概要
昭和初期から中期にかけて製造されたお召し列車用の客車「1号編成」の老朽化による置き換えとして製造された。
「天皇専用列車を作るのは経済的ではない」という明仁天皇(当時。現・上皇)の意向により、団体列車兼用として開発され、「和(なごみ)」という愛称もつけられている。
団体列車として運行する際は特別車を編成から外して運行する。
なお、特別車E655-1については天皇、皇后が利用する場合でも公務・国賓応対の場合のみであり、御用邸への往復の場合は特別車を外して運行される。
一般客が乗る際にはJR東日本の「大人の休日倶楽部」のジパング・クラスとミドル・クラス会員用のツアーに申し込むか、または旅行代理店などのツアーに申し込むかのどちらかになる。
「大人の休日倶楽部」のツアーの場合、会員クラスの条件上50歳以上でなければ乗車できないが、旅行代理店などのツアーの場合は制限云々についてはツアー参加に関する約款に順ずることになるので、基本として乗車に関する年齢制限はない。
車両
団体列車運行時は全車両グリーン車である。また、各座席のスポット空調や読書灯、タッチパネル式の液晶モニタがあり、展望映像やデジタル放送、車内販売の注文が行える。
また、1号車と特別車両をのぞき全車電動車で構成されている。また、非電化区間にも入線出来るようディーゼル機関車に牽引してもらうための連結器(密着自動連結器)が装備されている。この際、電源供給元である架線は当然無いため、車内の電源は1号車のディーゼル発電機から供給される。ちなみに1号車は乗客用出入り口が無いため(緊急用脱出口はある)、ここに乗る際は2号車など別の車両から入ることになる。
制動(ブレーキ)装置
条件により下表のように動作が異なる。
自走 | 回生併用電気指令式空気ブレーキ、抑速ブレーキ、直通予備ブレーキ |
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被牽引(発電機停止) | 自動空気ブレーキ、直通予備ブレーキ |
被牽引(発電機稼動) | 自動空気ブレーキ(電気指令への読み替えあり)、直通予備ブレーキ |
車体
アルミニウム合金のダブルスキン構造を採用しており、基本的にE653系やE257系などと共通である。運転台は高運転台構造を採用。また、台車以外の床下機器と屋根上機器を隠すカバーが装備されている。JR接続他社への乗り入れを考慮し、狭小トンネルも通過できるように、第一縮小車両限界を適用している(パンタグラフ高さは身延線を前提にした3960mmになっている)。
また、特別車両はE257系とE653系、E657系に組み込み可能となっている。
収電・駆動系統
電源は3電源(直流1,500V、交流20,000V(50Hz/60Hz両用))に対応、主回路はVVVF制御(2レベル、IGBT)を採用し、回生ブレーキのほかに全電気ブレーキも可能になっている。パンタグラフ搭載車両は車両限界上屋根が低くなっており、またパンタグラフの予備が搭載されている。
操作系統
主幹制御器に左手ワンハンドル式マスコンを採用するなど、近年の列車と同様のレイアウトだが、計器類はアナログメーターを採用し、TIMS(列車情報管理システム)のモニタは二台設置されるなど、一般的な列車と差異がある。
編成
1号車から下記のようになっている。特別車両を連結しないときは4M1T、特別車両を連結しているときは4M2Tとなる。
号車番号 | 形式 | 備考 |
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1 | クロE654-101 | 床下にディーゼル発電機を搭載。男子小用トイレと洋式トイレが設置されている。 |
2 | モロE655-101 | パンタグラフ(シングルアーム型)と主変換機搭載 |
3 | モロE654-101 | SIV、空気圧縮機搭載。この車両のみ座席が革張りで半分はVIP用個室 |
特別車両 | E655-1(妻面に標記) | 天皇や国賓が利用する際のみ連結。菊花紋章を取り付ける窪みがある。 |
4 | モロE655-201 | パンタグラフと主変換機搭載 |
5 | クモロE654-101 | SIV、空気圧縮機搭載。多目的室と身障者対応トイレが設置されている |