概要
大元は新約聖書のマタイ伝における「偽預言者を警戒しなさい。彼らは羊の皮を身にまとってあなたがたのところに来るが、 その内側は貪欲な狼である。」という一節である。
これが「羊の皮を被った狼(a Wolf in sheep's clothing)」という慣用句となり、「偽善者、善良そうな見た目を装った危険人物」を意味を表す概念として世界的に広まっていった。
日本ではピンクレディーの代表曲『S・O・S』が「男は狼なのよ 気をつけなさい 年頃になったなら つつしみなさい」という歌い出しで始まった事から、特に男性・性行為に限定した言説として理解されている。
実際に聞けば分かりやすいが、『S・O・S』はひたすら女性に貞淑でいる事を説き、守らなければ男性から襲われる羽目になるという内容を朗らかに歌い上げる楽曲である。
それを女性アイドルユニットが歌い、男女問わない支持が集まり、昭和を代表する名曲として複数回のリメイクまでなされた結果、今に至る普遍の価値観となったのである。
要するに男性という生き物は本能と煩悩にまみれた「獣」であるが、獣故にそれを咎めても仕方がないという事である。
それは人権概念が確立しつつあった1970年代において、性犯罪を度外視させる決定打となり、以来長らく「貞操観念」とは「人間」たる女性が一手に背負うものとされる事にもなった。
実際、昭和期には性犯罪を「犬に噛まれたとでも思って忘れなさい」の一言で済ませる事は珍しくなかった。不平等に思われるかもしれないが、それが当時多くの女性自身が支持した結論なのである。
今日こうしたページを見ていても、「紳士」の頭には「変態という名のが付き、「草食系男子」の多くは単なる「餓えた狼」でしかない現実を目の当たりにしている事だろう。
当時よりいくぶん進歩したとは言え、我々の社会における性は、未だ自力救済が求められる弱肉強食の世界なのであり、生き抜くためには「人間」としての知恵を絞るか、自分自身が肉食系女子になるしかないのである。
とは言え、いくら思考回路が獣だからと言って、法律上は男性も立派な人間なのであり、獣である事を前提に扱ったり事前に先制攻撃を加えたりしては立派な犯罪になる。
何より、狼が本当に恐ろしいのは集団戦が得意な点である。男性においても、一人を倒して終わるとは限らない。逃げるが勝ちという思考は常に選択肢に入れておくべきだろう。
もっとも、男性の側もそろそろ人間に進化し始めても良いようなものだが・・・