妖しいアンティーク
あやしいあんてぃーく
妖しいアンティーク1 MIRROR
美を求めてエステに通っていた独身OLの日比野鏡子(28)はある夜、「変奇堂」という骨董店を発見し、綺麗なアンティーク物の銀色の鏡を見つけるも、突如背後に現れた喪黒に驚き、振り返って会話をしていると鏡を棚から落として割ってしまった。
店長のオヤジが現れてイギリスのビクトリア王朝時代の代物だと言われて弁償しようとしたのだが20万円ぐらいとあまりにも高価だった為、代わりに鏡子を驚かした喪黒が弁償してあげる事になった。
BAR魔の巣で喪黒は男性を紹介すると言うが、鏡子は1人の方が落ち着くといい、アンティークを見る事が唯一の幸せだと言い、男性の紹介を断った。
そんな彼女に喪黒は、「ご自分を卑下なさってはいけない」と言って鏡をプレゼントするのであった。
早速自宅マンションの部屋に鏡を飾って見ると、鏡の効果で鏡子は地味な女性から一転して容姿端麗な女性と変わり、会社の仲間からも驚かれる。
イメージチェンジが出来たと喜ぶ鏡子に、喪黒はあの鏡には呪いがあるから返すようにと忠告される。変奇堂のオヤジから喪黒が聞いた話によると、あの鏡の最初の持ち主は中世ヨーロッパのさる伯爵夫人で、鏡を眺めながら「もっと美しくなりたい」とブツブツと呟いていたらある日、悪魔が現れて「永遠に若く美しくいたければ、毎年クリスマスの夜に若い娘を生贄に捧げてその血で鏡を洗わなければなりません」と唆されて、毎年クリスマスの夜に領内の若い娘を悪魔に生け贄を捧げる名目で虐殺し、やがてその事件は領民達の手で明るみとなって伯爵夫人は魔女狩りで火炙りの刑に処され、それ以来あの鏡には持ち主を不幸にする呪いが掛けられたと言い伝えられているのであったが、鏡子はどんどん容姿端麗になっていき、遂には男性にも注目されるようになった為、鏡を返すのが嫌になり、喪黒に偽物を渡すが、後日、偽物と見破った喪黒に「ドーン!!!!」されてしまった。
帰宅した鏡子は、鏡を絶対に返さないと決意するのであったが、クマのぬいぐるみにつまづいて誤って鏡を落としてしまい、鏡にヒビが入るのと同時に顔にも傷がつき、鏡が完全に割れたと同時に鏡子の顔は、粉々に砕かれてしまうのだった。
「自惚れ鏡というように、鏡は決して真の姿を写し取ることはありません。なぜなら人は自分の好きな角度でしか鏡を見ようとしないからです。彼女の場合も、自分の本当の姿を見失ったのが故の悲劇じゃないでしょうか。…主よ、罪深き彼女にどうか憐みを、そしてもう一人の淋しい男の話もお聞き下さい。アーメン…。」
妖しいアンティーク2 DOLL
独身サラリーマンの姫野宅二(32)は生身の女性には興味が無い人形オタク。自宅マンションでも自分が今まで集めてきた古今東西の人形達を人間の家族の一員の様に思い暮らしていた。
そんなある年のクリスマスまであと数日の夜、姫野が人形達とクリスマスの晩餐を楽しもうとすると、クリスマスのご馳走を買っていた際に遭遇した喪黒が勝手に部屋に入ってきた。喪黒が部屋に入ってきたのは、姫野が落としたペーパーナイフを届ける為であったが、喪黒が姫野の人形コレクションを目の当たりにし、喪黒は姫野に素敵なガールフレンドを紹介するといううまい話を持ち掛けようとするが、姫野は身勝手な人間の女性より自分を裏切らない人形の女性といる方が心が安まると言って喪黒のうまい話をきっぱりと断った。
翌日、会社の帰りに喪黒に遭遇した姫野は「変奇堂」という骨董店に連れて行かれ、相当の値打ちもののビスクドールを見つけ、ピンク色の洋服を着た金髪で青い目のビスクドールを気に入るも、変奇堂のオヤジからクリスマスセール中とは聞いたが、高価であるためとても買えそうになかった。
諦めかけた姫野に、喪黒はさっきの人形を彼にプレゼントする。
大喜びした姫野はミシュリーヌと名付け、他の人形と共に可愛がるようになる。
そんな彼に喪黒は、『人形を裏切ってはいけない』と忠告する。
