ジョーズ
じょーず
概要
ピーター・ベンチリーの小説を原作とし、当時28歳のスティーブン・スピルバーグが監督を務めた、1975年公開のアメリカ映画。
平和なビーチを襲う巨大人食い鮫(ホホジロザメ)の[[恐怖と、それに立ち向う人々を描く。また、観光依存、人命よりお金が優先される資本主義の問題に一石を投じる社会風刺映画としての側面も持っている。
世界中で大ヒットし、スピルバーグの名前を全世界に知らしめた一作であり、その後二匹目のドジョウを狙った動物パニック映画が乱発されることとなった。
詳しくはサメ映画の記事を参照。
あらすじ
アメリカ東海岸の田舎町アミティ。若い女性の惨死体が海岸に打ち上げられ、鮫の仕業だと睨んだ警察署長マーティン・ブロディはビーチを閉鎖すべきと主張するが、観光資源が町の経済の多くを担っている為、市長は聞く耳を持とうとしない。
そうする内に少年が第2の犠牲者となり、その両親が懸賞金をかけたことでアメリカ中から賞金稼ぎが押し寄せる騒ぎになる。そして1匹のイタチザメが捕獲された事により、市長は事態の収束を宣言するが、ブロディはイタチザメの口のサイズが被害者の傷跡より小さいことから、まだ事件は終わっていないと確信。海洋学者フーパーと共に調査した結果、『真犯人』は巨大なホホジロザメだと突き止めた。
だが市長はその報告も無視して海開きを強行。そしてブロディが恐れていた通り、ホホジロザメが観光客を襲う最悪の惨劇が発生してしまう。ブロディはフーパーや漁師のクイントと共に、この巨大な海の怪物退治に乗り出してゆく。
登場人物
- マーティン・ブロディ(演:ロイ・シャイダー)
ニューヨークからアミティに赴任して間もない警察署長。
人喰い鮫への対策を提言するが、事なかれ主義の市長に弾かれてしまう。
4人目の犠牲者が出てようやく鮫退治の許可を得るが、幼少時のトラウマから海が苦手で、船上ではクイントやフーパーと違って鮫の強大さに狼狽えるばかりだった。
しかしオルカ号が沈められ、クイント、フーパーらが次々と鮫の餌食になっていく中、最後には勇敢に鮫へ立ち向かった。
数年後にも再び鮫に立ち向かい、これを退治するが、『'87』の時点では心臓発作で死去。『3』で息子の勤務する水族館が人喰い鮫に襲われたと聞いたショックのせいであった。
さらに『'87』では次男を鮫のせいで失うこととなり、家族共々人生の最期まで鮫に翻弄されることとなる。
- クイント(演:ロバート・ショウ)
アミティの荒くれ漁師。
鮫狩りの達人だが、自分勝手で強情。
しかしそれは第2次大戦中の経験からで、鮫の恐ろしさを誰よりも知っている。
クイントは戦艦インディアナポリス号に乗船しており、5日ものあいだ人喰い鮫の蠢く海域で取り残されていた過去があるのだ。
賞金目当てに鮫退治に乗り出すが、船に乗り上げてきた鮫に噛み付かれ、血を吐きながら派手に喰い殺されるという最期を迎える。
原作小説では、鮫に打ち込んだ樽のロープが絡まって海に引きずり込まれてしまい溺死する。
- マット・フーパー(演:リチャード・ドレイファス)
ブロディに協力する海洋学者。
遺体を検視して襲ったサメの種類を特定するなど基本的には学術的知識を元に行動するが、大胆な発想や行動力もある。
原作では鮫に直接毒を打ち込もうと水中に潜るも防護ケージを破壊されて喰い殺されてしまったが、映画では奇跡的に生還した。
『2』にも名前のみ出てくるが、この時は南極で仕事中だったため駆けつけられなかった。
- エレン・ブロディ(演:ロレイン・ゲイリー)
ブロディの妻で長男マイケルと次男ショーンの母。
原作ではフーパーと不倫関係にあったが、映画では良き妻としてブロディを支えた。
- ヴォーン(演:マーレイ・ハミルトン)
アミティ市長。
市の経済は夏の海開きで成り立っていた為に海開きを強行した結果、被害を拡大させてしまった。
事なかれ主義で若干嫌味な人物だが悪人ではなく、海開きした海水浴場がサメの襲撃を受けて犠牲者が出たことで一転してブロディに協力的になる。
息子もその時の海水浴場にいたと語っており、それも理由の一つかもしれない。
今作でのブロディの奔走と活躍を嫌と言うほど知っているため、『2』では市の役人でただ一人ブロディの解雇に反対していた。
- マイケル・ブロディ(演:クリス・レベロ)
ブロディ家の長男。
