概要
軟式野球とは、ソフトボールと同様に硬式野球から派生した日本発祥の野球競技。
プロ野球や高校野球などは硬式ボール(硬式球・硬球)を用いるが、軟式野球では柔らかく軽いゴム製の軟式ボール(軟式球・軟球)を使用する。
広義では準硬式ボールを用いる準硬式野球も軟式野球に含まれる。
単に野球と言われる場合には大抵は硬式野球を指すため、軟式球を用いる野球部は「軟式野球部」と区別されている。
大学野球でも、硬式野球・準硬式野球・軟式野球はそれぞれに分かれている。
軟式ボールについて
硬式球はコルクの芯に羊糸をきつく巻き付け、牛革でカバーしたものに糸を縫い付けて作られているが、軟式球は中空で一体成型されたゴム製のボールである。
そのためボールにはプラモデルよろしくパーティングラインがある他、実際に縫われてはいないが硬式球と同等に扱えるよう、縫い目を模した凸部がある。
また軽いボールでも空気中を直進するよう、縫い目以外の表面にはゴルフボールのディンプルのような円いくぼみが入っていたが、2005年のモデルチェンジを機に変更された。
近年は硬式球との差を小さくするべく改革されつつある。
詳細は野球ボールを参照。
競技
基本的には硬式野球と同様に「公認野球規則」に則って行われる。
スポーツとしては同じ野球だが、用具や必要とするパワーの違いから別種の競技として扱われている。
硬式野球との違い
軟式球は中身が空洞なのでボールの硬さや重量が硬式球とは差があり、それに応じて投げる感覚、打つ感覚、バウンドした時のボールの跳ね方なども大きく異なる。
軟式球はインパクト時にボールが変形しやすいため、打球を飛ばすにはボールを潰さずバットで運ぶように打つ必要がある。打球は硬式球の方が速く、ヒットにつながりやすいかも異なっている。
また軟式球はよく跳ねるため、野手はバウンドを合わせるのが難しい。
硬式球は軟式球に比べ、わずかな指先の感覚でボールが変化しやすく、変化球のキレも良くなる。
ただし硬式球は硬度・重量が軟式球に比べて上回るため、衝突した時の威力や衝撃がケタ違いに大きい。
そのため硬式の用具で軟式球を扱っても問題が無い場合が多いが、逆は非常に危険であり、硬式球を軟式の用具で扱った場合、用具の破壊や選手のケガの原因になり得る。
特に軟式用バットで硬式球を打つのは、バットの耐久性を考えても避けるのが無難。
なお捕手や審判の硬式用マスクは頑丈だが、潰れない硬式球に合わせて網の目の間隔が広くなっているため、大きく潰れやすい軟式球を使用するとマスクの網の目をすり抜けて飛び込む可能性がある。
例外的ではあるが上記のように、硬式用具で軟式球を扱う際にも危険が生じることがある。
また、硬軟の用具を同時に扱うと、投球感覚などのズレから肩や肘のケガを引き起こす原因になるとも言われている。
もちろん、公式戦では硬軟異なる用具を使うこと自体がNGである。
場合によっては球場も硬式不可の軟式専用となることがある。
使用するボールに合わせ、バット・グローブ・プロテクターなどの用具も硬式とは材質や特徴が異なっている。
軟式用グラブは硬式より軽く操作性に優れており、バットはジュラルミン製の金属のものやカーボンなどの複合素材のものが主流。
軟式野球の普及
野球が日本に伝わったのは明治時代だが、軟式野球は大正時代中期に、新たに軟式ボールが開発されたことから生まれた。
前述の通り、軟式球は衝突時のボールの威力が硬式球よりも弱いため、比較的安全とされており、それが功を奏してより幅広い年齢層に普及し、野球の大衆化に貢献することになった。
用具も軽量で安価なため、日本の学童野球や少年野球、アマチュア野球、草野球では、どちらかといえば軟式野球が多数派を占めている。
一方で軟式球そのものが日本独自の規格であるため、海外では軟式野球は殆ど普及していない。
元々アメリカで誕生したのは硬式野球であり、その影響で海外の野球は基本的に硬式で行われ、少年野球でも硬式球が使用されている。
海外の一般向けのライトな競技としてはソフトボールの方がより普及しているものの、アジア圏では国際的な軟式野球大会が開催されている。