概要
古今東西、クジラは竜宮や天/神の使い、または、海の王や主、海神であるとされてきた。「鯨の祟り」や「鯨を殺したことによる天罰や神の怒り」という伝承は、日本の捕鯨業が盛んだったほぼすべての地域に伝わる説話である。
普遍的なパターンとしては、鯨組の頭領の夢枕に鯨が化けた女子が立ち、「出産やお参り、仕事(竜宮や天の使い等)で沿岸を通過するので捕らないで欲しい、用事が済んだら捕られよう。」という嘆願を、翌日に無視して捕鯨を行い、「村に奇病などの禍が降りかかる」「お家断絶」「鯨を殺した直後に海が大荒れになり、乗っていた捕鯨者たちが海に消える」「捕鯨者の子供が死亡」「数多くの妖怪が呪いによって現れるようになった」などの事件が発生、村が壊滅する場合もあれば仏教者などが村人を諫めて鯨の供養をする、というものである。
珍しい場合だと、「捕殺後に陸に戻った捕鯨業者が目にしたのは、自分の子に銛が撃ち込まれていた光景だった」、「捕鯨者たちが海に沈む直前に見たものは、雲の間から現れた巨大な笑う女の顔だった」という話もある。
余談
- 「鯨を殺したことで祟りや天罰が起こる」という話は世界中に見られる。
- 捕鯨をタブーとする話は八戸の「南部/日の出のオナイジ」または「鮫浦太郎」が有名だが、「えびす信仰」と共に、実は日本でも鯨の殺生などをタブーとしていた地域の方が多かったという指摘もある。実際に、捕鯨は磯の破壊や伝染病の誘発、魚などの減少にも繋がるというデータも存在している(参照)。
- 捕鯨に反対する地域住民と、捕鯨業者との間の暴動も発生してきた(「鮫浦事業所暴動事件」が最も有名)。
- 伊豆諸島や東京湾・浮島では、クジラが「お富士参り」をするといい、「絶命する瞬間の鯨は富士山を仰ぎ見る」という(おそらく絶命寸前の鯨の描写に由来)。そして伊豆諸島では、お富士参りの途中の捕鯨に激怒した鯨が人間を食べるという話がある。