ドロヘドロ
どろへどろ
基本情報
『ドロヘドロ』は林田球による日本の漫画作品。
『月刊IKKI』(小学館)にて1999年より連載開始、次いで2015年に『ヒバナ』に移籍し、2017年12月号から『ゲッサン』にて2018年10月号まで連載。全23巻+1(キャラ図鑑)。
著者にとっては2作目の長編連載となった。
最終巻と同時に「ドロヘドロ オールスター名鑑完全版」というキャラ図鑑も発売されたが、コミックス未収録漫画の再録だけでなく、最終巻の巻末おまけ漫画の後の話も収録されているため、全23巻揃えている読者はオールスター名鑑も買っておくことを強くオススメする。
概要
魔法によって頭を爬虫類に変えられた記憶喪失の男が、自分の本当の顔と記憶を取り戻す姿を描いたダーク・ファンタジー作品。
著者は、この作品は「歌詞がメチャクチャダークで凶暴なのにメロディーは踊りたくなるくらい楽しい曲」からインスピレーションを受けて生まれたと語っており、退廃的で殺伐とした世界観と、グロテスクでハードコアな作風に、剽軽なキャラクターとブラックな笑いをちりばめることで独特のユーモアさを醸し出している。
登場するキャラクターのほとんどが、スリップノットのようなホラーテイストの覆面マスクを被っていることや、ファッション・物のデザイン・小ネタ等にヘヴィメタル(特にデスメタルや現代メタル)・ハードコア・パンク(含グラインドコア)等の暴力的な音楽の強い影響が見られるのも特徴である。
あらすじ
「魔法使いの世界」から来た魔法使いによって、頭を爬虫類に変えられ、記憶を失った男、カイマン。そしてその友人、ニカイドウ。カイマンの口の中には謎の男が存在している。カイマンは自分の頭を元に戻すために、そして記憶を取り戻すためにニカイドウと共に「ホール」にやって来る魔法使いを狩っていく。彼は何者なのか、なぜ記憶がないのか、口の中の男は誰なのか。それはまだ……混沌の中。それが……ドロヘドロ!
登場人物
ホール
人間が住む世界。魔法使いの「練習」により、魔法被害者となる人間が後を絶たない。
主人公。ギョーザが大好きなナイフの達人。頭がカイマントカゲに似ていることから、ニカイドウからカイマンと名付けられた。自分の本当の顔と失われた記憶を取り戻すべく、魔法使いたちと戦いを繰り広げている。
カイマンの友人で、事実上のもう一人の主人公。定食屋「空腹虫(ハングリーバグ)」を営むナイスバディな女性。カイマンと出会ってから常に行動を共にしており、彼のことを「ただ一人の大切な友人」と形容する。
魔法で子供の姿に変えられてしまった研究者。研究が第一のマッドサイエンティスト。
魔法使いの世界
魔法使いの世界を牛耳る、さながらマフィアのような巨大組織。活動内容は暗殺からラーメン屋までと幅広い。
煙ファミリーの首領。「何でもキノコにする魔法」使い。魔法使いとしての能力が高いのみならず、権力も絶大。敵対する者には情け容赦ない冷酷さを有するが、配下の者には面倒見が良い。
掃除屋。「何でもバラバラにする魔法」使い。素顔は好青年。能井のパートナー。常識的なところもあるが、獰猛な戦闘狂。
掃除屋。「何でも治す(直す)魔法」使い。心のパートナー。素顔は銀髪長身の美女。心以上に好戦的なところがある。実は、煙の従妹。
下っ端。「ケムリを弾丸のように飛ばす魔法」使い。小物だが、仲間思い。
一応ファミリーの一員。「トカゲ怪人に変身する魔法」使い。カイマンに囓られゾンビになった影響で脳に損傷を受け正気を失っている。
ファミリーの一員。「魔法を解く魔法」使い。煙に強烈な愛をぶつける青年。
ファミリーの一員。「生命ある人形を造る魔法」使い。
ファミリーの一員。「何でも透明にする魔法」使い。魔法のせいで影が薄い。
魔法使いとして生まれたにもかかわらず、魔法が使えない人物で構成された組織。メンバーの全員がボスの壊を真似て目に十字目の刺青を入れているのが特徴。魔法が使えない代わりに、ナイフなど刃物の扱いに長けている。煙ファミリーと敵対している。
十字目のボス。彼のみ十字目が刺青ではない。煙を終始劣勢に追い込む程の実力者。
十字目幹部。毒性をもつ唾液とナイフを武器とする。
十字目幹部。隻眼の刀使い。
十字目幹部。投げナイフの達人。
十字目幹部。匕首が武器。
十字目幹部。怪力が自慢。
元十字目。釘状の武器を使用する。
新入り。フックを武器とする糸目の女の子。
悪魔
魔法使いの上位種とも言える存在。強大な力を有し、何でもできて何でも知っているという。しかし、性格は皆気まぐれでイタズラ好き。生まれつき悪魔である者もいるが、魔法使いから悪魔になる者もいる。魔法使いにとって、悪魔になることや悪魔と親交を持つことは大きなステータスとなる。
アス(川尻)
ニカイドウと古い縁のある悪魔。元は「川尻」という名の魔法使いであった。
