覚。中央政府に報告する事態にまで発展したが、すでに刑は執行されているので、再度の執行をすることはないとして、戸籍に復活したという。
現在の絞首刑は頸椎破壊を主目的とする身体破壊刑のため、生存可能性は皆無に等しい。それでも、従来型の絞首刑においてわずかながら生還した事例があるという事実は、注目に値するといえるだろう。
pixivにおける作品の特徴
「絞首刑」タグが作品群についての分類を行うと、以下の特徴が示される。
採用手法
主に窒息死目的の首吊(short drop)についての絵が多く、ついで手による絞殺とロープによる絞殺がつづく。ガロットは極めて少なく、脛骨破壊目的の首吊刑を題材にするケースはさらに稀である。
着衣脱衣の選択
着衣(半脱ぎ含む)とヌードでは、作品数においてはその数量差はわずかであり、磔刑(着衣過半数)銃殺(着衣多数)と比べ射殺と同じ傾向を示している。
他手法の併用
磔刑(火刑や串刺し刑との併用割合が高い)や射殺(刺突刑や火刑との併用割合が高い)と比べ、他の手法との併用を題材とする作品はの割合は高くなく、水死刑など他の窒息刑と同じ様態が示される。例外的に四肢切断(だるま)との併用が垣間見える程度である。
処刑局面の選択
欧米サイトなどでは首吊中の窒息でもがく様子(air dance)を描く作品が比較的多いが、pixivには処刑前もしくは実施終了(死亡時点)についての作品が多い。
また、処刑途中における描写において、ロープが首の後ろに回っている状態のものが多く、横位置にて顔が傾いていたり、前方のロープが顎を押し上げ仰け反っている状態のものは稀である。
失禁の扱い
死亡時点を描いた作品の場合、失禁を示す描写がされることが多い(欧米の二次元絵にはそれが少ない)。なお、失禁が処刑中の意識がある状況で発せられている描写をする作品が多数発表されている。失禁のメカニズムとして、処刑前の恐怖から行われるか、死亡直前から死後数分程度の筋肉弛緩によりに行われるものである。処刑開始から意識があるまでの間と意識を失ってから暫くは、苦しみと緊張による筋肉の緊縮のため、失禁することはほとんどない。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
絞殺刑 縊死刑 縊首刑 絞死刑 扼殺刑 縛り首