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概要

芋喰僧正という化けダコが魚たちに説法を行う様子を描いた錦絵半纏を着た以外はまんま大ダコの芋喰僧正に対し、魚たちはそれぞれの種類を反映した面構えの魚人に仕上がっている。

ふぐあんかうめばるあまだい人魚乙姫海ガメ、いなせ(ボラ)と集まる魚人はバラエティに富む。

ちなみに芋喰僧正は陸に上がって芋を食うタコの妖怪。やはりというか漏斗を口に見立てて描かれ、檀は逆さにした桶、蝋燭を吊るす燭台は船の錨(釣り針のように4本あるタイプ)とユーモアに富む。

 

内容

此 入道の漢名を 絡蹄 といひ、形客をさして海藤花と称。花洛にては、十六夜鮹。又、海和尚ともいふといへり。然るに、当時、人界に持てはやさるる事と聞ものから許夛の魚類(うろくず)、是をうらやみ、龍宮城に集会て、蛸魚に 対 て、故を問ふ。

入道、例 の口を 鋒(とがら)せ、渠等(かれら)に 答 て説るやう。善哉/\、我は乍麼 薬師如来の化身にして、圓頂赤衣は 即身即佛、八足に 八葉の蓮華をかたどり、八巧徳水自在を行とす。

智力を論なば、但馬の大蛸 松に 纒 し 巴蛇を 根ぐる蒼海へ引、汐の調理は 御身等が腹にほふむり、万葉集の妹許も芋を堀との雅言、将 近来 の童謡にも 蛸の因縁 報 きて おてらがならて と 唄 しは、欲を離た悟にして足袋八足の入費を厭ぬ。

珎宝休位 清浄 無垢 しかはあれども、折々へ浮気の浪に乗がきて、生れながらに酢いな身と、我から身を喰足をくふ。破戒の罪を侵せしゆへ、此程、市場辻街に身を起臥の優つとめ、火宅の釜にゆであけられ。煮られて喰るゝ墮獄の苛責、必ずうらやむことなかれ、と。

床を叩いて諭せしは、実に 百日の説法も 芋の放屁にきゆるといへる。電光 朝露のお文さま、あら/\ゆで蛸疣かしこ/\。

 

大体の翻訳

このタコは名を絡蹄(らくてい)といい、姿を指して「海藤花(かいとうげ)」ともいった。

都では十六夜タコ、もしくは海の和尚ともいう。

なので当時人間の世界でもてはやされている、と聞いたたくさんの魚たちがこれを羨み、竜宮城に集まって理由を聞いた。

タコは口をとがらせて彼らに答えた。

 

よいかな、わたしは薬師如来の化身であるから、丸い頭に赤い衣、これはこの体そのものが仏ということなのだ。8本の足には八つの葉を持つ蓮をかたどり、8つの功徳を持つ神聖な水を自在に扱える。智力を使えば、兵庫の大ダコも松に絡みついた大蛇を住み処の海中へ引っ張っていき、潮はわたしの腹に消え、万葉集にも『妻や恋人が住んでるところでも芋掘り』と風流なことが歌われているが、もしくは近頃『タコの因縁の報いによっておてらのならて』と唱われているのは欲を離れた悟りであり、足8本分の足袋の出費も厭わないのだ。

珍しい宝は清らかでけがれがない、そのようにあるが、この頃は浮気な波にのって生まれながらに酔狂な身だと自ら体と足を食う。破戒の罪をおかしたためこの程市場に身を置き、釜で茹でられて食べられてしまう。これを羨んではいけない。

床を叩いて説くことには、百日の説法も芋の放屁に消える(長年の苦労も小さなきっかけで崩れ去るたとえ)という。ほんの一瞬のはかないものだ。ああもったいない。

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芋喰僧正魚説法
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