ここでは史実での長門型戦艦について解説する記事である。
概要
No | 艦名 | 工廠 | 起工 | 進水 | 竣工 | 沈没 |
一番艦 | 長門 | 呉 | 1917/08/28 | 1919/11/09 | 1920/11/25 | 1946/07/29(標的艦として) |
二番艦 | 陸奥 | 横須賀 | 1918/06/01 | 1920/05/31 | 1921/10/24 | 1943/06/08(謎の爆沈) |
金剛型で得たイギリスの建造技術を、扶桑型や伊勢型を経て独自のものへと昇華し、八八艦隊計画により初の純国産の超弩級戦艦として建造された。
建造された当時は「世界最大・最強・最高速」の戦艦であった。ワシントン海軍軍縮条約で長門型と同等の16インチ砲(41cm砲)搭載戦艦の建造が規制されたこともあり、アメリカ海軍のコロラド級戦艦(3隻/1921年)、イギリス海軍のネルソン級戦艦(2隻/1927年)と共に「世界のビッグセブン」と讃えられた。
砲火力ではネルソン級の16インチ×9門に後れを取ったものの、速力では3.5ノット速い26.5ノットを記録している。
このスペックは機密であり対外的には23ノットとされていたが、関東大震災の際に長門が救援物資を載せて東京へと最大速度で急行した際、それを偶然発見して追跡したイギリス軍に発覚してしまったというエピソードがあるほか、レイテ沖海戦においても長門より速力で2ノット以上勝る戦艦大和に並走していた。ただし、陸奥が第二次ソロモン海戦に参加した際は金剛型戦艦を含む高速艦艇群の足手まといとなり、護衛をつけて後方へ残された。
タービン主機の基本設計や歯車減速装置がアメリカ製であるものの、日本独自の設計が多いのに大きな問題を起こさず、日本の軍艦建造技術が世界レベルに到達していたことの証明とされた。伊勢型の反省から主砲塔を減らし、居住区を広く取ったため乗員からも歓迎され、居住性は大和型戦艦に次ぐものであった。
昭和9年から行われた近代化改装により、ネルソン級や各国の35,000トン級新型戦艦(アメリカのノースカロライナ級戦艦、イギリスのキング・ジョージ5世級戦艦、フランスのリシュリュー級戦艦、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦、ドイツのビスマルク級戦艦)にも対抗できる性能を額面上保ち続け、「最強の旧世代戦艦」とされた。
連合艦隊旗艦を何度も務めた長門型は日本海軍の象徴であり、当時のカルタに「陸奥と長門は日本の誇り」という札がある程で、子供達も「大好きな戦艦は何か」と聞かれれば長門と即答し、写生するときの題材にも必ず挙がった。
本艦級の設計は平賀譲によるが、特徴的な屈曲煙突はライバル藤本喜久雄のアイデアである。平賀が無断借用したことで二人の確執を生んだ。
余談
長門は戦後、クロスロード作戦(原爆実験)の標的艦として最期を迎えたのに対し、陸奥は柱島で停泊中に謎の爆発で轟沈という最期を遂げている。
しかしこの陸奥の資材は戦後思わぬところで貢献することとなる。
第二次大戦後の製鉄では破損の検出目的で鉄に放射性物質「コバルト60」を混入させる。戦前に作られ、海中にあったため核実験の影響を受けなかった「陸奥鉄」は微量放射線を測る測定器に利用されていた(今は測定時に補正をかける技術があるので、陸奥鉄でなくてもよい)。
どちらも放射能に縁のある艦といえる。
長門型に次ぐ八八艦隊主力艦として、本型を大幅に拡大改良した加賀型戦艦(一番艦「加賀」、二番艦「土佐」)と、天城型巡洋戦艦(一番艦「天城」、二番艦「赤城」、三番艦「愛宕」、四番艦「高雄」)も起工されたが、ワシントン条約の戦艦保有数制限により建造中止、天城型のうち天城、赤城は空母に改装とされた。
加賀は空母に改装中の「天城」が関東大震災のため修理不能なまで損壊したことから代艦とされ、航空母艦として竣工した。土佐は九一式徹甲弾などの開発のための標的として使用された後、海没処分された。
関連タグ
サイボーグ009:TVアニメ第1期16話にて、息子を太平洋戦争で亡くした超能力者が太平洋の海底から蘇らせ、アメリカに復讐しようとした。反戦の色が強かった『009』内でも最も異色なエピソードとなっている。