音無響(月が導く異世界道中)
おとなしひびき
CV:加隈亜衣
『月が導く異世界道中』の登場人物。作中世界では「ヒビキ・オトナシ」の名を名乗っている。
本来、勇者として選ばれたはずであった主人公・深澄真の代理勇者の一人として女神によって召喚され、リミア王国の勇者として活躍する事になる。
元の世界では真が通う高校の3年生で、剣道部に所属する少女。18歳。その為、真とは顔見知りであり、彼に関する噂についてもある程度は知っていた。
容姿端麗の美少女で、基本的に真面目で聡明な性格。非常に裕福な家庭に生まれ、学力においても全国レベルで上位を維持し続け、剣道においても全国区レベルの実力を備えており、文武両道に秀でた優等生で満場一致で生徒会長に推薦され就任している。
しかし、元々大した努力をしなくても優秀になれる天才肌であったが故に、その胸中には達成感の無い退屈さを燻らせていた。女神にもその事を見抜かれており、家族や友人達との関係も良好であった反面、共に苦難を乗り越えたり、心の内を明かす事や共感が出来ない事実を指摘されてしまっている。また、巴からも「本人の才覚と若さもあって努力すればこの世界では何でもできる、できないのは当人の努力不足と考えるなど視野が狭い。努力ではどうしようもない環境や才能のない者に対して無理解」と評されている。
そのカリスマと善性でヒトを率いる能力に長けており、勇者の立場があるとはいえ貴族制のリミアでの意識改革や他国からの強い助力を借り受けるなど、世人に出来ないことをやってのける傑物。
しかし、巴からはそのカリスマを危険視されており、「多くの者達を惹きつける天性の魅力が、彼女の為に命を捨てる事も厭わない狂信者達を王国内に生み出す」と評されている。事実、仲間の一人であったナバールが、自身を守る為に魔王軍幹部への自爆によって戦死した一件も、その事が当てはまってしまっている。
また、勇者として戦う以上、仲間に犠牲が出てしまう可能性を考慮した覚悟が足りず、ナバールの死を機に、ナバールを死に追いやった魔族であるイオを殺すまで戦争を止めないという私怨に囚われた決意をしてしまっており、本人もその事を少なからず自覚している。
リミア王国のホープレイズ家出身の青年であるイルムガンド=ホープレイズとも関わりを持っており、「大貴族では珍しく領民の事をきちんと考える事が出来ていた」と高く評価していたのだが、後に彼はロッツガルドの学園祭にて自滅に近い形で最期を迎え、死別。「魔族側に加担して身を滅ぼした」という風潮も流された事も重なり、大きなショックを受けている。
その後、ロッツガルドにて「ライドウ」の名を名乗っていた真と再会。同じ学校の先輩後輩であった関係性から、当初こそ昔話をするなり会話が弾んでいたのだが、逆にそれ故に、元の世界にいた時とは明らかに違う形で別人レベルの強大な力と精神性を持ってしまっている事に早くから気付いている。
後にリミア王国に迎えた際も、真の中に眠っている異様な「何か」を心眼の能力で見てしまったチヤが悲鳴を挙げて気絶した一件に加え、「瀑布」の二つ名をもつ上位竜のリュカから「このまま彼の力が成長すれば世界が一致団結しても全く勝ち目がない」とまで警告されて愕然。試しに手合わせをした事で、以前よりも強くなったはずの自身でも全く太刀打ち出来ない事を痛感する事になる。
化け物染みた力以上に真に関して問題視しているのはその「精神性」にある。
召喚されたばかりの時に人間扱いされなかったとはいえ、ヒューマン全体に対してあまりにも偏った差別意識を持ってしまっている上に、彼の営むクズノハ商会がヒューマンと魔族の戦争を悪化させる可能性どころか、女神を滅ぼす事で加護を失う事になるヒューマンがどの様な顛末を迎えるかについてもまるで他人事の様にしか考えていない姿勢に対し強い不安と危機感を抱いており、真のヒューマンに対する視線が亜人や魔族を差別するヒューマン達の視線と全く同じであると、痛烈に批判してもいる。
更にはヒューマンに迫害されている「亜人」への過度なまでの感情移入に加え、ヒューマンに戦争を仕掛けている「魔族」まで「一方的な被害者」扱いするだけでなく、魔族がヒューマンに仕掛けている虐殺も同然の戦争を「弱者側(魔族)の強者側(ヒューマン)に対する革命」として無意識的に美化までしている姿勢には「重症」と評して頭を抱えている。
しかし、全人類の総力を挙げても真を止めるのは不可能という事実から、一定の距離を取りつつも真の機嫌を損ねないようやっていくしかないと判断している。