MD-90
えむでぃーきゅうじゅう
1960年代から生産され続けたベストセラー機DC-9シリーズの最終型。1995年から就航した。
全長はシリーズ中最も長くなった他、エンジンに低燃費・低騒音のV2500を採用し、コックピットの電子化を行うなど大幅に近代化されている。サウディアに納入された最終型では本格的なグラスコックピット化も行われた。
また、リアエンジン方式のおかげで、騒音レベルはライバル機より低かった(胴体や尾部、主翼が音を遮るため)。
名機DC-9の堅実さを受け継いだ機体ではあったものの、先進技術をふんだんに投入したエアバスA320や更なる改良を進めたボーイング737NGに比べると、胴体の細さ(客席が狭い)や大型化する余地の少なさ(胴体前後の重量バランス調整が難しくエンジンの大型化にも対応できないリアエンジン方式がここにきて仇となり、これ以上胴体を伸ばせない所まで伸ばしてしまった)で既に発展の限界に達しており古臭さは否めず、販売は低迷。中国でもライセンス生産が行われたものの、たった2機しか生産されなかった。
またマクドネル・ダグラス(MD)社はMD-11の販売にも失敗した結果経営が悪化し、ボーイング社に吸収合併された。
ボーイング機と競合する上にバックオーダーも少なかったMD機は早々に生産中止が決まり、MD-90も僅か116機で生産を終了した。
2010年代に入ると各航空会社から引退し始め、残存機は各地から中古機を買い漁ったデルタ航空に集約されたものの、それも新型コロナの影響により2020年に運航を終了。最後のMD機は空から姿を消したのだった。
なお、MD-90の短胴版として開発されたMD-95は、737よりも短距離向けであった事からボーイング717として生産される事になる。
日本エアシステムが導入。
黒澤明によってデザインされた7種類のレインボーカラーが話題を呼び、航空ファンからは黒澤作品にちなんで「七人の侍」と呼ばれ親しまれた。最終的には16機が導入された事で同じカラーの機体が複数揃うと、やはり黒澤作品にちなんで「影武者」とも呼ばれた。なお、黒澤明はこの塗装をデザインした後ほどなくして亡くなったため、ある種の遺作といえる塗装でもあった。
日本航空に吸収されてからも2013年まで運航され続けた(もちろん塗装は日本航空のものに変えられたが)。
引退直前の2011年には、東日本大震災による支援物資の輸送に活躍。MD-90は格納式のエアステアを備えていた上、貨物室までの高さも低かったため、電力不足で地上設備が満足に使えない状態でも運航が容易だったからである。
引退後、全ての機体が上述の通りデルタ航空で余生を送った。