概要
矢野燿大の引退試合を兼ねたこの試合は、本来なら矢野がスタメン入りする、というものだったが、当時の阪神は中日と熾烈な優勝争いを繰り広げており、負けが絶対に許されない状況であった。そのため、当時の正捕手であった城島健司をスタメンに置き、9回表2死時点で阪神がリードしている場合のみ矢野と交代し、最後のアウトを取るという作戦が組まれていた。
試合は3-1で阪神がリードして順調に最終回を迎え、クローザーの藤川が登板。普段の登場曲(LINDBERGの『every little thing every precious thing』)ではなく矢野のテーマ曲(FUNKY MONKEY BABYSの『ヒーロー』)と共にマウンドへ上がり、球場は解説席含め大いに盛り上がっていた。9回開始時点で矢野は出場していなかった為、前述の通り「2アウトから登場だろう」という事はおおよそ理解されていた様である。
だが藤川は制球に苦しみ、連続四球で無死1・2塁。雲行きが怪しくなると、この日ソロ本塁打を放ち唯一の打点を挙げている4番の村田修一を迎える。
藤川の投じた4球目、高めに浮いたストレートを完璧に弾き返され逆転3ランを被弾した。
このときに放たれた言葉こそ、これである。
その後...
2018年12月16日、『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)の「プロ野球 現役引退お疲れ様SP」で村田が杉内俊哉・山口鉄也・後藤武敏らと出演した際に「引退試合でもホームランを打って場の空気を変にしてしまう神」と題して佐々岡真司の引退試合と共に本試合が紹介された。しかものサンテレビの実況付きである。ちなみに、村田本人も当該打席は三振するつもりだったらしく、打球を見守りながら「行くな」と嘆願していた模様。
藤川は2020年シーズンをもって引退を発表。
10月31日に横浜スタジアムで行われた対DeNA最終戦では大差のリードという事もありこの年で阪神を退団する能見篤史に続く形で9回裏2アウトから登板。DeNAは藤川の元チームメイトかつ上記の試合にも出場した大和を代打に送る粋な采配を見せる。本打席で大和は藤川の渾身の147km/hストレートを完璧に捉えレフトスタンド端へホームランを放った。しかし、既に消化試合であり大量リードしていることもあってか、レフトスタンドの端に陣取っていた阪神ファンは絶望するどころか喜んでいた。
試合後は敵地ながら藤川の引退セレモニーが行われた。
11月10日には阪神甲子園球場で引退試合となる対巨人戦が行われ、4点ビハインドながら9回表の頭から登板し、三者凡退で有終の美を飾った。
試合終了後には当時監督を務めていた矢野とのバッテリーで終球式が行われ、10年越しに約束が達成された。