概要
前時代において歩兵の中で主力である重装歩兵に対し、装備が軽い者を指す。
ただし現代においては、全ての歩兵が軽装歩兵と呼ぶことができる。
フィクション
一般的な認識としては軽装ということで機動力に優れており、反面防御力などの耐久面に難があることが多い。また大型武器などではなく比較的に携帯可能な小型武器を装備しているためにこの名称が使われることもある。
ファンタジー創作などでは主に、その面が強調して描かれている節がある。俗にビキニアーマーと呼ばれるものが顕著な例の一つである。
歴史
古代ギリシアや中東、ローマ帝国などの欧州では、主力は重装歩兵であり、騎兵と軽装歩兵は補助役になっていた。
軽装歩兵の役割は、重装歩兵部隊同士の連携を助け、隊列の隙間を守ることと敵の騎兵を牽制すること、偵察などである。役目に就いたのは、重装歩兵の装備を用意できない者やローマ帝国の場合、正規軍ではない同盟市などの市民が構成する補助軍であった。
銃や大砲が主力となった前近代に登場した軽装歩兵は、ドラグーン(竜騎兵)と呼ばれ、馬で戦場を素早く移動し、下馬して銃などを扱い敵の牽制や偵察役をこなした。
やがてナポレオン戦争の時代に入ると欧州では、猟兵(イェーガー)と呼ばれる軽装歩兵が登場するようになった。これらは、イギリスなどの裕福な国で狙撃の訓練を受けた者が他の兵士より精度の高い銃を持って兵士として単独行動を取るようになったものである。
当時の主力である戦列歩兵は、銃の命中精度の低さを補うため、ギチギチに密集し、お互いに真正面から撃ち合うという酷く洗練されていない戦法を取った。このために歩兵連隊は、どんどん大きくなり、移動から展開するまでの時間も長くなり、素早く戦闘態勢を整えることさえ困難になっていった。
そんな戦場で軽装歩兵は、単独で行動して狙撃によって偵察や牽制を任された。
こうして軽装歩兵は、エリート部隊と見做されるようになり、他の歩兵より精度の高い銃や長い訓練期間を与えられるようになった。また猟兵部隊は、今でもエリート部隊の名前として残っている。
しかし19世紀からイギリス、アメリカなどの大国の工業力の発達は目覚ましく、わざわざ精度の高い銃と低い銃を別ける必要もないため均一化された銃が大量生産できるようになった。
これにより戦列歩兵も消滅し、全ての歩兵が軽装歩兵になった。またこのような経緯からソ連などでは、歩兵の部隊を狙撃兵師団などと呼ぶ。