説明
刑罰とは、各国・地域で定められている法律や条令などを侵した人物に対し、与える労苦のことである。
法律や条令ではなく個人間のルールを侵害した者に与える刑罰は、私刑(リンチ)であり、正式な刑罰ではない(国家の法律ではリンチは暴力や殺人罪として取り扱われる)。
「処刑」という言葉は、いまどきの一般会話では(それどころかマスコミでも)「死刑」と同義に使われる傾向があるが、本来の意味では刑罰の重さや種類にかかわらない。
刑罰のタイプ
肉体的刑罰(体刑)
肉体に損傷や苦痛を与える刑罰。現代ではきわめて実例数が少ないが、古代には一般的な処刑方法であった。かなり重い罪に対して執行される。
ときどき、何か違った意味に解釈されていることがあるようだが気にしないほうが身のためである。
日本では死刑のみとなっている。
- 死刑:肉体的刑罰の最もたるもの。
- 刺青:世界各地で行われた刑罰。
- 鞭打ち:これも世界各地で行われた刑罰。決してご褒美ではない。痛さでショック死することもザラにある。
- 杖刑:同上。これも撲殺される前に痛さでショック死することがザラにある。
- 腕きり・脚きり・鼻削ぎ・耳きり・去勢等:体の一部を欠損させる刑罰も施行されていた。今では国連の拷問等禁止条約により廃止した国が多いが、イスラム教国家やシンガポール、マレーシアなどでは今も行われている。
経済的刑罰(財産刑)
被告から金銭を取り上げたり、給金を減らしたりする刑罰。受刑者の肉体に損害が出ることは稀である(お金が足りなくなると薬が買えなくて病気が悪化するとか)。
日本では罰金、科料(罰金の更に軽いもの)、没収の3種類がある。
- 罰金:損害を受けた者またはその代理人に対してお金を払うこと。損害賠償。たぶん、現代社会で履行される刑罰のうちで最も頻度の高い刑罰であろう。
- 減俸:給金を減らす刑罰。
- 差し押さえ:被告に金銭がない場合や支払いを渋る場合などは、持っている「金目のもの」を担保として没収する。
- 没収:罰金の他に物品を没収する。日本では犯罪に使った代物や持っているだけで犯罪になる代物(違法薬物類とか)などを没収することがある。
自由刑
受刑者を一般社会から引き離してひとところに隔離して自由を奪う刑罰。犯罪者が社会に出てこないということで、一般社会の住人にとっては安心できる刑罰である。
日本では懲役・禁錮の2種類がある。
- 流刑:罪の重さによって追放の程度が違った。首都やその周辺への立ち入りを禁じる軽いものから、主要都市立ち入り禁止や主要国道周辺立ち入り禁止、さらには一般社会から隔離されたド田舎や離島・荒野に追放するものまであった。
また、追放先で強制労働のオプションが付く場合もある。
名誉刑
歴史上散見する処刑方法。受刑者に恥をかかせたりつらい思いをさせたりする。ほかの処刑方法と組み合わせることも珍しくなかった。
日本では公的な刑罰としては存在していないが、報道などで実質名誉刑同様の事態になることはある。
- 引き回し・晒し:現代はほとんど行われていないようだが、かつては犯罪人を街じゅう引き回した後でさらし者にすることはどこの国でも珍しくなかった。
- 刺青:体刑だが、世間一般に犯罪者であると知らしめる意味合いもある。
その他
- 身分のはく奪:犯罪者やその一族を不可触民などの低い地位に貶める。武家や貴族の場合、家系は取り潰しとなる。日本でも刑罰という位置づけではないが、有罪になることで選挙の立候補禁止や資格停止などの処分がある。