概要
現在わが国の食料自給率はわずか40%!!
自国内で国民の腹を満たすことのできないこの国に未来はあるのか!?いや無い!!
そんな日本の食糧倉庫北海道で人々を飢えから救うべく、日々泥にまみれて働いていたマンガ描きがいた!!
その名は…農民・荒川!!!
北海道は十勝の酪農家の家に生まれた、自身の体験を基にしている。
氷点下の牛舎へパンツ一丁で出かけるワイルドなお父様や、ソ連の略称СССРについて答えてくれるお姉さまなどが、ポテトチップス、鹿、鮭などを産する豊穣のジャガイモ畑と、熊、リス、ハクビシン等猛獣の襲撃に備える厳しい牧場を、いかに経営するかが面白おかしく描かれる。
「百姓」という言葉は場合によっては差別用語扱いされることもあるが、荒川氏は各地で頑張っている「お百姓さん」への尊敬の意味であえてそのままタイトルに使っている。
一方「貴族」という言葉は、下積み時代実家から牛肉を貰えたり(ただし冷蔵庫はカラ)、北海道時代の食卓がほぼ自家消費と物々交換で成り立ってたり、玄関先におすそ分けの鹿が置いてあったりといった、百姓ならではの「おこぼれ」を貰うエピソードでよく使われる。
少年漫画出身の漫画家が本格的に描いたエッセイ漫画という珍しい作品であり、動物や自然の脅威、農業機械などは、作者の代表作でもある『鋼の錬金術師』ばりの「無駄に迫力のある絵柄」で描写されている。
一応「正義の男」こと鼻祖・荒川与作から、祖母、祖父、母など、作者の血縁者は「牛」で描かれ、アシスタントなどは然るべき動物(犬など)で描かれ、兄弟衆の配偶者、ツッコミ担当の編集者は人間で描かれる。ただ、作者の子供は人間の姿をしている。
なお荒川氏は女性である。
作中でそのことがあまり強調されることは無いが、「牛乳を飲めば胸が大きくなる」という俗説に対して「それは…デマです…」と死んだ目で悲しそうに呟く、親父殿入院の際に「娘さん」と呼ばれる、出産時の(酪農家ゆえの、現実を伴った)感想を語るシーンなどがちょこちょこ存在している。
(本人いわく「模様からしてホルスタイン(乳牛=メスだと分かってもらえると思った」とのこと。ホルスタインの雄は、ほとんどがさっさと去勢されたあげく食肉に加工されてしまう)
あとオマケとして、コミックの右ページの下にはパラパラ漫画が毎巻付随している。
もちろんカバー裏もある。
農家の常識は社会の非常識
如何せん作者が農業従事者であったため、作中に描かれていることの中には、農業に詳しくない読者の視点だと「ありえない」「信じられない」ことも多々出てくる。が、作風故か、こういう部分もネタとして成立しているのも事実である。
なおこの「農家の常識は社会の非常識」のセリフは、牛さんから「北海道の畑では鮭が獲れる」という話を聞かされた担当のイシイ氏が発した(意味が分からない人は単行本を買おう)。
農業は危険と隣り合わせである
作中には、
- 車で走行中に、決壊した橋を渡る方法
- 切断寸前になった指を治療する方法
- トラクターで人を轢いた際の対処法
- トラクターの連結部分に巻き込まれそうになった時の回避法
- ロシア軍の検閲から機密データを堂々と持ち帰る方法(※実際には機密データではなく鶴の生体調査の研究データだったが、ロシア軍の勘違いにより機密データ扱いされたもの)
- 農作業や家畜の世話と並行して、投稿漫画を描く方法
- スズメバチの巣の採り方と食べ方
- 保護動物をこっそり採って食べる方法(親父殿曰く「伝え聞いた話」)
- 潰した家畜をこっそり食べる方法(親父殿曰く(ry)
など、「一歩間違うと命に関わりかねない」事態も多数紹介されている。このような事例は、事無きを得たのでネタにされているが、気楽に片付けられない事もあるので、よい子はホントにマネしないでください。
実際にはとても表に出せないネタが多数存在しており、ネタにしている部分は比較的穏当なそれなのだという。没にしたネタで「裏百姓貴族」なんてのを描いたらもう1冊分くらいは描けるとか。
まぁ、こういうネタは大体「伝え聞いた話」との事だが。
なお、コッチもモッチで絶対にマネをしてはならない。理由はわかりますよね?
関連動画
単行本の試し読み動画。
この作品についての説明と、2017年発売の単行本第5巻のCM。前述の「決壊した橋を渡る方法」も紹介されている。
なお、この動画のナレーション及び登場人物の台詞読みを担当しているのは、あの千葉繁氏である。