落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国
おちてきたなーがとほろびゆくまじょのくに
メディアミックス作品「火魅子伝」原作の舞阪洸氏によるライトノベル作品。作品ジャンルはファンタジーで、2012年から2017年にかけてMF文庫Jより全12巻が発売された。ライトノベルの挿絵はよう太氏。
コミカライズ化・ドラマCD化も行われ、漫画版は月刊コミックフラッパー・2013年5月号から2015年3月号まで途中の小説第3巻までの内容が連載(作画担当は村松麻由氏、単行本全4巻)され、ドラマCDは2015年8月31日にとらのあなより発売された。
当時は「ドリフターズ」など織田信長を起用した作品が複数あったため、それらと比較にかけるようなレビューが散見された。もっともだいたいの内容は「本作は可もなく不可もなく」で、むしろ絵師の人気に支えられているような雰囲気があった。
なお、国起こし系作品に分類される本作だが、その点の評価は微妙。
・「拠点が各資源いずれも豊富な秘境(=内政面で苦労しない)」
・「自軍は個人戦こそ非常に優秀だが、集団戦のノウハウが無い(=軍師を投入するだけで楽勝展開に)」
・「隣接している敵対勢力が1つのみで、おまけに消極的かつ愚鈍(=外交面までもが余裕綽々に)」
と全方向に恵まれすぎている時点でヌルゲーが過ぎたにもかかわらず、栄枯盛衰を描写しきれなかったため妥当な評価と言えるだろう。
魔女
劇中に登場する女性の魔法使い。呪文の詠み上げによって個人特有の魔法の効果が発現できるようになる。ただし、服装の露出度が低いとその行使の妨げとなるため、その魔女のほとんどは薄着(または実質「半裸」「ほぼ全裸」状態)である。なお、子供を成した場合は魔力が失われる。
複数の支族に分かれており、劇中ではハリガン率いる「ハインドラ一族」、ヴィータ率いる「スレイマーヤ一族」、エンスーヤ率いる「ルフォー一族」、リーシャ率いる「レジスナー一族」、ジャンヌ率いる「ジャンダルム一族」、アストゥロ率いる「ヴィエンナ一族」、ナムジャ率いる「ナナトゥール一族」が登場する。
国家など
- ノブナガ・マギカッラ
小説第6巻にて、カサンドラ王国とお互いの行動を黙認する手打ちをする際に考案した「魔女の国」の国名。
- カサンドラ王国
西果ての半島にある小国家の1つで、ハリガン率いる「ハインドラ一族」の領域に隣接。物語序盤はカサンドラ三世が国王の地位にあったが、過労のため甥のカサンドラ四世(グィスカル)へ譲位した。
魔女の討伐に熱心であったが、「魔女の国」との戦に1度敗れ先述の手打ちをすることになり、魔女の討伐を促していた旧教会側から「魔女と通じた」と誤解を受けた結果、補佐官・リガヤの勧めで「魔女の国」と同盟を結ぶことになった。
カサンドラ四世は西果ての半島さえ支配すれば「魔女の国」はどうでもよいらしく、結果物語終盤にて主人公・ナーガの討伐を命じられた補佐官・宰相のリガヤは、悩んだ末にナーガの部下としてクーデターを起こし、自身が国王の地位についた。
- グランビスタ、旧教会
グランビスタは、西果ての半島と大陸本土の境界に位置する城郭都市・国家。そこには辺境管区を管轄する旧教会側の大教会があり、その旧教会は魔女の討伐だけでなく新教会との対立を鮮明にしていた。旧教会の神聖騎士団は複数の旅団に分かれている。
第三旅団(通称「八八旅団」)の団長・ジュエルジュードは、第5巻にてナーガの策によって旅団の先鋒を壊滅させられたうえに、最後はハリガンとの一騎討ちに敗北して戦死。
また、「最凶」と謳われていた戦闘規模の第七旅団団長・グリスタンは、第7巻にて魔女・カサンドラ王国の連合軍に強襲されて戦死する。
第11巻にて、ミドルスブレイラが掘った坑道を活用した奇襲攻撃を掛けられ敗北し和睦。ナーガの支配下へ入る。
- レンスール
