常設された店舗を構えることなく、街なかを移動しながら商売をしたり、町から町へ、または国から国へと移動しながらその行く先々で商売をしたりする商業形態。
このタイプの商業に携わる人を行商人と呼ぶ。
いわゆるファンタジー職業の一形態とみなされるが、現代でもよく見かける移動販売は、この行商が現代的な姿にアレンジされたものと言えよう。
行商と他業種との違い
行商と定期市の違い
行商はそれを専門とする商人(行商人)が日常的に営む仕事である。いっぽう定期市は、商業を生業としない農民や職人などが中心となって何日かごとに町の広場などで開くことが多い。両者は異なる概念であることに注意しよう。
もっとも、定期市に合わせて行商人がやって来てその市場で行商をすることは、ごく一般的に行われてきたし、定期市によってはほぼ行商人や街の商人のみで成り立っている場合もあった。
行商と隊商の違い
行商は移動しながら商品を販売することであり、客が来て品物を求められればその場で販売することが可能である。行商の行動範囲は特に定まっていず、徒歩で自宅の近所を売り歩く事例から、馬車や船などで遠い外国に赴く例までさまざまである。また、一般に1人から10人程度の少人数のグループで営まれることが多い。
いっほう隊商は多数の商品の長距離運搬を主目的にしたものであり、都市から都市への移動や、国と国との間の移動を伴うことが多い。また商品は目的地となる都市や国まで運搬するものであり、途中の道すがらで商売を行うことはほとんどない。
その成員も多数の商人やそれを護衛する兵士など多人数に及ぶ。また品物が多いため、馬車や駄獣などの乗り物を利用して運搬するのが一般的である。