天皇や皇族方、海外の皇族や王族、国家元首など高貴な身分の方が乗る車両。
『御料』とは、「天皇などの高貴な身分の人間が所有し利用するもの」という意味である。
本項は日本の御料車について解説。
自動車
伝統的に、車格、信頼性共に当時手に入る最高級の車両が使用されている。
大正元年(1912年)にこれまで使用されていた馬車に代わって初めて導入された自動車は、英国製のデイムラー・ランドレーであった。
その後は、ロールス・ロイス シルヴァーゴースト(大正10年~)、メルセデス・ベンツ 770”グロッサー”(昭和7年~)、キャディラック 75リムジン(昭和26年~)など。
ロールス・ロイス製の車両は、大正10年のシルヴァーゴーストを鏑矢に以後数度に渡って導入されている。
皇室は伝統的に英国王室と関係が深く、また超高級車作りを得意としていたためか上記以外でも英国製の自動車が多用されていたが、満州事変をきっかけに日英関係が悪化し国内情勢も不安定になった際には充分な車格と防弾性能があるドイツ車を導入したり、終戦後連合国の統治下にあった頃はアメリカ製のキャディラックが使用されたりと、御料車の車種からも当時の世相を窺える。
国産の御料車
国産車は昭和42年(1967年)にプリンス自動車(現:日産自動車)が納入したプリンス・ロイヤルが始祖である。
これは、当時の日本の自動車製造技術の粋を結集した車両で、特に走行性能・信頼性・安全性全てにおいて他に比類する車両は存在せず、コンディションが良ければ現在でも通用しうる車両である。
天皇と皇室の威厳を保ちながらも、かつ質素倹約を旨として物持ちの良さに定評がある宮内庁は半世紀近くに渡ってこの車両を使用していたものの、平成16年(2004年)に当の日産自動車が「今後も性能と信頼性を保証することは車両そのものの老朽化もさることながら、技術力、経営上の理由で不可能である」と音を上げてしまったため維持管理が難しくなった。
このため、2006年からトヨタ自動車が特別に設計し納入したセンチュリーロイヤルが使用されている。
御料車は一般的に上記のとおり特別製で最上級の車両が使われるものの、通常のご公務の際に使用される車両や、地方行幸の際に遠隔地など何らかの事情で上記の御料車が持ち込めない場合は、金の菊の御紋章が入った通常のトヨタ・センチュリー(とは言え相応の改造が成されている事は想像に難くない)を用いることもある。
鉄道車両
国鉄やJRが特別に運行・維持管理するお召し列車のうち、実際に天皇が乗車する車両が「御料車」と呼ばれている。
詳しくはお召し列車を参考。