説明
商人のうちでも、ひとところに固定された店舗を設けることなく、一つの町の中をあちこち移動したり、町から町へ、もしくは国から国へと旅をしながら商品を売買するタイプの商人を指す。
一般には単独か少人数のグループで行動する人々を指す。大人数だと隊商と呼ばれることが多い。
中世や近世においては、商品や金銭を運ぶのみならず、あちこちのニュースや噂話、各地の物語や歌といった大衆文化を広める役割も担っていた。
行商はファンタジー職業のひとつと認識されるが、現代社会でみられる移動販売も行商のひとつの形態と言えよう。
商品の運び方について
商品の種類や移動距離、商人の自宅が売る場所の近辺にあるかどうかなどにもよるが、行商のスタイルはその商品を運ぶ手段でいくつかに分類できる。
- 腕に抱える、天秤棒で運ぶ
行商人が街の中や近郊に住んでいて、自宅などで作った商品を近所で売り歩くもの。おもに日帰りから数日で行き帰りできる比較的短距離の範囲内で行商するタイプに多い。いちどに運べる数量はあまり多くない。売るものは食品など長持ちしないものが多い。
- 背負子(しょいこ)で運ぶ、荷車で運ぶ
運ぶ商品が重たいか、数日~数週間の移動を要する場合に多い。前者は野菜・果物や、壷など陶磁器などが典型例。後者は布や薬など日持ちのする商品のことが多い(いわゆる「富山の薬売り」と呼ばれる者たち)。
- 馬・牛などを利用して運ぶ、船で運ぶ
数週間~数か月の長期の行商で利用されることが多い。このタイプの行商人は、ほぼ常に旅をしている状態なので、自宅となる家を持っていない場合がある。
- 自動車で運ぶ
現代の行商においては、軽トラックを利用した移動販売スタイルを取る例も多い。
関連タグ
コロブチカ:行商人と村娘の一夜の逢瀬を歌ったロシアの歌
鮮魚列車:かつては日本でも行商人の移動専用に仕立てられた列車が少なからず運行されていたものの、2022年現在では近畿日本鉄道が専用車両を1両運用するのみとなっている。