M4カービン/M4A1カービンとは
開発経緯
米国の特殊部隊統合軍SOCOMが、XM177の後継としてコルト社に開発依頼したM16A2のカービンモデル(コルトでの製品名はモデル777(3点バースト)とモデル779(フルオート))。
それまでのM16系カービンと異なり、キャリングハンドルを着脱式としてアッパーレシーバー上部にMIL-STD-1913 Picatinny rail(ピカティニーレイル)を設け、M203を固定するためのステップド(段付き)バレルを採用するなど、細かい部分で修正が加わっている。
また、特徴の一つである14.5インチのバレル長は、XM177以来のM16系カービン(とくにM727)のノウハウから得られたもので、火力と軽便さを両立する最適なバレル長となっている。
なお、初期のものはフルオート射撃の出来ないM4はハンドガード内部の銃身が細くなっていたが、コストの削減によりM4A1と同じ銃身に変更されている。
運用状況
その性能やレイルシステムによる発展性の高さからアメリカのみならずイスラエル国防軍や日本国自衛隊の特殊作戦群、イギリス陸軍のSASなどにも配備されている。近年ではカスタムパーツや汎用性の高さから幅広い顧客のニーズに応えられるとしてPMSCsの社員も装備している姿が多く見られる。
アメリカ軍では市街戦に投入されることが多くなった陸軍の需要と合ったことも有り、「すべての海兵はライフルマン(Every Marine is a rifleman)」という海兵隊を除いて最前線の部隊ではM4カービンが主力となっている。
(一方で市街戦を経験した部隊からはより軽量小型なライフルを求める声が上がっており、下士官のみが使用していたM4A1カービンを2016年9月末までに全ての部隊で置換することを計画している)
M16は支援用や後方部隊で使われる程度となった。
未熟な兵士は無駄弾を撃ち、大量に弾薬を消費してしまうという戦訓から基本的には一般の兵士はM4(3点バーストモデル)、特殊部隊隊員はM4A1(フルオートモデル)という使い分けがされていたが、近年では一般兵士であっても制圧射撃を行うためにSAW以外のフルオート可能な火器を必要としており、アメリカ陸軍では2019年までに50万挺のM4をM4A1へとコンバートすることを予定している。
(もっとも破損などにより交換の必要がある場合、M4ではなくM4A1が支給されるようになったため、現在でも相当な数がM4A1へと入れ替えられている)
SOPMOD(Special Operations Peculiar MODification/特殊作戦用装備)プロジェクトにより様々な機能向上・アクセサリの開発が行われている。
2011年にはM4の銃身長及びライフリングツイストに適合した弾薬であるM855A1を採用、マズルフラッシュと弾頭初速が抑えられ、合せガラスに対する貫通力、遠距離での命中精度、至近距離で対人射撃した際のフラグメント率、等が向上している。
2014年2月には陸軍のM4は左右どちらからでも操作可能なアンビセレクターへの変更のための契約が行われ、2018年4月までにすべてがアンビ化される事になる。
また、陸軍のM4A1への転換のフェーズ2としてM4A1-Plus計画では民間市場にあふれるAR-15用カスタムパーツを用いて安価に改修キットを作り上げる事も計画され、市場調査が行われている。
もっともどのようなパーツを使ってよいわけではなく、選定されたパーツのみが使用され、その条件も素のM4A1に無改造で装着可能、現行のSOPMODアクセサリー並みの信頼性があることといった条件を満たしたものに限られている。要求を満たすものがない事から2016年6月にM4A1-Plus計画は中止となっている。
性能
口径 | 5.56mm |
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使用弾薬 | 5.56mmNATO弾 |
装弾数 | 20/30+1 |
全長 | 850mm |
重量 | 3,480g |
有効射程 | 約500m |
※wikipediaより概値
使用弾薬は二次大戦以降急速に普及した小口径/高初速を実現した5.56mmNATO弾であり威力は7.62mmNATO弾に劣るものの小さな反動は制御が楽で射手への負担は小さい。
しかし、紛争地帯では新NATO弾の5.56mmよりも旧NATO弾の7.62mmやAKの7.62mm弾のほうが手に入りやすく、マリファナやら脳内麻薬やらでラリった兵士にも効果があると言われ、ベトナム戦争でのM16のトラブルや大口径信仰もあって特殊部隊員は7.62mmが使いたいが為に7.62×39mm弾のAKを用いる事もある。