父の言いつけを守って、鮫の来ない入り江でボート遊びをしていたはずが、父の予想を裏切って鮫が現れたせいで恐ろしい目を見ることになる。
海嫌いのマーティンが自ら鮫退治へ乗り出すきっかけとなった。
『2』では青年となって登場、父の言いつけを無視してヨットで遊んでいたところをサメに襲われ、『3』ではフロリダ・シーワールドのチーフエンジニアとして就職するも施設を襲撃したサメと戦い、『'87』では弟をサメに食い殺されたためアミティに帰還しサメへの復讐に挑む事になる。
このようにシリーズ皆勤賞キャラで、父と同じくその生涯はサメとの戦いの連続となった。
父と同じく2度にわたって巨大鮫と対決することになるのだが、彼がメインを張る続編の出来が散々なせいで、キャラとしても全然人気がないと言うあまりにも不憫な扱いを受けている。
- クリシー・ワトキンス(演:スーザン・バックリーニ)
夜の浜辺でパーティを楽しんだ後、海へ泳ぎに行った結果、鮫の最初の犠牲者となってしまった哀れな23歳。
彼女が犠牲になるシーンは物語の導入部分で、肝心の鮫の姿は一切映らず、恐怖に震えながら姿を消す彼女の姿が描かれるのみ。滅茶苦茶怖い。
クイントの最期と並び、モンスタームービー史上でも屈指の恐怖シーンとして人気。
- ホホジロザメ(ブルース)
ネズミザメ科ネズミザメ亜目ホオジロザメ類に属するバケモノ。
アミティを恐怖のどん底に陥れた犯人。
大きさは約8m、重さ3tと現実では確認されていないレベルのデカさ。(現実ではどれだけ大きくても4mで1t程度)
非常に獰猛な上に現実離れしたレベルの怪力で、鎖で繋がれた餌を桟橋ごと沖まで引っ張っていったり漁船の底を突き破ったり、自身を釣り上げようとしたオルカ号を逆に引っ張り回した挙句沈めてしまった程。
オマケに頭も良く、ピストルやライフルで撃たれても平然としていたりブイを3つ撃ちこまれても海中に潜れるタフガイ。
お前本当に鮫か?
まあ2作目じゃヘリに噛み付いて爆発しても火傷顔で追いかけてきたり、3作目じゃ体長10mオーバーの奴が出てくるし、4作目はほとんど亡霊みたいな奴だし、ほんとなんだこの鮫。
その巨体から、一部では「実はホオジロザメではなく、メガロドンの生き残りだったのでは?」と言われることもある(それでも上記の生物離れした特徴は説明できないが)。
ブルースというのは撮影用のロボットに付けられた愛称で、全然似てないわすぐ壊れるわのひどい代物だったらしいが、スピルバーグの手腕で見事に隠されている。
彼は2003年に実施された『アメリカ映画100年の悪役ベスト100』にて18位にランクインする快挙を成し遂げた名優もとい名サメ、あるいは名ロボである。
- イタチザメ
何もしてないのに賞金目当てのハンターに狩られた可哀想なヤツ。
クイントの話にも登場するように、現実にはホオジロザメよりもこちらの方がかなり危険なサメ。
作中での「とにかく何でも食べる」という描写は本当で、実際に「泳ぐごみ箱」「ひれのついたゴミ箱」の異名があるほど、貪欲で見境がない食欲の持ち主だったりする。
上記のブルースが鮫離れ(?)しているだけなのだ。
続編
本作の世界的な大ヒットを受け、その後数本の続編が作られた。ただ、スピルバーグはシリーズ作品は作らない主義であり、2作目以降は一切製作には関わっていない。『2』『3』『ジョーズ'87 復讐篇』と作られるが、残念ながらその評価は元祖と比べるべくもなく、4作目の『ジョーズ'87 復讐篇』に至っては脚本・演出共に最悪の出来で、ラジー賞で7部門にノミネートされた挙句、最悪視覚効果賞に輝いてしまった。
ちなみに『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』では、マーティとドクがタイムスリップした2015年にスピルバーグJrが監督を務めた「ジョーズ15」が公開されているという小ネタがある(BTTFにはスピルバーグも製作総指揮という形で関わっているので、一種の小ネタであろうと思われる)。
- ジョーズ2
前作の事件のトラウマを引きずるマーティンの葛藤を描く。
マーティンと鮫が対峙するシーンはラスト数分のみである。
- ジョーズ3
本作より主人公がマーティンから息子のマイケルへとバトンタッチ。水族館に閉じ込められた人間たちを鮫が襲うという内容で、よりモンスターパニック映画の側面が強調された作品。
