鳴潮の用語集
めいちょうのようごしゅう
库洛游戏(KURO GAME)の前作にあたる『パニシング:グレイレイヴン』同様に、本作『鳴潮(Wuthering Waves)』もポストアポカリプスを舞台として、迫り来る未知の脅威に対抗する人類の姿を描く意欲作である。
しかし、人類文明を襲う厄災の設定をはじめとして、国家や集団、技術体系など、奥深く作り込まれた世界観──と言えば聞こえは良いが、特に説明のない専門用語が立て続けに出てくる物語は少々取っつきにくい面もあり、「話についていけない」「没入感が削がれる」という評価も少なくない。
さらに漢字文化圏の宿命「単語の読み方がわからない」という問題も加わり、特に日本版では表記・発話されるルビについても、日本式の音訓読みのせいで原語の発音・ニュアンスからかけ離れてしまったりと、ローカライズ上の難点も見られる(サブクエストを跨いで特定のNPCの名前に複数のルビが混在しているようなケースもある)。
当記事では主要な用語を列挙するとともに、理解の一助となるよう、一部については英訳された語句も併記していく。
ソラリス / Solaris-3
物語の舞台となる、太陽系第三惑星。正式名称「Sol-3 ソラリス」。万物が周波数によって成り立つ世界。発達した科学力を持ち、惑星各地に存在する歳主とも調和した文明を築いていたが、100年前に発生した「悲鳴」と、それがもたらした厄災により、惑星規模の文明崩壊の危機に陥った。以後は悲鳴に対処しつつも各地で国家を維持している。
瑝瓏 / Huanglong
主人公・漂泊者が記憶を失ったまま目を覚ました場所に位置する国家。広大な大陸に中心都市の「庭」と六つの「州」で構成されている。モデルは中国。
- 今州
州の一地方。北方から侵攻してくる残像潮に対抗する最前線として設置された、瑝瓏で最も新しい行政区画で、関内に位置する一庭五州に対し、唯一関所の外側(関外)に存在する州。今州だけでも百年(あるいは数百年)単位の歴史を持ち、瑝瓏の前線拠点として重責を担っている。
中心地は城郭都市・今州城。政治中枢は「辺庭」と呼ばれ、今州の歳主・角の共鳴者が最高執政官にあたる令尹(れいいん)の座に就く。
軍事教練を受けた共鳴者による戦闘部隊・夜帰も駐屯しており、忌炎将軍の指揮下で残像潮との果てしない攻防を繰り広げている。
また、最前線という環境から瑝瓏華胥研究院の今州分院も高い独立性を持ち、しばしば目覚ましい研究成果を上げている様子。
反響 / Remnant
純粋かつ完全な周波数エナジーの形態の一種。反響として記録された情報は、時空間関係に影響されず、安定した形で存在できる。
悲鳴や海蝕現象とは異なる成り立ちをもつ「反響生物(Remnant Creature)」も存在しており、その周波数帯は“純粋無垢”とも形容される。
音場 / Sonoro Sphere
ソノラ。反響エナジーの蓄積によって形成された超自然空間で、素材収集が可能な各地の「凝素領域」も音場の一種。人為的な場面再現も可能で、仮想訓練にも使用されている。中に入った者に由来する周波数などが空間そのものに影響を及ぼし、予期せぬ要素が出現・再生されるケースもある。
無音区 / Tacet Field
残像が発生した地域。天空海や地面に深く刻まれた十字の音痕と共に発生する。白い音弦が未知の空間に繋がっており、残像を呼び寄せるという。形成から間もない内は潜伏期を維持するため、その場を離れる猶予がある程度には安全。特に短時間で形成された無音区は、長い潜伏期を経て強力な残像を出現させる傾向にある。
コンテンツ的には、無音区ごとに特定の属性を持つ音骸の収集・厳選を助けるもので、複数のウェーブに分かれて出現する残像との連続戦闘となる。
- 天空海 / Etheric Sea
- 空を覆う逆さまの海。無音区形成の予兆として現れ、デバイスの通信障害を引き起こす。
- 溯洄雨 / Retroact Rain
- そかい-あめ。天空海から降った雨が、再び上空に向けて降り注ぐ現象。溯洄雨を構成する高密度の反響エナジーが一帯の「過去」を記録する性質を持ち、かつてその場に滞在した人々の一時の姿が幽霊のように再生される。その地域とのかかわりが深い者ほど幻覚を詳細に認識する傾向があり、溯洄雨に濡れた者が持つ周波数との共鳴によって当人の関係者の姿が現れやすくなる。含有する反響エナジーそのものが残像を引き寄せるため、速やかな退避が必要。
- 重力喪失
- 無音区の近辺で見られる、巨大な質量までも浮遊させる現象。帰来の港などに顕著。フィールド上に点在する上昇気流のようなエフェクトも「重力乱流」と呼ばれる一種の異常。
残像 / Tacet Discord(TD)
一連の情報周波数で構成される擬似生命体。情報に欠落があるため、本来であれば時間と共に衰退し自壊するが、存在を維持するために他の周波数を吸収・融合するという本能を持ち、残像潮(Tacet Discord Outbreak)と呼ばれる侵攻を繰り返す人類の宿敵。
