虚無の扉
きょむのとびら
来るべきデジタル新時代に対応すべく、666mある東京第二タワーが建設された。
だが東京第二タワーから異常な電波が発せられていると電波管理局の局員から指摘を受けていた。その調査のために渡来教授がやってくる。
そのころ、坂本剛一の周囲で奇怪な事件が多発していた。全くアイディアが浮かばなくなったCMディレクター、曲が書けなくなった作曲家らが次々と失踪。そして幼稚園では絵を描くことができなくなった園児たちが問題になっていた。
その時、坂本の目の前の園児が突如レキューム人と名乗り坂本に警告する。レキューム人は遠い昔、想像力を失って肉体を電波と化すことで宇宙を漂う異星人であり、想像力やイマジネーションのもととなるレキュームガスを探して地球に飛来。東京第二タワーから発せられる電波に乗って人間たちから想像力を奪っていたのだった。さらにレキューム人は剛一の友人で、アイディア枯渇により漫画家を引退しようとしていた漫画家の笹山に目をつけていた。剛一の励ましで漫画家活動を再開した笹山は『虚無への扉』というSF漫画でレキューム人の事件を偶然にも書き当てていたのだった。
その後、剛一が笹山の家を訪ねると笹山の姿はなく、『虚無への扉』の書きかけ原稿だけが残されていた。剛一、涼、渡来教授は原稿に目を通す。そこには今回の事件がまったくそのままに描かれており、三人が書きかけの原稿に目を通しているシーンで終わっていた。レキューム人は笹山が描いた漫画の筋書き通りに計画を進め、漫画が完結する前に笹山から想像力を奪い、亜空間へ拉致していたのだ。事態の解決には笹山に作品を終わらせてもらわなければならない。
渡来教授はレキューム人の肉体が電波であることに目をつけ、東京第二タワーから大量の電波を浴びせレキューム人を実体化させる。300mを超える巨人となったレキューム人は電波を発する東京第二タワーの上半分を破壊するも、至近距離から大量の電波を浴びせられ消滅した。
作戦の成功を喜ぶ渡来教授と涼。その横で破壊されたショックで号泣する第二東京タワーの社長だが「これで歴史に名が残りましたよ」と渡来教授が慰めの言葉を掛ける。
そんな中一人の電波管理局職員が席を外す。
彼の影はレキューム人になっていた。
ナレーター「想像力を奪われたらどうしよう。いいえ、そんな心配はいりません。今の人類に狙われるほどの想像力などありませんから。これは隣人への労わりに満ちた遠い未来のお話なのですから…」