今度のサメは親子であり、群れで人々を襲う。
- ジョーズ87 復讐篇
本作ではマーティンは既に死亡していて登場しない。
ブロディ一家に復讐すべく血筋を根絶やしにしようとする巨大鮫と、ブロディ一家やその友人たちの死闘を描く。
パロディ
ジョン・ウィリアムス作曲のメインテーマ曲も有名で、緊張感と恐怖心を煽るイメージから、現在もバラエティ番組やパロディなどでよく使用されている。
作曲者のジョン・ウィリアムスによると、試しにスピルバーグの前で曲の軸となる「ダン・ダン・ダン……」というクレッシェンド部分をピアノで演奏して見せたところ
「……お前、これは真面目な映画なんだぞ」
と言われたという。
また、海を泳ぐ女性の真下から巨大なサメが迫りくるという本作のポスターもかなり有名であり、pixivでもこのポスターを改編したパロ絵が多数投稿されている。
実在の襲撃事件
ジョーズのヒントとなったのは、1916年にアメリカ・ニュージャージーで発生した事件だと言われている。
この事件では、7月1日~12日にかけて、海で2人がサメと思われる生物に襲われて死亡し、その後川で2人が死亡、1人が重傷を負った。
実際に、人がサメに襲われるという事件は毎年発生しており、中でもジョーズの主役であるホホジロザメはその生活圏が人間の活動範囲と重なるため、事故が起きやすい種類とされている。ただし人を襲うのは、好物であるオットセイと間違えることが理由と推測されている。
しかし本作の影響で「サメは好んで人を食い殺す危険な生物」という間違った認識が広まってしまい、世界中でサメが大量に駆除される事態となった。結果、ホオジロザメを含むいくつかの種類は絶滅危惧種に指定されるまでに個体数を減らしてしまい、最終的に条約により保護される事態にまで至った。そのため、サメの生態については21世紀の現在でも未解明の部分が多い。
- ただし、川で人を襲ったのはホホジロザメではなく、淡水で生活できるオオメジロザメだったのではという説がある。
- 怪物魚に挑む釣り釣り親父兼生物学者のジェレミー・ウェイドも、ホホジロザメよりオオメジロザメの方が人を襲った件数が多い、とその危険性について語っている。より人の活動範囲に近い場所に住みつくからである。オーストラリアでは川から洪水に乗って流れてきた数匹が、ゴルフ場の池に住み着いてしまったという、とんでもない事例がよく知られている。
余談
- 「jaw(s)」とは英語で「顎」を意味する言葉だが、劇中でのホホジロザメの残忍ぶりが強烈な印象を残したため、今日ではほぼ「鮫」と同意義で使用されている。
- 映画の中に登場する漁師クイントは重巡洋艦「インディアナポリス」の生存者という設定である。この映画を通じて1人の少年がインディアナポリスの最期に興味を抱き詳細を調査した結果、艦の位置情報を適切に管理できなかった責任を軍上層部が艦長になすりつけたことが発覚。2001年、当時のビル・クリントン大統領も艦長が無罪であるとして正式に名誉回復にサインする事となった。
- この作品が公開されて以降、サメはもちろん、その他の各種動物をモンスターとした新作パニック映画、あるいはテレビドラマが無数に製作・公開・放送されたが、そのほとんどは低予算のやっつけ仕事で、B級以下の作品にとどまっている。
- 原作者のピーター・ベンチリーはその後、巨大イカが暴れる「ビースト」という作品や、海底から発見されたナチスドイツの作った水陸両用サイボーグが暴れる「海棲獣」という作品も書いている。
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ディープ・ブルー - 遺伝子改造により知能が高くなったアオザメによるモンスターパニック映画。公開は1999年。本作以外では唯一完成度が高く、「1度は絶対に観るべき作品だ」と言われるほど評価され、非常に人気の高い作品である。
アナコンダ - アマゾンなどの南米の湿地帯に生息する大蛇の名前であり、巨大な人食いヘビによるアメリカのパニック映画シリーズのタイトルでもある。1997年に公開された第1作は、記録的な大ヒットを記録し、その後数本の続編(といっても、第1作との繋がりはない)が製作されたが、どれも第1作ほどの大ヒットはせず、その評価も非常に低いという事から、奇しくもジョーズの二の舞となってしまった。