歴史
世界各地で時代を問わず、国家的・宗教的な慶事の際に罪人を刑罰から許すことが行われている。
日本でも、刑罰の実施は「穢れ」と見られたことから、恩赦は権力者を穢れから解放して病気の快癒や安産祈願などを理由として行われることがあった。
例えば、平家物語では鹿ヶ谷陰謀事件で喜界島に流罪となった者のうち、藤原成経、平康頼が高倉天皇の中宮・徳子の懐妊に伴い、その安産祈願として赦免され本土に戻っている。
現在の日本では、恩赦をする権限は内閣(及びその下に位置する行政機関)に属する(日本国憲法73条6号)。
特に平成から令和の改元に当たっては、55万人が恩赦の対象となった。
意義
現在では恩赦には以下のような効果があると考えられている。
1.裁判所といえども法律を画一的に運用せざるを得ない。それによって、どうしても発生してしまう不合理な処罰や法律の不備を是正する。
2.裁判で判決を言い渡した後に社会情勢が変わり、処罰の必要性がなくなった場合に処罰を止めることができる。
3.冤罪事件が起きた場合に、恩赦で処罰を止めることができる。
4.無期懲役などの犯罪者が、これ以上失うものがない無敵の人と化して刑務所の中で秩序を乱す事態を止めることができる。
批判
恩赦には批判も存在する。
1.司法権が認定した犯罪者を行政権が許すことは、三権分立に違反する。(ただし、憲法に根拠規定がある以上憲法違反ではない)
2.犯罪被害者などの立場を無視している。
3.恩赦が政治利用されて不公平な処罰が正当化されかねない。
恩赦の運用
現在の恩赦は、上記のような批判とメリットの兼ね合いの上で運用されている。
死刑や無期懲役など、重大犯罪で収監されている者が、恩赦によって突然刑罰を受けずに釈放されるようなことは、現在の日本ではほぼ行われないと考えてよい。
昭和35年以降、収監されている無期懲役囚が減刑された事例はないという。
また、現在の恩赦で懲役などの受刑者を釈放するようなケースはほとんどなく、大半は処罰に伴う資格停止から資格を回復するものである。
恩赦の種類
恩赦と一言で言ってもいくつかの種類がある。以下は一例。
1.その犯罪で処罰された人全員の処罰を行わない「大赦」
2.犯罪者個々人を審査の上で審査で認められた人の処罰を行わない「特赦」
3.刑罰の内容を減らす「減刑」
4.刑罰に伴う資格の喪失(公務員になれないなど)から回復する「復権」
一般的に
制度としての恩赦は上記の通りであるが、一般的には「罪を犯した者を許すこと」全般を指して恩赦と呼称するケースも少なくない。