西果ての半島にあり、海に面している交易都市。会頭5人による共同統治。大陸本土へ進出する足掛かりとして位置付け、ナーガ達が支配下に置くことを意図したが、偶然そこで遭遇した海賊ジュダンドット一味を一掃したのを見返りとして外交関係を樹立。海賊ジュダンドット一味を支援していた大陸本土側の街・エゥラニアを攻める際は、同盟を結んで船団を派遣した。
- サント・ゼッファ
西果ての半島諸国の中で最も南に位置する小都市国家。カサンドラ王国の遠征を恐れ、第8巻にて協商を締結した。
- エゥラニア
大陸本土側、エネビア高地と西の内海に挟まれた所に位置する街。海賊ジュダンドット一味を支援していた。
沖海戦にてエゥラニア船団がレンスール船団によって動きを封じられ、海賊船もハンネゥイが銛を仕掛けたことで動きを封じられた結果敗北。レンスールの傘下へ入った。
- レキッソス王国
西果ての半島諸国の中心に立つ国家。魔女の存在を恐れて国王自らナーガと交渉、和睦を申し入れて傘下へ入った。
- ルルドルブ
グランビスタを越え、ベルデ山脈よりも向こうの大陸側にある街。ナーガはカサンドラ王国側に内通者がいると見抜き、挟み撃ちされそうになった所を回避した。
(CV:○○)の記載があるものはドラマCDに登場、声優が設定されている。
ナーガとその部下
- ナーガ(CV:島﨑信長)
史実では戦国武将として名を馳せた織田信長(若造時代)。龍が潜むと言われている湖へ落ちたことで異界へ飛ばされ、その衝撃で記憶を失った。自分の名前が思い出せず、断片的な記憶を頼りにとっさに「ナーガ」(現地では「龍王」の意)と名乗った。魔女たちの現状を理解した彼は「人と魔女とが安心して一緒に暮らせる新しい世界を創る」ことを決め、ハインドラ一族をはじめとした魔女の国の「軍師・後見人」として携わることに。
その後は完全無欠の英雄として快進撃を続けていく。だが中盤以降、時間制限的なものの予感を仄めかすように。それは最終巻にて実現してしまい、魔女国の基盤は磐石に整えたものの、その行く末を見届けることは叶わず(別視点での描写なども無し)元の世界・時間軸へと帰還することとなった。
- ライバッハ
カサンドラ王国の軍の中隊長。魔女の砦への攻撃に失敗し捕虜となったが、ナーガの存在と彼の思想を知り、かつて戦で家族を亡くした自身の経験から、その考えに賛同して彼の部下となった。第7巻の旧教会第七旅団・魔女討滅軍との戦で危機に陥ったユウキを庇って戦死。
- ラルフレッド
ライバッハがカサンドラ王国の軍を率いていた時の彼の部下。第11巻にてカサンドラ王国側の不穏な動きをナーガに伝えた。
ハインドラ一族
- ハリガン・ハリウェイ・ハインドラ(CV:浅川悠)
黒き森の漆黒の魔女という異名を持つハインドラ一族の長。自身の髪の毛を触手のように操ったり、抜き取った髪の毛に魔力を注入し、これを「木偶人形」など無生物に刺して操作もできる。一族の魔女たちからは「姉様」と呼ばれるのがほとんど。
- レラ・ライラ・ハインドラ(CV:伊藤かな恵)
理知的な読書家。常備している呪符に呪文を書きつけることで、様々な効果を発動させる応用力の高い魔法を使用。異国の言葉を話すナーガも、彼女の呪符の効果で意思疎通ができるようになった。ナーガのいた世界に興味を示しており、物語終盤では……
- ユウキ・ユウミ・ハインドラ(CV:赤﨑千夏)
人間の男が大嫌いであったが、ナーガとの関わりで徐々に打ち解けていく。風に特化した魔法を使用し、重いものを支えたり、自身の飛空板で空を飛んだりできる。
- アイス・アイシュリア・ハインドラ(CV:浅野真澄)
一族の皆を取りまとめられる姉貴のような存在。温厚で面倒見が良いが、怒ると怖い。身体各部の能力値を高めることでパンチ・キック力を大木をへし折るほどに上げたり、馬以上の走力を出せたりできるほどの怪力女子。
- ノノエル・ノリス・ハインドラ(CV:照井春佳)