形態は動物型や人型、非生物型、機械に取り付いた怪物まで様々。周波数の含有量が多いほど強い残像が出現し、弱い順に「水風級」「巨浪級」「怒涛級」「津波級」に分類され、規格外の残像は特に「鳴式」と呼ばれている。巨浪級の残響エナジーだけでも小規模な海蝕現象を発生させかねないという。
また、唸り種、叫び種、しじま種、轟き種、騒ぎ種など、音核の形状による分類も存在する。
一般的には無秩序に発生するため、都市や集落の近辺では夜帰の兵士が巡回しつつ排除している。また、一部の個体は何らかの逸話や因縁に基づいて再生するらしく、こうした特異な出自の残像は津波級である場合もしばしば。
- 水風級 / Common Class
- 小~中型の雑魚残像。大抵は数体でたむろしているため、位置取りを誤ると集中砲火を受ける。
- 巨浪級 / Elite Class
- 手強い大型。複数の攻撃手段や連続攻撃を組み合わせてくる。水風級を連れていると非常に厄介。
- 怒涛級 / Overlord Class
- 出現地域が限定されている強力な個体。“突破素材”を持っているので育成スタイルによっては週に何度も顔を合わせる事になる。
- 津波級 / Calamity Class
- 現時点では撃破対象として最上位。独自の音場を持つ者もいる。
- 鳴式 / Threnodian
音骸 / Echo
デバイスによって再現される残像の姿や能力。共鳴者の武器の一つとして使役(音骸の召喚や共鳴者の変身)する事ができるようになる。
複数の音骸を揃えると、相性や組み合わせ次第では楽器のような音色(ハーモニー効果)を発することもあり、ゲームシステム的には共鳴者ごとに所持できる5つの枠と音骸の属性の組み合わせで、ステータスを向上させるセット効果を得ることができる。
デバイスのレベルによって吸収可能な音骸(残像)のクラスには上限があり、多くの共鳴者は水風級から集めていく事になる様子。
関連するサブクエストでは音骸を収集する者を「トレーナー」と表現するなど、あからさまに某ビッグタイトルのオマージュに走っている。
- 残響 / Reverberation
- 残像が斃れる際に稀に残留する周波数のエネルギー体。金色に輝くシルエットをデバイスに吸収・登録すると、その共鳴者に従う音骸となる。新規の残響を登録する事でデバイスのデータドックが成長し、捕獲率や上位ランクの残響の出現率が上がっていく。
共鳴者 / Resonator
後悲鳴人類史において発生するようになった特異能力者。身体に「音痕」と呼ばれる痣が現れ、それぞれに固有の共鳴能力が発現する。先天性と後天性があり、覚醒の経緯は千差万別。また、決して人間の身にのみ起こる変化ではない。
非共鳴者とのわかりやすい差異としては、身体能力の飛躍的な向上や、黒石武器への適合などが見られ、壁走りのような芸当も共鳴者の十八番として知られる。
- オーバークロック
- 音痕 / Tacet Mark
- 海蝕現象にまつわる波形のような刻印。無音区の地表には地割れのような巨大な音痕が刻まれている。
- 覚醒した共鳴者の体表にも黒っぽい痣のような形で現れ、強力な共鳴能力を発動させる際には発光する──という演出上、キャラクターデザイン的には衣装の隙間から露出している。長さは人それぞれで、数cm~数十㎝ほど。
歳主 / Sentinel
遥か昔よりソラリスに存在する高位思考体。人類でいう「國」の大陸を守護し、100年前の厄災にて、当時悲鳴に対して無力だった人類に代わって残像と戦っていた。ソラリス各地に存在し、特に長い歴史を持つ瑝瓏では最多の7人が“一庭六州”のそれぞれを司っている。また、秧秧の解説中には「指引機枢」という別名がしれっとルビ扱いで表記されている。
瑝瓏の歳主は龍の姿をしたものが多いらしく、今州の歳主「角」の姿も今州城の北西に位置する雲陵谷に巨大な彫像として再現されている。
夜帰 / Midnight Rangers
よき。青と黒の制服に身を包んだ、瑝瓏の軍事組織。共鳴者の出現以降は対残像戦闘に特化するため、共鳴者からなる部隊編成を主軸としており、作戦による損害も減少傾向にある様子。人工知能を搭載した機動兵器も運用しており、瑝瓏の科学の粋が結集されている。
- 破陣(はじん)… 先鋒営。残像潮に対して斬り込む精鋭部隊。
- 伏波(ふくは)… 防衛軍。石崩れの高地の南方に拠点を持つ。
- 踏白(とうはく)… 斥候・一時配属のボランティアや予備役の軍人。
治安署
モスグリーンの制服がトレードマークの巡尉(Patroller)たちが所属する警察機構。残像との戦闘を主任務とする夜帰に対して、公的な施設の警備や、追放者の組織犯罪などに対処する。非共鳴者の比率が多いのか、かれらの携行火器には黒石武器のような特徴は見られない。
