お召列車/お召し列車とは天皇皇后及び上皇上皇后皇太后が乗車されるために特別に運行される列車である。また天皇が国賓を接待される場合にも運行される。
なお、上記以外の皇族のために運行される列車は、御乗用列車(ごじょうようれっしゃ)と呼ばれる。
乗車のために専用に用意された車両については御料車と称する。
概要
明治時代初期、鉄道が新橋~横浜間を開業した直後には明治天皇が乗車している。これが日本におけるお召し列車の最初とされる。戦前は天皇は神に等しい存在とされたため、今のように気軽に鉄道ファンが写真撮影ができる存在ではなかった。また些細な失敗も許されず、自分のミスから大幅に遅延させた鉄道員が責任を感じて自殺するほどであった。
現在でも、「他の列車と並んで走ってはいけない」「追い越されてはならない」「立体交差で上に他の列車が通行してはならない」という原則があると言われており、また運行前に線路に異常がないかチェックする「露払い列車」を運行する(お召し列車を定期特急の後追いとする事で、先行する定期特急を露払い列車の代わりとする場合も)など、特段の対応が取られる。そして、これに適合するようなダイヤを作る必要があり、万一の事態に備え担当者が乗り込んで随時調整を行う。
戦後は昭和天皇の全国巡幸の他、国民体育大会(国体)や植樹祭、豊かな海づくり大会等への臨席や御用邸での静養に際し多数運転されている。長距離の移動では鉄道利用が普通であった時代には専用機であるEF58形60・61号機が製造された(最初からお召し列車専用機として造られたのは同機のみ)が、新幹線開業以降は飛行機の発達もあり、在来線での長距離運行は激減している。旧国鉄やJR以外の私鉄を利用する場合もあり、特に伊勢、奈良方面に出かける際は東京から新幹線を乗り継いで近鉄を多く利用している。
1989年に昭和天皇が崩御され年号が平成に変わった後、定期ダイヤを乱すことにより国民に負担がかかることを嫌う明仁上皇のご意向や、運行の担当が全国を管轄する国鉄から東日本を管轄するJR東日本に変更されたことから、近年では「お召し列車」としての運行は少なく、定期列車の一部(これに対応してか、近年はJRや近鉄では来賓対応で防弾ガラスが張ってある車両が出てきている)を貸し切ったり、そもそも鉄道ではなく航空機で移動したりしている。
明治時代より多くの車両が作られるが、そのどれもが当時の最新の技術や装飾を施した特別車両であり、その多くが今でも鉄道博物館などで保存されており、当時の技術を伝える貴重な資料にもなっている。
距離や車両のグレードなどは関係なく、つくばエクスプレスを利用した際は同社の通勤用車両に乗車しており、また鉄道博物館に訪れた際に埼玉新都市交通伊奈線の大宮~大成間の一駅を乗車しているが、これらもれっきとしたお召し列車に当たる。逆に定期列車の車両を貸し切ったりして乗車した場合は、たとえグリ-ン車に乗車していても、お召し列車とは呼ばない。
関連タグ
EF58 61号機(国鉄→JR東日本)がお召し列車専用機として新製された(60号機は国鉄時代に廃車、解体済)。既に現役引退したが、車籍は残っている。
DD51 842号機(国鉄→JR東日本)が同社非電化区間においてのお召し列車用指定機となっている。
157系 (国鉄)「日光型電車」と呼ばれる準特急電車。急行型電車153系の運転台を設けた「クロ157」がお召し専用車両。なお、20年以上皇族が乗車しての運転はないものの、現在でも車籍は残っている。牽引車は当初の157系から183系→185系と変遷し、制御回路はそれに合わせた変更を受けている。
サロンカーなにわ 国鉄→JR西日本が運用するジョイフルトレイン。同社在来線区間においては実質的なお召し列車指定車両となっている。電化区間では281系の登板例が多い。
E655系 JR東日本が2007年にお召し列車を含む臨時列車用に新製したハイグレード車両(厳密にはジョイフルトレインであり、特別車両「E655-1」のみがお召し専用)。
御召列車 (表記揺れ)