水に特化した魔法を出す。呪文によって水を弾丸や槍のように飛ばしたり、膜にしてバリアにしたりなど、攻守の応用力に優れる。
- クゥ・クゥネリアス・ハインドラ(CV:相内沙英)
普段から身体全身に革帯を複数巻き付けているだけ、いわゆる「裸ベルト」という刺激的な格好をしている。その革帯を触手のように動かして、敵を縛る・物を運ぶなどの操作ができる。当然、革帯を使えば使うほどほぼ全裸状態に近づく訳だが……
- ケイ・カネーシュ・ハインドラ(CV:野中藍)
魔女たちの中では珍しく活発。身体を金属レベルで硬質化できるため、肉弾戦や防御にかなり優れている。なお、硬くできるのは皮膚止まり。
- リンネ・リリカ・ハインドラ/リンナ・リルカ・ハインドラ
双子の姉妹。五感を鋭敏にさせることに特化しており、姉妹の片方が受けた五感をもう片方と共有することもできる。
- セレナ・セレンディティ・ハインドラ
上空からの視点で周囲を見渡す魔法「天眼」の使い手。遠隔透視かつ周囲を広範囲に見渡せるので、偵察任務に重宝されている。暗闇の中でも使用可能。
- エレオノーザ・エリューシュ・ハインドラ
一族の中では珍しく眼鏡っ娘。強風を吹かせたり、雨を降らせたりなど、自然・天候のコントロールをする。その性質上、魔法の仕込みには時間がかかる。
- イクシーヌ・エレノ・ハインドラ
自身の褐色肌に施されている入れ墨の白い文様を、生き物のように動かし体外へ飛ばして、人や動物など相手の動きを封じる。ナーガに対しては好意的。
- アルルカン・ニャ・ハインドラ
のんきな口調で話し、語尾は必ず「~ネ」。獣をイメージした衣装を纏っているが肌面積は多め。動物との会話が可能で、最大で群れ単位まで使役が可能だが、なぜか乗馬に関しては下手。
- ランジュ
ハリガン一党の移動の際、留守番部隊の指揮を執るなど、ハリガンからの信頼は厚いが、本人には冷淡な一面がある。身体に黒い影の文様・オーラを纏っており、様々な物体を影を介して飲み込ませ、視界範囲内の影(陰)のある任意の地点へ飛ばし、それが武器であれば相手へ攻撃ができる。黒い影の文様がなければほぼ全裸状態。
- エスピオーネ
韻を踏む独特の話し方が特徴。カメレオンのように体表の色を保護色にする魔法が使える。見る者が場所を変えても保護色を維持でき、手をつなげば最大4人まで(本人曰く)仲間を保護色にできる。この魔法を使うときは敵にばれないよう全裸にならないといけない制約があるが、ナーガの前では全裸で平然としていたり、仲間にちょっかいを掛けたりするほど、彼女本人は変態。
- ハンネゥイ
人魚であるかのように泳ぎに特化しており、長期間息継ぎなしで水中を泳げる。第8巻では、海賊ジュダンドット一味に対し海賊船に複数の銛を仕掛けて動きを封じた。
スレイマーヤ一族
- ヴィータ・スールシャール・スレイマーヤ
スレイマーヤ一族の長。見た目は十歳にも満たない幼女であるが、実は成長が止まっているらしくハリガンより年上。重力系の魔法を使用し、対象となる生き物を重くしたり軽くしたりできる。一族の魔女たちからは「母様」と呼ばれるのがほとんど。
- エリュシオーネ・アニアン・スレイマーヤ
ヴィータの右腕で褐色肌の魔女。大きな布「マンテラ」を複数、別々の場所に置いておくことで、マンテラ間での瞬間移動ができる。ただし肉体しか移動できない制約があるため、普段の行動は「全裸状態にマンテラを羽織っただけ」の姿。人間1人をマンテラを介して運ぶことができるが、ここでも肉体しか移動できない制約が適用される。
- リィリィ
小柄で可愛い見た目に似合わず、彼女の出す雷撃魔法は一度で広範囲攻撃ができるほど強力。第7巻の旧教会第七旅団・魔女討滅軍との戦で戦死し、ライバッハたちとともにカサンドラ王国の救国の英雄として弔われる。
- ミドルスブレイラ
語尾は「~っす」。土を操ることに特化しており、地中での身動きのほか穴を掘ることが可能。第11巻では、グランビスタへ奇襲攻撃をかけるため坑道を掘った。