作動方式にはM16と同じくダイレクトインピンジメント式というガス圧を機関部内に導いて直接利用する方式を採用しており、これにより部品点数の削減と軽量化を実現している。
標準搭載は昔ながらのサーマルジャケットを備えた樹脂製ハンドガードだが、今ではスタンダードになったピカティニーレイルの付いたハンドガードが複数社から販売されていることもありカスタムが容易で、個人レベルで扱いやすいスタイルで運用できる。
ちなみにレール付ハンドガードの官給品は初期のものはナイツ社製だが、現在はP&S社製の同型のものが供給されており、時期によってはナイツとP&Sの部品を混ぜて組み上げられたものもある。
加えて様々な会社からオプションやカスタム品が出回っており軍人だけでなく警備会社の面々、民間人にも人気なのである。
カスタム/他社製品
近年ではM4の人気に嫉妬した、もとい、注目した多くの大手銃器開発企業がM4のカスタムを発表しており、開発元のコルトのライバルとも言えるS&Wやナイツアーマメント、スターム・ルガー、ドイツの最大手H&K、ベルギーのFNH社、アメリカのSIG SAUER社などが参加し、それ以外にも様々な有名無名の企業が工場での大規模生産から果ては個人のガレージでも製品を作っているのである。
一部の会社ではガスブロックやガスチューブ、ボルト等の一部の部品を交換する事でダイレクトインピンジメント式からガスピストン式に変更するパーツを販売している。
また、既存のM4のガスチューブを交換するだけでガスピストン化できるキットも存在している。
アメリカでは登録の関係でロアレシーバーのみが銃として登録されることもあり、特に制限されずにアッパーを複数持つことができ、更に人気とカスタム市場が確立されており、少数製造でも採算が取れることから完全に趣味といえる迷銃が数多く製造されているのも特徴。
SAWのようにベルトリンクアモを使用可能にしたり.50 Beowulfなどの大口径弾薬や.410ボアショットに対応したアッパーキットというのはまだまともなほうで、マズルローダー化、ダブルバレルシングルショット化、12.7mmシングルショット化、コンパウンドボウ化、ポンプアクション化、空砲専用の缶ランチャー化など様々なアッパーキットが販売されている。
一方でロアレシーバーの方もマルチキャリバーライフルの登場に対抗するため、複数の銃を登録せずに済むようにマグウェル(マガジンが収まる部分)周辺を交換可能とする、大型のマグウェル内に使用弾薬にあわせてスペーサーによるマグウェル内側のサイズを変える等、様々な機構で多種多様な弾薬に対応できる製品が登場している。
マズル部のネジは1/2-28正ネジを使用しているが、ただでさえ種類の多いAR15用マズルデバイスに加えてAK47のM14P1.0逆ネジ、AK74のM24P1.5正ネジ等に変換するアダプタのように様々な変換アダプタがあり、更には違う規格のネジが切られたバレルもあるし、好きな規格のネジを切ることもできるので多種多様なマズルデバイスの取り付けが可能。
アメリカ海軍特殊部隊であるSEALsではRECCEライフルを独自に開発、後にNSWC海軍特殊戦センターも参加して偵察狙撃ライフルとして完成した。
M4の性能向上を目的としたSOPMODプログラムの一環として生まれた陸軍と海軍のSPRライフルがM16の銃身を短縮する形で狙撃銃としたのに対し、RECCEライフルはM4の銃身を延長する形で狙撃銃としている。
どちらもSPRと同時に開発されたMk262弾に最適化された銃身を持っており、中距離の狙撃から近接戦闘まで使える銃となっている。
アメリカ軍へと納入されるM4は主にカナダのカナダコルト社(旧ディマコ社)が製造しているが、アメリカ陸軍は2012年にレミントン・ディフェンスと、2013年にFNH USAとM4の製造を契約した。(予備部品は継続してコルトから購入しているが、全面的に変更する予定)
最近特に有名なのは驚きのフィンガーテクニック(性的な意味を含まない)をお持ちであるクリス・コスタが絶賛するMagpulのカスタムパーツやライフルでニコニコ動画といった動画サイトや各情報誌で注目されている。
このように多種多様のM4カービンが生まれたのは前述のように市場が確立していることに加え、パテント切れ後にアメリカ軍の次期アサルトライフルのトライアルがあったのがクローンを製造する会社が増えた原因と思われる。
おそらく欧米(特に銃器大国アメリカでは)でのM4の市場はかのAK47より圧倒的な差を見せ付けており、アメリカではライターから言わせると「国民銃」と化しているとの評価を下す人もいる
世界一腕の立つ殺し屋の愛銃はこの銃ではなく、上記のXM177である。
特徴としてはハンドガードが細く、フラッシュハイダーが長い。
また、リアサイト下部に肉抜きがあることから、M16A1系のレシーバーであることがわかる。