チダルマ
純粋にして最強の悪魔であり、事実上のリーダー格。ただし、他の悪魔同様、気まぐれでイタズラばかりしている。
ハル
カスカベ博士の妻で元魔法使い。博士のことは本名である「ヘイズ」と呼ぶ。
その他の用語
魔法
この世界における「魔法」は、一般的なそれとは異なったものである。
魔法使いには、体内に魔法の「ケムリ」を精製する器官とそれを運搬する管とがあり、多くの場合は指先、あるいは口から「ケムリ」を噴射して魔法を行使する。
指によってケムリ放出量が異なる。その詳しい比率は不明だが、ケムリを多く出さない場合は人差し指から出すことが多い。
行使に特別な手順や道具が必要な魔法もあるが、原則的に何処かで必ずケムリを用いている。
人間の身体は魔法による急激な変化に耐えられず、治療をしてもほとんどの者は突然死ぬ。
「魔法」の作用や一度に発射できる量や勢いは先天的なもので、役に立たない魔法だったり、発射できる量が少ない、または全く出せない者も多く存在する。彼らは社会的地位が低く、いい扱いはされない。ただし、噴出量を上げる手術や後述の「黒い粉」によるドーピングは可能。
魔法の作用は、魔法をかけた本人が解くか、本人が死ぬか、鳥太のような「解除」の魔法によって消える。
「修復」「生命」「時間」を扱う魔法使いは特に希少で、煙をはじめ、多くの人間がその力を求めている。
あるパーティにおいて天井付近に集まっていた大量の蝿は、「生命」の魔法を扱う存在が来る場所だったため下に降りられないと説明されている。
魔法のケムリはスプレー缶やビンに詰めることで携帯したり、便利な魔法であれば売買に用いたりできる。
また、「呪い(カース)」の魔法も存在するらしいが、魔法使いにとっても詳細は不明なようだ。ちなみに呪いが成功する確率は666分の1であるらしい。
悪魔の歌によって呪いを払うことができる。
極めて稀ながら、重複して魔法をかけられると、それ以上魔法が効かない体になるという。
黒い粉
十字目の組織によって売買されている物質。
服用すると、瞬時にケムリを普段の能力を超えて出すことが一時的に可能となる。魔法使いでありながら、ケムリを出せる量が少ない者達が主に使用している。
藤田は服用した際「身体の中で火山が噴火したような」感覚を覚えた。
魔法を連続して使用するには常用しなければならず、粉自体にも依存性や狂暴化する副作用がある。
幼年期から摂取し続けると、魔法の性質が変化することがあるが、大して良い例は無い。一例として「動物に変化させる魔法」は、相手をその動物の性質を持った怪人に変え、さらに副作用によって暴走させた。この魔法にかかって制御が利くのは、この魔法を持つ魔法使い本人のみである。
粉の使用は魔法使いの誇りに反するとされており、煙ファミリー内での使用は御法度。
パートナー
魔法使いの世界には二人一組のパートナーを決める風習があり、日常も自らのパートナーと共に行動することが多い。
口約束や互いの共通意識だけで成り立つものではなく、後述のブルーナイトで(時には強制的に)契約を交わすれっきとした制度でもある。
ホウキ
魔法使いの世界に普及しているバイクのような乗り物。魔法使いのケムリを燃料として作動する。一応箒としての機能も備わっている。
ゾンビ
ホールに溜まった魔法使いのケムリによる影響で、年に一度だけ墓から甦る魔法被害者。
生きた人間を襲い、襲われた人間もまたゾンビとなる、など主な特徴はステレオタイプなゾンビと同じである。
存在していられるのは夜の間だけであり、朝日と共に死滅してしまう。ちなみに直接的な攻撃だけでなく、毒によって仕留めることも可能である。
リビングデッドデイ
ホールにてゾンビが甦る日。毎年同じ日にゾンビが発生するため、ホールの人間は対策としてこの日にゾンビ狩りを行っている。ゾンビ狩りは駆除者と坊主によって
合同で行われ、駆除者がゾンビを仕留めた後に坊主が塩をかけることで完全に成仏させる。
当日は墓地に売店が立ち並び、狩ったゾンビの数に応じて駆除者には景品が与えられるなど、イベント色の強い一面もある。
ブルーナイト
魔法使いの世界で4年に一度行われるパートナーとの契約を結ぶ儀式。期間は3日間。煙ファミリーが主催してオープニングパーティーを開いている。
会場にはいろいろなアトラクションがありお祭りのような雰囲気だが、パートナーとの契約にはどんな手段を使ってもかまわないため死人も出る。
ちなみに煙のパートナーになろうとした魔法使いは皆キノコにされた。
上級魔法使いは会場の上空にある黒い家で悪魔の立ち会いの下、契約を結ぶ。契約はお互いの体内にある契約書にサインをして交換することで結ばれ、
この契約書には相手を支配する力もあり、合意の上でない契約を結ぶこともできる。