概要
生の魚は匂いがするため一般客と同じ列車に乗ると迷惑となる背景から、専用車両による行商人専用列車が設定された。
かつて日本では国鉄・私鉄を問わず多くの行商人専用列車あるいは行商人専用車両が運行されていたが、トラックなどによる輸送への切り替えにより時代の流れと共に消えていった。京成電鉄では野菜の行商人専用列車を1982年2月まで運行、それ以降は定期列車連結の行商人専用車両(1両を指定)に切り替えたがそれも2013年3月に廃止された。
近畿日本鉄道の「鮮魚列車」は行商人専用列車としては最後の存在で、平日・土曜の朝に宇治山田発大阪上本町行きが、夕方に大阪上本町発松阪行きが1本ずつ運行されてきたが、やはりこちらもトラックなどによる輸送への切り替えで需要が減少したため、2020年3月をもって運行を終了。それ以降は定期列車連結の行商人専用車両(1両を指定)に切り替えられた。
鮮魚列車廃止時の専用車両
使用車種がまた曲者で、初代ビスタカー10000系の床下機器を再利用し、3両編成2本しか製造されなかった2680系の2684編成である。2680系は1971年に近鉄の一般型電車初の新製冷房車として登場したが、2682編成は部品取りの為に廃車となり2684編成のみが鮮魚列車専用車両として在籍していた。検査時は2610系が代走し、その際は匂い対策としてシートにカバーをしていた。
晩年は他の車両と同様に通過表示灯・尾灯をLEDに交換していたが、機器流用元の10000系が1958年デビューの車両であることから、老朽化が懸念されていた。
鮮魚列車廃止時のダイヤ改正で代わりに運行を開始した行商人専用車両には2410系の2423編成・2423号車が専用車として選ばれ、ラッピング車両「伊勢志摩お魚図鑑」として一般客との誤乗防止を図っている。
余談
前述の通り2020年をもって鮮魚列車は幕を下ろしたものの、2020年代のコロナ禍(→COVID-19)や物流の2024年問題(→自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題・特に長距離輸送トラックの制限)が起きたため、この鮮魚列車のような鉄道による鮮魚・農産物輸送が再注目されるようになった。
JRが2021年度より東北新幹線や北陸新幹線、山陽新幹線・九州新幹線といった新幹線列車の空席車やビュッフェスペースを利用して農産物ひいてはこの鮮魚列車と同様に魚介類を首都圏・大阪都市圏への輸送が行われるようになった。また私鉄でも同時期に西武鉄道が同じく農産物を自社特急で輸送する試みがなされている。