華胥研究院 / Huaxu Academy
瑝瓏の科学技術の発展を担う公的な研究機関。デバイスと信号塔に関する技術体系にも深く携わっている。今州城の分院は最前線という土地柄もあって高い独立性を持ち、多くの成果を上げている。
日本版では「かそ」の読みが当てられているが、由来となっている「華胥(かしょ)」は古代中国のとある君主が夢で見たという理想郷の名前。
先駆条約 / Pioneer Association
ソラリス各地で多分野にわたる調査活動を行なっている国際機構。フィールドワークを活かした書籍や「潮汐ジオグラフィック」に代表される定期刊行物の発行、グッズ制作、最近ではゲーム制作にも手を出している。
黒石武器「探索者」シリーズの愛用者が多い事からもわかるように、残像との交戦を前提としているれっきとした武闘派集団であり、好奇心や功名心に駆られて無鉄砲な調査活動に赴く向こう見ずを説得しようと苦労している先輩の姿も見られる。
稷廷 / Court of Savantae
しょくてい。機巧術を極めた科学研究機関。一般には理解不能な数々の実験と、狂気を孕んだ前のめりな研究姿勢が仇となったのか、功罪相半ばする目覚ましい成果を残しながらも、ある時期を境に関係者が姿を消した事で事実上の組織消滅に近い状態となっている。各地に残された関連施設・設備は“謎解き”を伴う強固なセキュリティによってブラックボックスと化している。
ブブ物流
「届けるまでが配送」をモットーに営業している瑝瓏の大手物流企業。ネオユニオンをはじめとする他国への配送も請け負っており、残像が多く出没する今州では輸送網が安定しないため、配達員による人力輸送も珍しくない。過去には夜帰軍の作戦行動に協力した案件もあり、少なからず犠牲を払っている。
原語では「鳴鳴物流」だが、洒落優先で訳されているようで、英訳では「Lollo Logistics」となっている。
黒海岸 / Black Shores
ブラックショア。救世を使命として各地で“賢人”を見出している秘密結社めいた組織。世界中に設置した信号塔を「目」として悲鳴に関するデータを収集・分析している研究機関で、悲鳴の規律を測定し予想するシステム「テティス」を構築し、被害の最小化のために各国と協力関係を結んでいる。
構成員については厳しい選定基準と高い秘匿性を持ち、それぞれに任務を請け負った「花持ち」が市井に紛れて活動している。
残星組織 / Fractsidus
フラクトシデス。すべての人間が等しく共鳴の力を授かるべきという思想を掲げるクレイジーな国際的テロ組織。人体改造によって残像と融合し、人為的に共鳴能力を得た「アーティファイサー」と呼ばれる末端人員が今州にも出没している。
能力の源となる残像の周波数は徐々に心身を蝕んでいくため、醜く変貌していく顔を隠すために仮面を身に着け、一様に赤い装束を纏っている。信者の暴走(オーバークロック)も織り込み済みで、巨浪級に相当する力を持つ“処刑者”たちが後始末を請け負っている。
- 監察
- 組織の幹部。アーティファイサーに対して人間らしい容貌を保持しているが、残像への変身を伴う高い戦闘能力を持ち、その脅威度は津波級にも匹敵する。
瓢箪(盤古デバイス / Pangu Terminal)
協会から支給される共鳴者の登録証で、瓢箪のような形をした20㎝前後の多機能型デバイス。英訳でも「gourd=瓢箪」の通称で呼ばれる。通信・通話機能はもちろん、各地の通信塔に登録する事により周辺の地形や位置情報を表示できる他、共鳴現象を察知するとアラームで警告してくれる(交戦状態に入ると赤色に発光する)。
パラシュートモジュールから翼を展開する事で、高所からでも安全に滑空・降下できる。共鳴者にとっては無くてはならない命綱的なデバイスであり、熾霞いわく「瑝瓏の技術は世界一」。とは言え、天空海が発生すると遠隔通信が途絶してしまうなど、万能とはいかない。
所有者の国籍によってバリエーションがあり、それぞれに国章がプリントされている。漂白者は目覚めた時点で所持していたものを使っており、無国籍扱いになっている。
黒石武器 / Tacetite Weapons
海蝕現象の産物である物質「黒石」が完全に「反響エナジー」を内包できる性質を利用した、共鳴者向けの強力な武器。コアとして明るいオレンジ色の鉱石が嵌め込まれており、残像に有効なダメージを与えられる。集音(ガチャ)によって迎えた共鳴者は初期装備として最低ランクの「稽古用」武器を携えているため、必要に応じて上位武器も強化していく事になる。
強化素材にあたる「エネルギーコア」には黒石から精製された液体エネルギーが入っており、武器のメンテナンスの一環としてコアモジュールへのエネルギーの充填が行なわれるらしい。
現状は個人の携行武器を量産するレベルに留まっており、戦略的な威力を持つものは研究の途上にある様子。