概要
訳あって名義変更できない状態に陥っている中古車の通称。
「金融流れ」「金融もの」とも言う。
一般的には、前オーナーが借金をする際に担保とされ、その返済が出来なかったために担保権が実行されて金融機関に取り上げられた自動車を指す。
借金の担保という都合上、市場に出てくるのは高級車や輸入車のような資産価値が高い車種が多い。
後述のように、一般の中古車とはかなり異なる性質を持つため、通常の中古車販売店で取り扱うことはまず無い。
実態
利点
- 車体価格が安い。市場相場の6割程度の値段で買えることが多い。
欠点
- 名義変更が出来ない。理由は、登録上の所有者が前オーナー(ローンが完済していない場合はローン会社もしくはディーラー)となっており、強制的に取り上げられた経緯から、名義変更に必要な書類が得られないためである。購入時に書類が付いてくると謳っている車両もあるが、それは金融機関が独自に作ったものであり、所有者が作ったものではないため法的には全く無効である。つまり、金融車が本当の意味で購入者のものになることは永遠に無い。
- 任意保険に加入できない。理由は同上。
- 車庫証明が取得できない。理由は同上。普通自動車の場合、車庫証明を取得しないと違法になる。
- 廃車・売却・登録抹消が出来ない。理由は同上。中には金融車であることを隠してインターネットオークションや個人売買で他人に売りつけて処分する者もいる。
- 整備工場やディーラーに入庫できない。金融車は事故物件のような存在なので、購入者共々付き合いを敬遠される。例え隠したとしても、車検証を照会すれば金融車であることはすぐに見破られる。
- 前オーナーより返還を要求される場合がある。登録上の所有者は前オーナーなので、返還を要求されると断る権利は無い。また、前オーナーが登録抹消を行う可能性もあり、知らぬ間に無車検になっている場合がある。当然ながら無車検での公道走行は違法である。
- 車検が受けられない。金融車となっても、車検の際に必須な自動車税の納税通知は前オーナーに送付されるが、これが納税される可能性はほぼ無い。よって車検に必要な書類が揃わず、車検満了日を過ぎた時点で無車検となる。
金融車は言わば「他人の車に勝手に乗っている」状態なため、上記のような様々な制約を強いられる。
車体価格の安さを理由に一定の需要があることから、専用の中古車屋がインターネットでは見受けられる。
しかしその性質上、販売する金融機関もしくは中古車屋にヤクザや反社会的勢力が絡んでいる可能性があり、一般人は手を出さないのが無難である。
また、所有者が他人という点はある種の人間にとっては逆に利点となるため、購入者も要注意人物である事が考えられる。
余談
名義変更に関しては、前オーナーから必要書類を提出してもらえれば厳密には可能である。
しかし、担保実行されたということは前オーナーは借金を踏み倒した曰く付きの人間ということを意味し、このような人間が車検証に記載されている住所に今でも住んでいる可能性は限りなく低く、足取りが掴めない状態となっているのが基本。
つまり、書類をもらおうにも会う事すら出来ないのである。
また、ローンが残っている場合は第三者であるにもかかわらず肩代わりして完済する必要がある上、滞納による利息を含めると正規の販路で購入するより遥かに高価になってしまうのは明白で、やはり現実的ではない。
残念ながら流通している金融車の殆どはローンが残った状態のため、事実上名義変更の手段は絶たれているのである。