彼が働いている会社の課長の部の忘年会の誘いをミシュリーヌとクリスマスを過ごしたいと約束したことから一度は断るが、コミュニケーション拒否の多さと自分の都合が多すぎると課長が腹を立て、仕方がなく付き合う事になってしまう。
だが、自分に優しい女性社員も飲みに付き合う事になった為、心を開くようにもなっていく。
その日の夜、姫野は課長のはしご酒から帰ろうとするが、女性社員は姫野に好意を寄せていた上に独占欲も強く、誘いを断ると言うことは誰かか待っていると疑う程。
そしてクリスマスイブの晩、姫野は女性社員と過ごし、挙句の果てにラブホテルに泊まってしまった。
突然、雷と共にミシュリーヌの不気味な影が見えた事からミシュリーヌを思い出し、急いで家に帰るが、そこに喪黒がいた。
「姫野さん、約束を破りましたね。ミシュリーヌは裏切ったら本物の女性より怖いですよ。せいぜい覚悟する事です!」と言って喪黒は姫野に「ドーン!!!!」するのであった。
姫野が部屋に戻ったが、おかしな事に電気がつかず、困っていると、女性社員からのプレゼントのアクセサリーを落としてしまう。暗闇の中からミシュリーヌの小さな手が伸びて来てそれを拾い上げる。
姫野の視線の先には、左手にアクセサリーを、右手にペーパーナイフを持ったミシュリーヌを筆頭に彼に裏切られて怒りのあまりに不気味に目を光らせた人形達の姿であった。
ミシュリーヌ達は、ゾンビ映画のゾンビの群れみたいに姫野に襲い掛かってきた。姫野は逃げ出そうとするが、部屋に鍵がかかっていたため逃げられなかった。
姫野は必死に「ミシュリーヌ。許して!許してくれ!」と弁解するが、憎しみに飲み込まれたミシュリーヌにその声は届くことは無く、姫野はそのままミシュリーヌ達に八つ裂きにされてしまった。
「彼も欲に駆られて、人形と人間を両天秤に掲げなければよかったのに…。人形にも心があるという事に彼は気がつかなかったのでしょうか…。」
クリスマスの町の様子を映し、ビルのクリスマスツリーを模ったライトアップが喪黒の似顔絵を模ったライトアップになるサプライズの後、サンタクロースの恰好をした喪黒が現れ、「今宵全ての人々のココロのスキマが埋まりますように。メリークリスマ~ス‼オーホッホッホ…」と喪黒が言いながら雪が降る夜の街を歩いているところで物語は幕を下ろす。
余談
- 今回のお客様である日比野役は日高のり子、姫野役は鈴木清信で、ちなみにこのお話と笑ゥせぇるすまん春の特大号第1話「大変愛」に登場する変奇堂のオヤジ(同じ藤子不二雄Ⓐ原作の『ブラック商会変奇郎』の主人公・変奇郎の祖父・変奇左エ門がモデル)は、喪黒役の大平透がナレーションを務めたスーパー戦隊シリーズやメタルヒーローで数多くの悪役の声の人であった渡部猛である。
- 「妖しいアンティーク2 DOLL」の原作であるSALE38「ドール」は、BB先輩劇場笑ゥちょうきょうし 「届かぬ想い」の原作にもなっていて、喪黒ポジションは平野源五郎、姫野ポジションはKMRとなっていて、こちらは、「KMRが自宅マンションにやって来た平野からもらった変な形のリンゴによって人形のミシュリーヌが喋れるようになり、原作と同じ忠告を受けるが、ミシュリーヌとクリスマスを過ごす約束をMURと野獣先輩の残念会に半ば無理矢理誘われた上に、酔っ払った挙句に残念会の会場の店の女性店員とラブホテルで一晩過ごしてしまった事で邪険にしてしまい、夢枕にミシュリーヌが現れた事によって自分の過ちに気付いて大急ぎで帰宅したら平野と恐ろしい姿と化したミシュリーヌがいて、KMRが必死に弁解した結果、その声は無事ミシュリーヌに届き、平野は二度とKMRが他の女性に心を奪われないよう「ドーン!!!!」し、一週間後、ズル休みしているのを心配したMURと野獣先輩がKMRの自宅マンションに行くと、そこにはミシュリーヌとKMRそっくりな人形があったが、二人は気付かなかったが、それこそ平野の「ドーン!!!!」によって人形化され、ミシュリーヌとめでたく結ばれたKMRであった」というハッピーエンドとも解釈できる話となっている。